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緋楽盈月〜和風異世界で獣の子供預かってます〜  作者: 流灯
一章 真摯に学べこの異世界
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魔術 弍

そして翌日。

私は昨日考えていた通り中位の魔術を使う事にした。

まずは水魔術からやってみよう。


「 『我が言の葉によりて、流水は魔力を以て刃に変わる。我の敵を切り裂け。水刃。』」


やはり魔力が吸い取られ、水でできた刃が飛んでいく。

十メートル程飛んだところで霧散した。

よし、次は無詠唱で。


そして無詠唱で使え、もう一度やったところでその事件は起こった。


私が無詠唱で水刃を使った二回目。

水球と同様の感覚で少しだが進路を変えられたので、左に曲げてみた。

すると、丁度そこに、猪が走って来た。

水刃はその猪の脳天に命中し、その生を終わらせる。


「は⋯⋯?」


ちょっと何が起こったか分からない。

誰か説明して。

確かに私の住んでいる家は森に近いよ?

そしてその家の森に面している窓から魔術ぶっぱなしてたよ?

でもなんで猪がこんな所に居るの。

そして何で私が放った水刃に突進して来てるの。


「ああ、もう!」


でも、暫く呆然と猪を眺めていると、遠くから犬の鳴き声が聞こえてきた。

その後には男性の声も。

人間では聞く事も見る事もできないだろう距離だけど、狐人である私には聞こえたし猪も見えた。


そしてもう暫く待っていると、犬が猪の周りに集まって来た。

その後男の人が二人来て、猪を見て驚いている。

恐らくあの二人は狩人なのだろう。


ああ、本当にどうしよう。

このまま知らないふりをしていようか。

そう思っていると、男の人の声が聞こえてきた。


「なあ、これってどういう事だと思う?魔術でやられたっぽいよな。」


「いや、俺に言われても分かる訳ないだろ。」


「そうだよな⋯⋯。」


そこで、男の人がふとこっちを向いた。

え、バレた?

そしてその人は迷わず私の方へ向かって歩いて来る。

あああ、バレてるー!


どうしようか。

逃げるか?

いや、逃げたら認めてるようなものだ。

なら話して私じゃないですって言うしかない!


そう考えている間にもその人は近づいて来る。

やがて私の前まで来て、やはり予想通りの事を言われた。


「あの猪、君がやったのかい?」


その人は狼人らしく、灰色の耳と尾、黒髪でなにかの毛皮の服を着ている狩人っぽい服装だった。


「あ、いえ、違います。あの、窓の外を眺めていたら、猪が走っていて、そこに、森の木の陰から魔術が飛んできました。」


自分でも苦しい言い訳だと思う。

けど、信じてくれ!

純粋な三歳児の言う事を信じてくれ!


「いや、嘘つかなくてもいいよ。あの死体を見たらこっちの方から魔術が飛んできたのは分かるから。」


バレたー!

めっちゃあっさりバレた!


「いや、でも、私は、魔術なんてもの使えないですし?」


「じゃあ彼処に落ちている本はなんだい?」


あああー!

魔術教本!


「でも、私字読めないですよ?まだ三歳ですよ?」


「まあ、見た目は普通の三歳児だけど、その喋り方といいなんか知性的なんだよね。本当は君が魔術を使って猪倒したんだろう?」


これ以上の言い訳は逆に墓穴掘る事になりそう。

正直に話すか。


「うう⋯⋯。はい、私がやりました御免なさい!」


もう最後の方は半ばやけくそである。


「ふむ、やっぱりか⋯⋯。」


狩人の人が続けようとした時、急にこの部屋の扉が開いた。

うわぁ⋯⋯。

タイミング最悪だ⋯⋯。

どうしよう。

いや、もうどうする事もできないか。

いっそ流れに任せてみようか。


「あの、どうしましたか?」


扉を開けてそう声をかけてきたのは私の母だった。


「いや、この子が僕達が追っていた猪を仕留めてくれましてね。僕達もこんな民家の近くまで来るつもりは無かったんですけど、猪がちょこまかと逃げるもので、ついこんな所まで来てしまったんですよ。僕も状況はよく分かっていないのですが。」


「あら、そうなんですか。咲夜、本当なの?」


「はい、御免なさい⋯⋯。あの、魔術の練習をこっそりしてたんです。そしたら、たまたま、射線上に猪が走ってきて⋯⋯。」


「まあ、その歳で魔術が使えるの?そうね、これからはお母さんが教えてあげる。これでも魔術は得意なのよ。」


あれー?

なんか思ってたのと違う反応なんですが。

もっとこう、危ないでしょ!とか言われると思っていたのだけれど。


「それで、あの猪は⋯⋯。」


「ああ、うちの子がご迷惑をお掛けしました。猪はどうぞ持って行ってください。」


「ありがとうございます。」


そう言って狩人さんは猪の所へ戻って行った。


「それで、咲夜、本当に魔術が使えるのね?」


「あ、うん。」


「その魔術、もっと練習したい?」


「うん!」


私がそう返事をすると、母は優しく笑った。


「そう、流石私の子ね。ふふっ。」


「お母さんが、魔術教えてくれるの?」


「ええ、私に教えられる範囲なら全て教えてあげる。」


やったね!

人に教えてもらう方が効率良いだろうしね。


「なら、明日から早速練習しましょうか。」


「うん!」




そして翌日。

早速母から魔術を教えてもらう事になった。

家の裏、つまり私が魔術を使っていた窓がある場所でやる。


「まずは下位の魔術からね。お手本を見せるから、よく見ていて。 『我が言の葉によりて、疾風の力を顕現させよ。風球。』 」


すると風の球が現れて飛んでいった。

いや、やっぱり風魔術は見えないのだけれどね。

でもそこに魔力があるのは分かるから、風魔術が存在しているのは分かる。


「いや、お母さん、お手本に風魔術を使うのはどうかと思う。分かりにくじゃん。」


「あら、言われると確かにそうね。ごめんね、風魔術が得意だからね、つい。」


母は風魔術が得意なのか。

たしかに私が風球を使う時に比べて消費する魔力量が半分程だ。

すごい。

私ももっと練習しなければ。


「じゃあ、次は分かりやすいのをするわね。 『我が言の葉によりて、流水の力顕現させよ。水球。』 」


すると水球が現れて飛んでいった。

水球は私よりそこそこ少ないくらいの魔力消費か。


「咲夜もやってみて。」


「うん。でもお母さん、詠唱ってしないといけないの?」


「え?詠唱をしないと魔術は使えないわよ。」


無詠唱という概念が無いのかな?

でも、もし無詠唱が禁忌とかだったらヤバいよね。

だから此処はとりあえず詠唱しておく。


「『我が言の葉によりて、流水の力を顕現させよ。水球。』」


水球が現れて飛んで行く。


「上手ね。やっぱり私の子だわ。」


うーん。

私転生者だから、そう言われるとなんだか罪悪感が湧いてくるのだけれど。


そんな感じで母から魔術を習った。

もちろん魔力を増やすというのも忘れない。

でも、だんだん魔力を使い果たすのがしんどくなってきた。

だから、魔術を使う以外の方法で魔力を消費する事にした。


その方法というのが、私が今やっているこれ。

今私は、手のひらから紺色の蝶を出して飛び立たせている。

それも大量に。

まあ、言ってしまえば無駄に魔力を放出しているのだ。


私の魔力はなぜか蝶の形をとる。

だから、それを無駄に出しまくっているのだ。

そして、これを何日かやっている中で見つけた事がある。


まず、この蝶は見た目は変えられないけど大きさは自由に変える事ができる。

ただし、大きい方がより多くの魔力が要る。


次に、この蝶はめちゃくちゃ便利。

行動をある程度指示する事ができるのだ。

その場合は指示の複雑さによって魔力を消費する。


最後に、この蝶は私の魔力で出来ているため、その魔力が切れると蝶は消滅してしまう。

そして蝶が大きい程同じ魔力量でも持続時間は短くなる。

目安としては、並の大きさで水球の魔力量で三分程だ。


うん、この蝶めちゃくちゃ便利。

それに、まだ私の知らない能力もありそうなんだよね。


というわけで、現在私は三十秒程持続する蝶を大量に出している。

もちろん魔術の練習もしてるよ?

でも、それだけではなかなか魔力を増やせなくなっているのだ。

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