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緋楽盈月〜和風異世界で獣の子供預かってます〜  作者: 流灯
二章 記憶を手繰れこの異世界
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追憶

私は昔、緋楽で生きていた。

そしてとある事情から森羅ノ国の護宮だった藤宮様に命を助けられた。

その事情は今は割愛しよう。


藤宮様に命を助けられた私は、藤宮様の護衛となり、忠誠を誓った。

暫く続けているうちに信頼され、私は藤宮様の近衛となった。

それからは基本的に藤宮様の傍に居た。


そんなある日、藤宮様と森羅ノ国のみかどがお会いになった。

それが全ての発端だった。


その時、帝は藤宮様に惚れてしまった。

藤宮様はかなり美しかったのだ。

惚れるのも分からなく無い。

その後帝は藤宮様に想いを告げた。

だが、帝も護宮は結婚できない事は知っていたので、護宮の任が解けたら迎えに行くと言った。


それに対し藤宮様は、

「護宮の任が解けるのはいつになるかわかりませんし、その時には陛下のお心も変わっているかもしれません。」

と答えた。


しかし帝は諦めず、貴女を待ち続けると言った。

そうして二人は別れたが、帝はやはり藤宮様を妃にすると言った。


それから三年程経った時。

帝はしてはいけない行動をしてしまった。

護宮というのはいつ辞める事になるのか分からないのだ。

過去には数年で任を解かれた人や数十年続き四十代になってから任が解けた人もいる。


それを帝は待ちきれなかったらしい。

更には結婚適齢期後半にさしかかろうとしていたため、臣下にも色々と言われていたのだろう。

藤宮様を無理矢理護宮の任から解こうとした。

だがそんな事は無理だ。

それは天地が決める事なのだから。


だが、帝は思わぬ行動にでる。

国が囲っている呪術師の内、一番腕が良く信頼できる者に藤宮様に呪いをかけるように言ったのだ。

それは対象者の魔力を少しずつ減らすというもので、かなり高度な呪術だ。


魔力を減らして無理矢理護宮から降ろそうというのだ。

無謀にも程がある。

なによりこの世界の生物は魔力が無くなれば死んでしまうのだ。

おそらく途中でやめるつもりだったのだろうが、その呪術はかなり高度だ。

それを途中でやめるなんてどれほどの技術が必要だと思うのか。


そしてやはりと言うべきか藤宮様にかかった呪術は途中でやめる事ができなかった。

その事に帝は怒り、その呪術師を殺したという。

だが呪術というものは術者を殺したとしても止まるものではない。


その後藤宮様はどんどん魔力が少なくなっていき、見ていられなかった私は自分の魔力を藤宮様に送り続けた。

だが自分の魔力を他人に渡すというのは専用の魔道具なりが無いとかなり効率が悪い。

それに私は剣士だったので魔力量もさほど多くなかった。


それが気休めにしかならない事は私も分かっていたが、それでも自分にできる事があるのに何もしないなんてできる訳がなかった。


そして藤宮様はそれを止めたが、私は頑としてやめなかった。

そして私にも藤宮様にかかった呪術の影響が出てきた。

魔力を送る為に魔力を繋げていたからだろう。


やがて藤宮様はかなり弱り、もうすぐ死ぬのではないかと思われた。

勿論私は呪術を止めようとした。

だが思いつく限りのどんな手を使っても無理だった。


そんな時、藤宮様がもうすぐ死ぬかもしれないと聞いた帝がやって来た。

だが帝は呪術をかけさせた黒幕である。

政治とは表面上関係のない護宮側は通さないようにした。

だが帝は力ずくで通った。

私も阻止しようとしたが多勢に無勢だった。

その時に殺されなかったのは不幸中の幸いだったのだろう。


そして帝は誰もが予想していた通りの行動をした。

藤宮様とちぎったのだ。

その後帝は帰ったが、藤宮様はもう限界だった。

身体的にも精神的にも。


だから私は藤宮様と二人で逃げた。

だが呪いを受けた女二人だ。

そう簡単に逃げられる訳もない。

だが、そこは護宮である藤宮様の残り少ないお力と私のそれまで藤宮様を護るために磨いてきた剣術でなんとか逃げ切れた。


その後は山奥で誰にも見つからないように暮らした。

思えばあの時が一番幸せだったかもしれない。

そんな生活をして少し経った頃、藤宮様が身篭っているのが分かった。

思い当たるのは一つしかない。

帝だ。


そして藤宮様は無事お子を産まれた。

だがもう限界だった。

その出産で全ての力を使い果たして亡くなられた。

藤宮様は亡くなる直前、私に子を頼むと言われた。

だから私は子をしっかりと育てた。

読み書き数学も教えた。

身を守る術も教えた。


藤宮様が亡くなってから十三年程経った時、私も限界がきた。

そこまで生きられたのは藤宮様から間接的に呪術を受けた為だろう。


死ぬ直前私はその子に今までの事実を綴った紙を隠してある場所を伝え、私が死んだら読んでほしいと伝えた。


私が覚えているのはそこまでだ。

あの子はおそらく紙を読んでくれただろう。


そして、その子の子孫、つまりは藤宮様の子孫が、上総だ。


何故私が一度異世界に生まれ、その後この世界に来たのか。

それはなんとなく分かった。

藤宮様と呪術師だ。


呪術師は殺される前、藤宮様の呪いをなんとか解こうとしたが無理だった。

そこで呪術師は別の呪術を使う事にした。

だが呪術師は藤宮様に対して呪術をかけ続けていた。

だからまた藤宮様に呪術をかけるというのは至難の技だ。


そこで呪術師は私に呪術をかけた。

私は剣士だから呪術に対する抵抗は低いし、かけやすかったのだろう。

それが何の呪術なのかは分からない。

だが私達にとって良い効果のある呪術だったのは間違いない。


だがそこで呪術師の予想外が起こる。

藤宮様だ。

藤宮様は私に感謝もされていたが同時に申し訳なくも思っていたようだ。

だから藤宮様は私に何かの魔術をかけた。

おそらくそれは護宮のみが使える魔術だろう。

その存在は知っていた。


その二つが合わさった結果が、これまでの出来事だ。

どちらかが私の来世に関わる術を使い、どちらかが異世界に関わる術を使ったのかもしれない。

両方共に恐ろしく高度な術のはずだ。

そこは流石護宮、流石国で一番の呪術師なのだろう。

その二つが合わさった結果、私は一度日本に転生し、再び緋楽へと戻ってきた訳だ。

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