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緋楽盈月〜和風異世界で獣の子供預かってます〜  作者: 流灯
一章 真摯に学べこの異世界
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冒険者

翌日。

宿の一階で朝食をとり、早速薬屋へ向かう。

行くのは宿屋の人にきいたおすすめの薬屋だ。

教えてもらった通りに暫く歩くと薬草の絵が描かれた看板の店を見つけた。


「すいませーん。」

「はいよー。」


店番をしているのは優しそうなおじさんだった。


「あの、光秋桜の薬ってありますか?」

「光秋桜は無いねぇ。たぶん何処の薬屋にも売ってないと思うよ。」

「そんな!」

「光秋桜は高価だからね。そういう高価な薬っていうのは基本的に注文を受けてから材料を仕入れて作るんだよ。そうじゃないと薬が駄目になる前に売れないとかなりの赤字になるからね。」

「なら、今から頼んだらいつくらいにできますか?」

「そうだねぇ。短くても七日、て所だね。」


七日。

長すぎるな。


「なら、光秋桜を持ち込めばすぐに作ってもらえますか?」

「ああ、材料さえあれば一日とかからず作れるよ。光秋桜は乾燥させたりしなくていいからね。」

「なら、材料持ち込みます。魔弱病の薬に必要なのは光秋桜だけですよね?」

「いや、あと他の薬草もいくつか要るけどそれはうちにあるよ。」

「なら、光秋桜だけを持って来ればいいんですね。」

「いやまあ、そうなんだけど。でもお嬢ちゃん、どうやって持ってくるつもりだい?」

「自分で採りに行きます。自衛の手段はあるので。」

「まあ、べつに止めはしないが⋯⋯。やめておいた方がいいと思うけどねぇ。」

「いえ、やらなくてはいけないんです。それで、光秋桜が生えている場所を教えてくれると助かるのですが。」

「光秋桜はこの街から北西に二日程歩いた所にある綠観山ろくみやまの中腹辺りにあるはずだよ。」


二日か⋯⋯。

遠いな。

でも、やるしか無いよね。


「わかりました。ありがとうございます。」


その後光秋桜を採りに行くにあたって必要になるだろう薬をいくつか買った。

店を出る前に、おじさんから本当に採りに行くのなら冒険者組合に登録して冒険者になる事をすすめられた。


冒険者か⋯⋯。

まさにファンタジーだよね。

こんな和風な異世界でもやはり冒険者っていうのはあるんだね。

まあ、どことなく西洋風な所もある世界だし。


と、いうわけで。

私は今教えてもらった冒険者組合の建物に向かっている。

というか、まだ十二歳の私でも登録できるのだろうか。

十五歳からとかじゃないよね。

まあ、それも行ってみれば分かるだろう。


朝の陽の光を浴びながら、仕事に行く人やもう開いている屋台など、今日も賑やかな枳ノ街を歩いていく。


やがて教えてもらった冒険者組合に着いた。

少し緊張しながらも中に入る。

この世界の建物にしては珍しく、中には靴を履いたまま入る。

中は受付がいくつかあり、酒場も併設されている。


この時間帯は朝に依頼を受けに来た冒険者で混雑する時間の後らしく、そこまで人はいなかった。

でもある程度は居るので、その人達が此方を向いた。

うう、緊張する。

入ったら誰でも否応なく視線は向けられるのだろうけれど、それでも気持ちのいいものではない。


受付のお姉さんが笑顔で問いかけてくれた。


「依頼でしょうか?」


ああ、やっぱりそうなるよね。

だってまだ十二歳だし見た目は背が少し低くて細いし。

狐人はだいたい小柄だけど力は人並みにある。

それでも、外見て重要だよね。


今はそんな事を考えている時ではない。

登録をしなくては。


「いえ、冒険者登録しに来ました。できるでしょうか?」


年齢制限とかあってほしくないのだけれど。


「はい。できますよ。」


受付のお姉さんが少し驚いたように答えた。


「なら、お願いします。」


うーん、さっきから後ろで私の事いろいろ言われているなぁ。

まあ、しょうがないと言えばしょうがないのだけれど。

できれば絡んでこないで欲しいなー。


「はい、かしこまりました。では、登録にあたって諸注意をしておきますね。」

「お願いします。」

「まず、冒険者というのは、見習いと七級から一級までの階級があります。」


よく小説とかであるFランクからSランクまでとかそういうやつか。


「まず見習いというのは、冒険者としてやっていける最低限の技術がまだ無い人がなるものです。これはまた後で説明しますが試験を受けてもらった結果から判断します。」


なるほど、戦闘力が無いのに無茶して死んでしまう人が少なくなるようにとかそういう事か。

あとは、冒険者の仕事をしないのに登録だけして街等に入る時の税を払わない人への対策とか。


「そして七級から一級まであるのは階級と言われ、七級が初心者、六級は初心者を出たくらい、五級が慣れてきた頃、四級は普通より上くらい、三級からは凄腕と言われ、二級は人数も少ないですし街に数人居るか居ないかという程度なのでかなりの腕利きと言われます。そして一級は世界にも数人しか居ないかなり強い人達です。」


おお、分かりやすい説明。


「この階級を上げるには依頼をこなさなくてはいけません。各階級毎に決まった数の依頼をこなせば次の階級に上がる事ができます。ちなみに依頼は自分の階級の一つ上とそれ以下の階級の依頼のみ受注する事が可能です。それと、階級に関係無く受注できる依頼や緊急依頼といったものも存在します。」


ふむふむ。


「そして七級、三級に上がる際には試験がありますのでそれに合格した方のみ昇級する事ができます。」


それがさっき言っていた試験か。


「試験の内容はこの二つで異なるのですが、三級の方は後々でいいでしょう。貴方はこれから登録するので七級の試験を受けてもらいます。」


それで最低限の戦闘力があるか見るわけか。


「次に隊についてです。冒険者は隊というものを組んで依頼をこなすのが一般的です。中には独りでしている人もいますが。そしてこの隊、上下一つ違いの階級の人同士でしか組む事はできません。その場合より高い人の階級が隊の階級となります。」


小説なんかだとパーティと言われるやつだろう。

その他にも説明を聞いて、一通り説明し終わったのだろう、紙を差し出された。

ちなみに緋楽では紙はそこまで高価な物ではない。

勿論高級な和紙みたいな紙もあるけど、今目の前にあるのは普通の紙だ。


「これまでの内容に納得されたらこちらの書類に必要事項をお書きください。代筆は要りますか?」

「いえ、大丈夫です。」


緋楽の識字率はそこそこあるけど、そこそこ止まりだ。

それに読めはするけど書けない人も結構いる。

そういう人達も来るのでその処置なのだろう。


まあ、それはいいとして。

差し出された紙の一枚目にはさっきまで説明してくれた事等が書いてある。

それに同意するという事にサインするようだ。

二枚目の紙には戦闘技術に関する事をいくつか書くようになっている。


まず一枚目の紙に迷わずサインをする。

そして二枚目の紙にはいろいろと書かなければいけない。


名前の欄は咲夜でいい。

苗字なんて持っていないしね。

役職は魔術師で良いだろう。

特技の欄には自分が得意とするものを少し詳しく書くようだ。

そこには、五属性魔術、治癒魔術、呪術、その他無属性魔術をいくつかと書いておく。

自分でも多いと思うけど事実だし。


それを提出する。

すると受付のお姉さんが困ったように言った。


「これに嘘は書かない方が貴方のためですよ。それにこれだと嘘ってすぐにばれてしまいますし。」


ああ、また見た目で侮られてるパターンか。

それともここまで多彩に魔術を使える人なんて居ないと思っているからか。


「いや、嘘なんか書いていませんよ。なんなら全部見せましょうか?この建物は確実に、下手したらこの街ごとかなりの被害を受けますが。」


私が本気で言っているのが分かったのだろう。

受付のお姉さんは慌てて次に進めた。


「で、では、冒険者証を作ってまいりますので少々お待ちください。」


そう言ってお姉さんは奥に入っていった。


そして、また後ろが面倒くさい事になっている。

おそらくさっき私がこの街ごと被害受けるとか言ったからだろう。


絡まないでくださいねー。

面倒くさいですよー。


「おいおいお嬢ちゃん、此処はお嬢ちゃんみたいな子供が来る所じゃねーよ。」


そう言ってきたのは見るからに冒険者って格好をした二十代くらいの男。


だぁー、もう面倒くさい。

それに台詞がテンプレ。

まったく、どう返せばいいものか。

とりあえず正論言っておこう。


「私ももうすぐ十五歳で子供ではありません。それに私は狐人です。体格は小さくても力は普通にありますし、なにより私は魔術師なのであまり関係ありません。」


うん、もうすぐ十五歳。

間違ってはない。


「へっ!杖すら持っていない魔術師か!そんな奴聞いた事ねーなー!」


ぐっ⋯⋯それ言われると言い返せない。


「だから、これから冒険者をして買うんです!」

「はん!買う前に死ぬ事にならなきゃ良いけどな!」


そんな事を言い合っているうちに受付のお姉さんが戻ってきた。


「では、これがあなたの冒険者証になります。紛失してしまった場合、新規登録としてしか再発行する事はできませんのでご了承ください。そして、これから試験を行います。ついてきてください。」


渡された冒険者証は名刺くらいの大きさで厚みは五ミリ程。

そこには名前、階級、役職、隊名、が上から順に書いてあり、隊名の所だけ空欄となっていた。

階級は見習いだ。


そして歩き出したお姉さんの後についていく。

すると着いたのは訓練場の様な場所だった。

簡単な屋根があり、壁は無く、半分外みたいな感じだ。

そこに的等がある。

冒険者組合で絡んできたお兄さんは割と良い人。

咲夜の事を心配して声をかけたけど、少しツンデレだったので伝わらなかった。

他の人はまたやってる、くらいにしか思っていない。

最近その事でいじられるようになりだしたり。

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