驚愕と魔法
何がどうなっているんだ。ゴブリンの群れがいるときき、さらにはその上位種までもいる可能性があると言う。
だから急いで討伐に来たと言うのに、その場には延々と続くゴブリンたちの骸と真ん中の一際大きなゴブリンの横で一人たたずむ男。
そう一人なのだ。
本来この街には腕の立つ冒険者は多い。この大陸でも有数の危険地帯である魔の森に接しているからだ。しかし今は各地での魔物の被害が増え、腕の立つ冒険者はかなり流失している。そして残っているものも大体が顔見知りで、ましてや一人でこのような事が出来る人間が有名でないはずがない。
「貴様何者だ!」
私の声に反応してこちらを向いたが、腹がたつことに手を振っている。
もう一度言おうとした時、一緒にきた変人が声をあげる。
「あれ?コウじゃないか!お〜い!」
呑気に手を振っている変人
「知り合いか?」
「まぁね。彼今朝FからEに上がったんだけど、その時の試験官、俺だったんだよ。圧倒されてしまって実力は分からなかったけどね。」
「何!お前がか!」
彼は変人だが腕はたつ。近々昇格予定だと言っていたからギルドからも認められているほどなのだ。
それほどの冒険者が負けたとは。
彼は一体何者なんだ。
無数に散らばる骸の中で佇む姿は死神を連想させるようだ。
私は警戒しながらもここであったことを説明してもらうために彼に話しかける。
〜アイク視点〜
しかし、街から冒険者が来たのは幸いだったな。
取り敢えず殲滅し尽くして迷っているところに魔剣同好会のノイアがきてくれて、ゴブリンの耳の剝ぎとりを手伝ってくれるということを申し出てくれたおかげでかなり早く帰ることが出来そうだ。
キング(一番でかいやつ)や他の上位種は街に分かりやすい危険の指標として全身持って帰るそうだ。
元々は持ち帰れないためどうしようか悩んでるところに俺がアイテムボックスで持ち帰ると言ったら最初怪しんでたが実演するとすぐに採用された。
珍しい物だからあまり見せびらかすのもどうかと思うがどうせバレるのだからこれについては普通に見せることにした。
それに警備長さんなんかも知ってるからな。
俺はアイテムボックスに上位種を入れて、冒険者たちと一緒に街へと帰った。
〜ノイア視点〜
凄いな。彼は。
ゴブリンの上位種。しかもリーダー級やナイト級、さらにはキングもか。キングはBランク相当にもなるほどなのにそれを一人で殲滅しちゃうんだ。
でも片付け手伝ってたときに、勿論アイテムボックスのことも驚いたけど、あの傷のない死体。焼けてるわけでも他の死体みたいに斬られている訳でもない。ただまるで魂を抜かれたように死んでいた。
気になるけどあまり個人の能力について聞くのは良くないことだからいつか分かる日まで待っておこうかな。
やっと街に帰ってきたや。パーティメンバーの二人や一緒に行った人も顔が緩んでいる人が多い。
それもそのはずで行くときは死ぬ可能性が高くてピリピリしながら行ったからね。生きて帰れたからと言うのは大きいんだろう。
ギルドではサリアちゃんがアイクに泣きながら謝っていた。知らなかった事とはいえ、ゴブリンの群れがいるところを進めちゃった訳だからそうなってしまうのかな...
アイクはそんなに気にしてないみたいで何か言った後にゴブリンの死体を置きに裏の訓練場まで行ってしまった。
さて俺も後片付けに行きますかね。
〜〜アイク視点〜
ゴブリンの騒動があって一夜明けた。
しかし昨日は大変だった。帰ったら依頼の相談に乗ってくれた受付嬢が泣いて謝ってきたり、ゴブリンの死体を出したらその量に驚かれたり、内容を見て顔を真っ青にして倒れる人が出たりetc...
とにかく大変だったあと受付嬢の名前だけ聞いて帰った。どうもお詫びにこれからも依頼のそうだんにのってくれるそうだ。
この辺の知識がない俺にとっては有難い申し出だった。
そして一番の驚きはその報酬である。実に金貨五十枚。
金貨一枚で十万円だからかなりの金額と言える。アイテムボックスに入れるまで緊張した。
そして俺は今また森の中にいる。
今日の目的は、魔法の開発だ。
昨日の戦いで閃いた「黒炎招来」と「炎の棺」は使い勝手がいいし強力なのだが、あのようにいきなり使うと規模が大きくなりすぎたり、小さすぎて役に立たない可能性が出てくるからあらかじめ使えそうな魔法を考えておきたい。
あと個人的に魔法でやってみたい事があるから楽しみだ。
まず一つ目。思い描くのは火の玉。無数の火の玉が舞い敵に向かっていく。それは焼き、貫き、炭化させる。
魔法名『炎気玉』
実は焔○と迷ったけど包帯巻いた人と被るからやめた。
最大数は50ほど。狙いをつけたものは動いていようが、止まっていようが追いかけるみたいだ。威力を抑えれば狩りなんかでも使えそうだな。
二つ目。思い描くのは黒騎士。斬られようが、魔法を撃たれようが、全てをねじ伏せて切り裂く。
魔法名『式神』
実際に最大数召喚してみたら三体だった。
木を切れとか動物を狩ってこいとか簡単な指令だけで色々してくれる。体感で1時間程で消えた。
かなりの時間動いてくれるからなかなか便利そうだ。途中で魔力を注げばもっと動いてくれそうだ。
ついでに、黒の魔力で『炎気玉』をしようとすると黒騎士が出てきた。その逆もおなじだった。
二つの魔力を変えて使うことはできないようだ。
じゃあ両方の魔力を同時に使ったらどうなるんだろうか。
実際に使って見たけどあれはヤバイ。これは、お蔵入りなような気がする。これは他の人を巻き込んだ時大変なような気がする。これを使わないでいられることを祈る。
思いついた魔法を何度も練習して加減を間違えないようにする。『黒炎招来』や『炎の棺』などの簡単な効果のものは簡単に調整できるがどうしても残りの二つは雑になりやすかった。
やはり効果が複雑なほど制御が難しい。
それらがやっと制御できるようになった時もうすでに日が暮れていたため今日も急いで帰って旅人の止まり木亭でゆっくり休むことにした。
すいません。
かなり短くなってしまいました。
次は長めに書きます!