ギルドと登録
「金とんのかよ!」
大事なのでもう一度言う。ヤバいかなりヤバい。どれくらいヤバいかというとテストの日に朝寝坊したくらいヤバイ。
流石にそれを見て、無一文だと気づいた二人は、
「何か魔物の素材があれば買い取るぞ?」
「俺がお金を貸そうか?」
トムさんと男が提案してくれた。
しかし保母さんが言っていた。お金の貸し借りをするな、と。
というわけでここはトムさんの提案に乗ることにした。
売る素材は初戦闘で両断したあの火の熊。Dランクはあるはずだ。
銭は急げで早速熊を出す。いい値段で売れるといいなぁ。
「「こ、これは...」」
「レッドベアの上位種のファイヤーベアじゃないか。
魔物は上位者になったりすると一つ以上ランクが上がるから、元がDだからCランクの魔物を一人で...」
「EランクとFランクの魔物は同ランクの魔物をソロで倒すことができるがそこから先はパーティ単位になるんだ。AとSは別だがな」
男は驚いて腰を抜かし、トムさんは解説をしてくれる。
聞いた話をまとめると、ゴブリンやコバルトは一対一でも簡単に倒すことが出来るが(こいつらがE,Fの有名どころらしい)そこから先はパーティ単位で討伐が普通らしく、よほどの実力差がないとソロではやらないらしい。さらにAは騎士団とか軍が出動するレベルで、Sランクは災害みたいなものらしい。ちなみにAランクはグリフォンやクラーケンが有名どころらしい。Sは古竜や竜王、一部の竜種の他にはクラーケンが成長しきったものやエルダーリッチがこれに当たるそうだ。知性が高い魔物が多いためあまり人目につくことはない。噂では見たものは全て殺されているから、らしいが...
荒野を作った竜を率いていたのは火の竜王だとも言われている。たしかにそんなことできるんだったら災害だわ。
「しかし、真っ二つかこれだと金額は下がるな。
獣系統の素材で最も高いのは皮だからな。それがこんな風だと銀貨五十枚だな。剥ぎ取りしてくれればもう少し高くなるが、やるか?」
やるかと聞かれてもできないから首を横に振るしかない。
「なら交渉成立だな。少し待ってろ。」
そう言ってトムさんは詰所に引き返していく。ついでに男はすでにいない。勤務時間が終わったようで帰っていった。あ....名前聞くの忘れたや。まぁいいか
トムさんが帰ってくる。
「これが金だ。すでに通行料なんかは引いているから四十五枚だ。」
俺はそれをアイテムボックスに入れ、トムさんに礼を言って、街に入った。もう閉門時間らしく俺が入るとすぐに門が閉まった。
冒険者ギルド。それは冒険者たちが出入りし、依頼を受けたり、隣接された酒場でその日の苦労をねぎらったりする場所である。そして新人に厳しいところである。
俺は、最後の新人いびりに期待している。やっぱりお約束は体験したいものだね。密かな期待を胸に冒険者ギルドに入る。ギルドの場所は中央の通りに面した場所で立地が良い。このようなことから冒険者は周りから余り悪い目で見られてないことが分かる。
入ったら酒場で飲んでいる人たちがチラリとこちらを見て興味を失ったのかまた仲間と飲み始める。確かに目立つ格好をしているでもなく、明らかに子供という体格では無いからな。絡まれないか...少し寂しく思ったのは秘密である。
入り口から真っ直ぐ行ったところにカウンター、右の奥には掲示板がありあそこで依頼を見るのだろう。今も何人かが集まって何かを読んでいる。右側はまるまる酒場だ。左側には少し広いテーブルとカウンターがある。あそこが買い取り所だな。
まずはカウンターで冒険者登録をしようかな。楽しみだな、こういうの憧れるのは男なら仕方のないことな気がする。
「すまない、冒険者登録をしたいのだがいいか?」
カウンターにいる受付嬢に話しかける。やっぱり受付嬢は美少女って決まっているんだろうか?
「はい、大丈夫ですよ。まずはこの用紙に名前と武器の名前や魔法の適性などをご記入ください。名前以外は任意ですが記入していただいたほうが、依頼を斡旋するときに優遇させていただきます。」
名前はコウでいいか。武器と魔法に関しても書いておこう。別に隠すことでもないしな。年齢も変えないでいいだろ。
「これでいいか?」
「はい、コウ様ですね。武器は大剣で魔法は火魔法ですか。承りました。少々お待ちください。」
そう言ってその受付嬢は奥に引っ込んだ。
これで俺も冒険者だな。これからの予定はどうしようか、一先ずは地道にランクを上げよう。お金を貯めておいた方がいいからな、報酬の高い依頼はランクが高いのが相場だ。
おっと帰ってきたな
「お待たせいたしました。これがギルドカードになります。こちらの使い方をご説明します。
このカードには三つの効果があります。まずは当たり前ですがランクが変わると色が変わります。二つ目は身分証としての役割を持ちます。カードの偽造は不可能なのでこれを町の入り口にある水晶にかざして問題が無ければ街に入れます。そして三つ目は、カードの連絡機能です。カードを互いにかざし合わせておけば、短いメッセージなら相手に送ることが出来ます。ギルドについてご質問は有りますか?」
「カードの色やランクなんかの説明を頼みたい。」
「分かりました。まずはランクについてですが、下からF,E,D,C,B,A,Sとなります。色は白、赤、青、緑、銀、金、黒となります。特別な事情を持たない場合やもともと身分証を持たない方はFランクからになります。Eランクからは地道に依頼をクリアしたりすることでランクが上がって行きますが、Fランクに関しては実力が認められれば即昇格となります。実力がない場合は地道に依頼をこなすか、お金を払って講習会に参加していただくことでランクアップとします。コウ様はいかが致しますか?」
「実力を認めてもらう方法で」
ここでくる人はある程度の実力だろうからな。自分の実力を知るいい機会だ。
「承りました。では明日の朝お越しください。その時に試験管の方がいらっしゃるはずです。ほかに質問はございますか?」
「いやもう無いな。あっ、いや最後に二つほどいいか?
一つ目は宿に泊まろうと思っているんだが土地勘がないから、いい宿を紹介してほしい。もう一つは魔法の使い方はどこで教えてもらえるだろうか?恥ずかしい話で適性があるのは知ってるのだが、使い方は知らないんだ。」
「宿はギルドの近くにある「旅人の止まり木亭」がオススメですよ。魔法は教えてもらうというよりは自分の感覚らしいですね。イメージができれば、一言名前を言って思い描くだけで使えるらしいですよ。」
なるほど、イメージか。なら俺みたいに小説やら読み漁った時に培った想像力でどうにかなるな。
「すいません。宿の値段を伝え忘れていました。えっとぉ...夕食と朝食無しなら銀貨三枚有りなら銀貨三昧と銅貨十枚です。」
ついでにここでの貨幣価値は日本円で
銅貨一枚=十円
銀貨一枚=千円
金貨一枚=十万円
白金貨一枚=一千万円
ぐらいの感覚のようだ。
各貨幣百枚と一個上の貨幣がどう価値らしいからな。
宿の料金も特に問題ないのでギルドを後にした。外はすでに夜の帳が下りて酒場などからは笑い声が聞こえてくる。
宿でとりあえず十日分の宿を頼むと食事分の料金はまけてくれた。一回に十日以上払えば無料にしてくれるそうなので、十日ずつ頼むようにしたい。
さて今日は早く寝よう。しかし一日で色々あったな、一回死んで地獄行って生き返って。
明日からも忙しくなりそうだ。
すいません!明日こそ依頼まで行きます。
進行はこんな感じでゆっくりになると思います。
すいません。