7.ロボット狩り道中
-無人攻撃機【ドローン】-
元来、軍事兵器として開発され商品化されたもので、四ヶ所にプロペラがあるものが主流。中央にもう一つプロペラが付いているものも存在する。通常は、操縦者がリモートコントローラを使いコントローラに映し出される映像を見ながら操縦するが、AIを搭載し、自動で操縦する機体もある。本機体はそこに軽量化された銃器を装備させたもの。
-ベルト機械-
機械テロ捜査官が装備しているベルト型の機械。
中央に読み取り機が付いており、付属のウェポンカードで転送機が搭載されている武器を転送させることができる。
-機械機動鎧【パワードアーマー】-
機械テロ捜査官だけが扱うことができる装備。カスタムが可能で自由にデザインを変えることができる。ほとんどの捜査官は西洋の甲冑をモデルにしている。小さく『畳む』事ができ、装甲部分は【転送システム】で転送されてくる。
-機械駆動服【パワードスーツ】-
機械テロ対処部隊の標準装備。パワードアーマーに比べ、装甲部分が少なく『身体能力の強化』を重点に置いている。パワードアーマーのように『畳む』ことはできない。
「いっせーのっせッ!!」
軽快な掛け声が響き、無人攻撃機三機が大剣で一刀両断された。
制御を失った機体は地上に墜落し、分解した部品がガラガラと音を立てて転がる。
ここは某ショッピングモールの専門店街。
無人攻撃機を破壊した張本人、機械テロ捜査官の柴忠亘晋は逃げ遅れた人がいるという情報があった中央広場へ向かっていた。
途中で数機の無人攻撃機の銃撃を受けるが、持っている大剣で弾き、装備していた自動拳銃で撃退する。
「ちぃっ、めんでぇっ!!」
しかし襲撃は止むことはなく、次から次へと敵機が現れる。
その中には無人攻撃機と異なる種類のロボットもあった。
そのロボットはチーターの様な肉食動物の形をしていた。
色は濃いメタルグレーで、ボディに光る赤いラインが隅々に走っている。
そのロボットは獣型無人急襲機と言う。
対テロ対策部隊用として作られているようで、並の警察官では鎮圧することもできないだろう。
『テロ行為を阻止する者の排除』が目的のようだ。
「くっ!!」
獣型急襲機が襲い掛かり、すぐさま亘晋は持っている大剣で防御の姿勢をとるが、大剣は弾かれてしまう。
大剣は空中でくるくると回り、亘晋の数メートル後方の地点の地面に突き刺さる。
「げっ、やべぇっ」
そして獣型急襲機がその機を逃さずと言わんばかりに襲いかかる。
大剣を失い、亘晋が装備している武器は、自動拳銃のみ。
機動力の高い獣型急襲機に自動拳銃で立ち向かい、弾丸を当てるとなると相当骨がおれるだろう。
しかし、彼はそんな苦戦を強いられるはずの境地でも、余裕の笑みを崩さない。
その次の瞬間、彼が余裕な理由が明かされる。
彼の手元には謎の透明なカードが握られていた。透明なカードには、黒いシルエットで大剣の形が描かれている。
彼はそのカードを腰につけてある、ベルトの形をした機械の真ん中にかざす。バーコードリーダーのような読み取り機が内蔵されているらしい。ベルト機械には、拳銃や謎のカードを収納するホルダーがついているようだ。
突然謎のカードが発光し、消えた。砕けたり割れて破片になって地面に落ち、一瞬視界に『映らなくなった』わけでもない。手品のように物理的に跡形もなく消えてしまったのだ。
そして次の変化がすぐに起こる。
彼の手元にはが失ったはずの大剣が握られていた。
いや、厳密には違う。失った大剣は今も彼の数メートル後方に刺さったままである。
亘晋が使用したのは【転送システム】という技術である。
物体を原子にまで一瞬で分解し、転送機で指定した場所にワープさせるという画期的な技術である。
ただしどこにでもワープできるわけではなく、ワープを受け入れるための相手の機械や、目的の場所へ転送するために入れ替わるための道具が必要になる。
つまりこのカードは現在いる位置の正確な座標を佐ヶ美原警察署に発信し、署に保管している武器を何キロも離れているショッピングモールへ、正確な座標にに入れ替わって転送させることができるのである。
優勢だったはずの獣型急襲機は、目標に飛び掛かった所で、大剣で頭部から縦に真っ二つにされた。
敵を倒した直後は、安堵から数秒の隙が生じる。その隙に乗じて新たに三体の獣型急襲機が亘晋を狙って飛び出してきた。
亘晋はそれをに気付き、横薙ぎに大剣を振るおうと構えるが、その必要はなかった。
獣型急襲機の右横合いから黒い影が現れた。
その影は回転しながら三体の獣型急襲機の全身を瞬く間にぶつ切りに切り刻んでしまった。バラバラになった敵の胴体が落下し、影が着地する。
その影は人だった。しかし、生物的な形ではなく機械的なロボットの姿だった。
ボディはメタルブラックを基調としていて体の隅々に青いラインのLEDが光っている。デザインは西洋の甲冑をモチーフにしているようだ。両腕にはブレードがついていた。
そのロボットのような外見の人物が亘晋に話しかけてくる。
「よぉ亘晋、随分と苦戦したんじゃね♪」
「うっせえなぁ、三体なら余裕で倒せたっての」
亘晋は言外に『三体同時に仕留めたんだぜすげーだろ』的なことを言っている声に面倒臭そうに応じる。
彼の名は、井上洋斗。
亘晋の親友であり、同じく〈AMP〉に所属している機械テロ捜査官である。
今彼がロボットのような外見をしている理由は簡単で、『機械機動鎧』というものを装着しているからである。
機械機動鎧とは、最新鋭武装対処本部が開発した最新装備で、機械テロ捜査班のみが使用できる防具である。(機械テロ対処部隊も機械駆動服と言う似たような装備を持っているが機械機動鎧よりは装甲部分が少なく量産が可能である)
防具とは言いつつも、内部にブレードなど様々な武器を装備させることができるため実質上戦闘兵器のカテゴリにある。
鎧に使われている素材は強化プラスチックで、そこに【電磁シールド】を展開しコーティングすることで強度を高めている。
【電磁シールド】は、特殊な電磁波を利用したいわば『見えない壁』であり機材さえあれば空中に展開することも可能である。
特殊な電磁波を強制的に圧縮し物質化させることで、鉄よりも強固な障壁を作る。亘晋の持っている大剣もこの技術が応用されている。
「それにしてもお前、なんで鎧着ねぇの?」
洋斗が切り出したのは、亘晋の装備についてだ。
そう言えば亘晋は、機械的な大剣と自動拳銃以外使用していない。
亘晋は機械テロ捜査班なので鎧の装着は許可されているはずだ。
「ああ、鎧ね?」
すると亘晋はさらっとその理由を話す。
「だってあれ窮屈じゃん?。締め付けられるの嫌いだから着たくないんだよね」
「物凄い自分勝手なワガママ出た」
洋斗は呆れているが言った本人は、平然としている。
「じゃあ今勤務中だし、早く人質助けなきゃだからもう先に行ってるぞ?」
「はあ、お前はまた一人で突っ走るんだから危なっかしくて見てらんないぜ」
洋斗は再び呆れてため息をつく。しかし、少し苦笑しながら亘晋の意思を尊重する。
「いいぜ、行けよ。雑魚は全部俺が片付けてやる。ただし、無茶して死ぬなよ」
「ああ、この任務が終わったら二人でマックに行こう。そこでポテトを食い交わそうぜ?」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおぃッ、こんな所で死亡フラグ建築すんじゃねええええええええええええええええええええッ」
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ。こんなところで叫ぶんじゃねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ敵に気付かれるだろうがああああああああああああ。ほら雑魚がいっぱい。突破するの大変になるぞ?めんどくせええええええええええええええええええええッ」
ーーーーーーそして二人の怒声が専門店街にこだまする。
超お待たせしました。7話目です。次回亘晋VS謎テロリストです。