表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
名もなき物語  作者: 多頭龍
17/59

思い込みや勘違いは怖い/油断は禁物

俺は今、夢を見ている。1人で立っていて腰まで水に浸かっているが他には何も無い。身体を動かす事もできない。地平線の彼方まで水が続いている。水は何故か生温かい。…俺はあの後、たぶん車に轢かれてしまったのだろう。死んでしまったのだろうか?

「……….」

身体を無理矢理動かそうとしたら少しづつだが動くことができた。ゆっくり一歩ずつ歩みを進めて行く。だが、全く周りの景色は変わらない。しかも、目印になるようなものも無いため、自分がどこにいたのか、どっちに向かっているかもわからなくなる。立ち止まって途方に暮れていると、急に水位が上がり始めてきた。身体を動かそうとするが、何故かまた動かなくなっている。

「……そろそろ最期なのか…?」

水はどんどん増え、もう肩まで浸かっている。水に浸かっているせいか、身体が凄く怠い。俺は覚悟を決め、ゆっくり目を閉じる。口と鼻も浸かってしまったが、苦しくはない。頭で完全に浸かってしまうと、だんだんと意識が遠のいていく。真っ暗な海底にゆっくりと沈んでいくようだ。そして、そろそろ意識が無くなって……


「………………」

気がつくと、身体が重く何も見えない状態になっていた。あれからかなりの時間が経った気がする、今は、海底2万マイルくらいではないだろうか。….そんな事を考えていると、どこからともなく、微かに光が差してくる。光はだんだんと強くなっていく。

俺は眩しくて目を閉じる。…少し待つと光は消えてしまったようなので、俺は目を開く。

「!?」

そこはさっきまでとは全く別の世界だった。

だが、俺はここが病院だということにすぐ気付く。

轢かれはしたが、命は助かったのだろう。轢かれたにしてはどこにも痛みは感じないが。

「あら、起きたのね」

声がした方向を向くと、部屋の隅に座っていたらしい亜里朱がこちらに歩いてきている。

「気分はどう?」

「あまり良くないが、大丈夫だ。」

俺はまだ怠さが残っていたが、身体を起こす。

そして、自分の身体を確認するが、どこにも傷や異変が無いことに気付く。

「…俺は…どうなったんだ….?」

「少し、言いにくいのだけれど」

亜里朱は何故か少し嬉しそうに応える。

「…教えてくれ」

「後悔しないかしら?」

どういう事だろう?しかし、ここは聞く以外にないだろう。

「あぁ、大丈夫だ。」

「わかったわ。」

「とりあえず、紗斗矢君は車に轢かれてはいない

わ。」

「え?…どういう事だ?」

「そのまんまよ。紗斗矢君は車に轢かれていなか

ったの。」

「…じゃあ、1つ前の話の轢かれたような効果は

どうなるんだ?」

「1つ前の話というのはよく分からないけれど、

たぶんあなたの鞄よ。」

「鞄??」

「そう、鞄。紗斗矢君、いつも片方の肩だけに掛

けてるわよね?」

「確かにそうだが…なんでそんな事亜里朱が知て

るんだ?学校違うよな?」

「そっそこは良いのよ、それで、子供を助けよと

した時、勢い余って鞄は飛んでいったの。車の

運転手はあなたは何とか避けたけど、鞄は避け

られなかったのよ。」

「じゃ、じゃあ、何で俺は気を失っていたんた

だ?」

「そうね、紗斗矢君は、車に轢かれたと思ったシ

ョックで気を失ったの。」

「…そ、そうなのか……」

「それと、直接見たわけじゃないからって定かで

はないけど、運転手はあなたを避ける事ができ

た。という事は、その子供も避ける事ができた

と思うの。つまり…」

「み、皆まで言うな!」

「あなたの行動は全くの無意味だったわけよ。」

「んナァーーーーー!!!!」

俺は頭を抱えて後ろに倒れ込む。

なんだそれ!とてつもなく恥ずかしいんだが!

…俺がしばらく1人で悶絶していると亜里朱が喋り始める。

「でも、無事で良かったわ。あなたのお母さんか

ら紗斗矢君が救急車で運ばれたと聞いた時はど

うなるかと心配したわ。」

「すまないな、…それで母さんは?」

「何とも無かった事を確認したら、仕事が忙しい

と言って戻ってしまったわ。」

ちなみに、うちの両親は共働きである。

「そうか…、ところで亜里朱は、学校大丈夫なの

か?」

「えぇ、今日は休みという事にしてもらった

の。」

「いいのか?今からだって間に合うだろ?」

「いいのよ、それと、子供のお母さんには何とも

無かったから帰ってもらったけど、プリンとお

菓子を貰ったわ。病院にも夕方まではいてもい

いみたいだし、今日はゆっくりしていましょ

う?」

「…サンキューな、亜里朱。」

「紗斗矢君のためだもの、本当に無事で良かった

わ。」


亜里朱は普段冷たかったり、俺に意地悪な事ばかりしてくるが、本当は俺のことを大切に思ってくれているはずだ。


…俺は、そんな亜里朱の事が……


どこかで見たような話…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ