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名もなき物語  作者: 多頭龍
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あぁ、麗しくない天使よ

翌日、俺は亜里朱に連れられ映画を見に行くことになった。見たい映画があるらしい。

「紗斗矢君、おはよう。」

「おぉ、んじゃあさっそく行くか。」

不思議に思っていた人もいると思うが、亜里朱は人前ではとても落ち着いた性格と口調になる。刺々しいが。俺や俺の両親、陽の前では昨日のような調子になる。映画館は電車で二駅分の街に行けばある。2人で電車に乗り込むのだが、休日のためか流石に人が多い。2人で扉の前に立って並ぶ。

「人、多いわね。まぁ仕方のない事だけれど。」

「ちょっと辛いな。」

「そういえば、白石君は部活かしら?」

「いや、今日は部活はないよ。今日は特別外せな

い用事があるらしい。」

「それに、あったら俺も行ってるしな。」

「そうかしら?紗斗矢君は休日の部活を休む事が

多いように思うのだけれど?」

「いや、だってそれは亜里朱ぅがっ!?」

急に左足の親指辺りに激痛が走る。もちろん亜里朱がかかとでグリグリしている。ハイヒールでないのは幸いだ。

「そろそろやめてくれないか?」

亜里朱は天使のような笑みで踏み続けている。見事なくらいに可憐だ。

「何をかしら?」

「いや、だから…」

「わかったわ、この天使のような笑みの事ね?紗

斗矢君には刺激が強すぎたかしら。」

「あぁ。美し過ぎて俺には耐えられない。」

「……」

そう答えると、亜里朱は下を向き何かを考え始めた。どうしたものかと思ったが、少ししたらグリグリをやめてくれた。

「仕方ないわね。ほら、そろそろ着きそうよ。」

「私、ポップコーンはキャラメル味だから。後、

上映中寝たらさっきよりも酷いことになるわ

よ。」

「わかったよ。俺は塩だけど、キャラメル少し貰

っても良いか?」

「…少しだけよ。」


たまにはこういうのも悪くないよな


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