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逆さに立てば景色も変わる

作者: やなぎ好

午前中のバイトが終わり、帰路に着こうとした時。

ふと、映画が見たいと思った。

スマホを操作して近くの映画館の上映時間を調べる。

【11:00~ ○○】

今は10時を指していたので丁度いい。

電車を乗り継いで少し早い昼飯を食べたらいい時間になるだろうと思い、その映画館に向かった。

平日の昼だからか、人は少なくまばらだった。

これなら後ろの方の席を確保できるだろう、と思いチケット販売をしている場所へ行く。

券売機のような機械で自分から日付と人数を入力して、いざ自分が見たい映画の時間を決めようとした時。

【3D IMAX】と表記してあった。

「あ、やべ」

つい独り言が出てしまった。

スマホで見た時は表記してなかったから失念していた。

普段の映画よりも音響が良いという意味のこの表記は、勿論値段も違う。

大学生1500円のところ3000円という価格が出てきた。

さすがにそこまでのお金はない。

「ふぅ」

ため息と深呼吸を足して割ったような声を出し、券売機から離れた。

内心ショックで映画館を出ようとした時。

すれ違った2人のおばさんの鞄から何かが落ちた。

見てみると、財布だった。

すぐにそれを拾いおばさんに渡す。

「あら、ありがとうね~」

お礼を言いながら財布を受け取ったおばさん達は券売機に歩いて行った。


このまま帰るのもあれなので、本屋に行き、最新刊の漫画コーナーでめぼしいものはないかと探す。

先ほどのおばさん達にお礼を言われたことが、なぜかずっと心に残っていた。

特に自分が拾わなくても誰かが拾ってくれたかもしれない。

後で落としたことに気付いたおばさんが見つけるかもしれない。

ただ、映画は見れなかったけれど、あの財布を拾うためにここに来たという理由付けをすれば、ここまで来た交通費も無駄にならなかったのではないか?

そう思いながらも少しやるせなさが残ったので、結局、1500円よりも安く漫画を買って帰った。

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