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不死よりも不死らしく 3

「パノラマ島奇談!」


 俺は俺の真下にロケットランチャーを発射する。

 手足がもげ、首も千切れかけたが、花火のように俺のヒューマンミートが発射される。

 ロケランジャンプ!

 汚え花火だぜ!

 超痛い。今まで一番痛い!

 でも楽しい!

 俺は空中でヒールをかけ、体が空中で再生されていく。

 全裸マンになりながらも、なぜか例の兜は無事だった。


「ふはははははは!」


 裸戦隊全裸マンの俺はクレストンの背中にしがみつく。


「なぜ諦める必要がある。なにを迷う(以下自粛)」


「な、なにいいッ!」


 クレストンが叫んだ。

 俺はクレストンの羽をつかむ。


「ふはははは! この羽が邪魔だなぁッ!」


 俺はクレストンの羽を全力で千切った。


「ぎゃあああああああああああああッ! 痛い! 痛い! や、やめろ! やめろおおおおおおッ!」


 クレストンは叫ぶ。

 ふふふ、ここがビンカンなのね!


「どうした! 早く再生せよ! どちらかが消滅するまで殺し合おう!」


 俺はそう言うとクレストンの背中で立ち上がった。

 まだパノラマ島奇談の勢いで俺たちは真っ直ぐ飛んでいる。

 もうね、この状態だったらアレを試すしかないでしょ。


「なんとかインフェルノ!」


 某王家の奥義である。

 厳密にはプロレスじゃないけどいいよね。

 俺は片翼だけのクレストンを体重移動で操る。

 目指すは近くに見える教会だ。


「や、やめ、やめてくれえええええええッ! 頼む、見逃してくれ。もう二度と人間を襲わないからああああああッ!」


「だめだな」


 俺は切り捨てた。

 つうかね、もっとプロレスしようぜ!


「ふはははははははははー!」


 俺の高笑いが響く中、俺たちは教会に激突した。

 雷のような音。

 ってこれは骨が折れた音か。

 ブランチャーと同じで俺も痛い系の技か。

 とにかくバカでかい音がした。

 クレストンの体ごと石造りの教会の上部分が容赦なく崩れた。


「がはははははははははははー! 俺の名がふ」


 舌噛んだ。

 俺の笑い声とともに俺たちはキリモミしながら落下する。

 瓦礫が降り注ぐ中、俺はクレストンの股と首に手を回す。

 バスター的なものがやりたかったが、無理だったのでジャックハマーだ!

 俺はこの瞬間、不死者に発想で勝利したのだ。

 下に石像が見えた。

 槍持ってるやつ。


「あ、やべ」


 俺は小さく言った。

 すると俺とクレストンが串刺しになる音が響いた。

 俺たちは小学生に捕まったカブトムシ状態だった。

 その上から瓦礫が降ってくる。

 俺たちはあっと言う間に押しつぶされた。

 暗闇。

 痛い。おーっと、腕が潰れてる。ヒール、ヒール。

 腹には途中から千切れた槍が突き刺さっていた。

 俺は自分の腹を殴った。肉が消し飛び俺は串刺しから解放される。

 はいヒール、ヒール。

 最近……麻痺してるよね。俺。

 クレストンの方はと言うと、ぐにゃりと曲がった槍が胸に刺さっていた。


「おい、起きろクレストン。まだフォールしてねえんだからよ!」


 と、俺は言いながらクレストンの頬をはたいた。

 次の瞬間、クレストンはビクッと体を震わせた。

 あ、起きた


「今出してやるからよ。出たら続きしようぜ」


 俺はクレストンを励ました。

 こう、なんとなく友情的なものがわいてきたようだ。

 王家の技だけに。

 クレストンの目が絶望に染まった。

 え、なに?


「こ、これが……ま、魔王の力……なのか……そうか……俺は貴様の生け贄……だった……のか……」


 いや俺は勇者だって。

 俺は違うよと手を振る。

 だがクレストンはがくんと首の力を失い、頭を垂れた。

 ……変な角度に。

 するとクレストンは胸から燃えはじめた。

 火は一瞬で全身を包み、クレストンは灰に変わって霧散した。

 俺は狭いところで火が出たせいで焦った。

 狭いところでの出火がシャレにならないのは日本人なら誰でも知っているだろう。

 俺はロケットランチャーで自分を吹き飛ばした。

 爆発でも消火ってできるもんね。

 肉片になった俺が外に出る。

 それでも例のヘルメットは壊れない。

 これ絶対呪いのアイテムだよね。

 俺はヒールをかけ肉片から再生する。

 するとカサンドラが駆け寄ってくるのが見えた。


「旦那! ゾンビが消えた!」


「クレストンが突然灰になったんだ!」


 俺が言うとカサンドラがガッツポーズをした。


「旦那すげえじゃねえか! 銀も聖属性魔法もなしに不死族を滅ぼすなんて」


 カサンドラは興奮していた。

 俺のところまで来ると、背中をバンバンと叩く。


「なぜ滅ぼせたんでしょうね……」


 俺は不思議でしかたがない。

 だって勝手に死んじゃったのだ。


「不死族ってのは人間が一度死んでからなるもんでさ、生き物っていうには曖昧な存在なんだ。それで欲望や生への渇望ってやつがなくなるとあっと言う間に消滅しちまうんだ。クレストンの野郎。旦那に勝てねえって、生きるのをあきらめちまったんだ」


「おう……」


 クレストンごめんね。

 ちょっとやりすぎちゃった。

 大至急、聖属性憶えます。はい。

 俺が反省しているとカサンドラがモジモジしている。

 なんだろうか?


「ところでよ。旦那、私は猫族じゃないんだ」


「なんの話ですか?」


「まあまあ、聞けよ。私は獅子族なんだ」


「ええ、そうなんですか」


 話が見えない。

 どう見てもライオンだろうよ。

 だがカサンドラはモジモジしてる。


「獅子族はさ、繁殖に問題があってな……そのなんだ、相手を噛み殺しちまうんだ」


 カサンドラは満面の笑顔で言った。

 あ、おっさんわかっちゃった……

 ら、らめええええええええええッ!

 次の瞬間、俺はダッシュで逃げようとした。

 だが回り込まれてしまった。


「旦那だったら死なないよな。ちょっと痛いけど、我慢してくれる……よね?」


 カサンドラの目がうるうるしていた。

 そんな目をしても、らめ!


「ちょっと待て! その理屈はおかしい! それに戦ったばかりだろ! 休めって」


 れ、冷静になれ!

 冷静になるんだ!

 ひ、ひ、ふー。

 ってラマーズ法は違う!


「アンタの戦いを見てたら興奮しちまった。獅子族でもアタシは特に力が強くてさ……今までどんな男でもする前に殺しちゃってさ……いいよね」


 よくない!

 それ違う興奮!

 殺し合いとかそういうの!

 なぜか俺の脳内に東海地方にある、あのサファリパークのテーマ曲が大音量で流れる。

 や、やめて、らいおんさん!


「い、いや待て。落ち着け。おい、ちょっと! せめて兜は取らせて。や、やめ、肩をかじるな! 血が! 血が止まらない! げふ、かじったまま振り回すな! や、やめ!」


※たいへん刺激的な内容のため、ヨークシャーテリアのメグちゃん(3歳)が恐竜さんのぬいぐるみと戯れる姿で表現させて頂きます。


「がお! がう、がううううううう!」

(ぬいぐるみをかじって八の字に振り回す)

「がうがう! がうがう! がうーん!」

(ぬいぐるみを振り回し放り投げる)

「がうーん! がおーん!」

(ぬいぐるみを足で押さえ、腹の縫い目をかじって破く)

「ふみゅーん!」

(綿をほじくって出す)

「ふみゃ」

(噛みながら恐竜さんにまたがる)


「らめええええええええええええええッ!」


 環境汚染のない美しいあの大空へ、俺の断末魔の悲鳴が響いた。

 3時間後……俺はカサンドラの下から兵士に救助された。

 全身を噛みつくされた状態で。

 誰も止められなかったんですね。よくわかります。

 気のせいか腹の肉が減っている。散々飛ばされたから。

 もうね、ヒール間に合わないの。歯形と爪で切り裂かれた傷だらけなの。

 何回肉片から再生したかわからないの!

 おかしいのよ。クレストンと戦ったときは痛いけど死ぬ気はしなかったのよ。

 でも今のは何度死にかけたかわからないのよ!

 そんな超肉食系女子カサンドラは半裸で俺にしなだれかかっている。


「ダーリン……大好き……」


 石畳には俺のモツ的なミートと血が散らばっているのが見えた。

 あまりに壮絶な現場に俺もドン引きだ。

 あ、心臓のかけら見っけ。

 これ絶対色っぽい現場じゃないですよね。殺人事件の現場ですよね。

 いざこうなると、なんの感想もひねり出てこないものだ……

 そんな俺の俺の肩に兵士の一人が手を置いて言った。


「ジャギーさん。アンタのことを『勇者』って呼んでいいか」


「それ絶対違う意味ですよね」


「まさか、獅子人を抱いて生き残る人類が存在するとは思わなかったぜ」


 周りの兵士たちも感動にむせびながら拍手した。


「女道楽の最終地点と言われる獅子族を籠絡するなんて……あんた勇者だ!」


「ジャギーさんまじパネエッス!」


「尊敬するぜ、おっさん!」


 あ、なんでカサンドラが処刑されなかったかわかっちゃった。

 そういう用途で生かされていたんですね。

 でも確実に死ぬから様子見ムードで誰も買わなかったんですね。

 どうやら俺は勇者になったらしい。

 おかしいな。不死族倒したのに評価されるのそっち!

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