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魔法料理 ~異世界の料理は魔法よりも凄かった~  作者: 茜村人
第三章「島国滞在編  少年期」
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第三十四話「探し物は」

投稿したいシンドロームが発症したので、投稿再開します。

それと、サブのタイトルを変更致しました。

 "エレドライ"に着いて宿を取る。長期滞在をする予定は今の所無いので二泊だけ。やはり子供二人だけだと宿の人に心配そうに見られた。中々に不便だな畜生。

 言われた部屋に行き地図を広げ、"チャート諸島連盟"から"オリン共同連合"に行くための経路の確認をしていく。

 ここは小さな国が幾つも合併して出来た島国、国と言っても他の国と比べると圧倒的に小さい。

 "チャート"と"サイラ"を分かりやすく例えるなら、日本とアメリカくらいのだろうか。

 日本を十二個に小分けしたら"チャート"になるだろうか。

 因みに"サイラ魔法同盟"は大陸の上半分を閉めていて、下半分を丁度真ん中で別けるように左に"オリン共同連合"、右に"マリカナ王国"が存在する。

 オリン行きの船が出てるのは"ウストノルグ"と言う港町。

 ここ"エレドライ"がある"カサヌ島"から"テサッシュ島"に渡り、更に"ヘルニア島"に行くと"ウストノルグ"へたどり着く。

 一つだけなんとも腰が痛くなりそうな島があるが今はつっこまないでおこう。


 道のりの確認を終え、地図をしまい視線をベットへと移す。そこにはぐっすりと眠るレナの姿が見える。

 流石に五日も船だったんだ、寝にくかったんだろうな、すやすやとぐっすり寝ている。

 俺はベットに近付き、レナの頬っぺをツンツンとつつく、その弾力はとても柔らかく、少し力を入れれば崩れそうで。この子がまだ四歳だと思い出させるには十分な威力を持っていた。


 まだ四歳なのだ。


 そんな子が親元を離れ、俺と二人で旅をしている。それも、目的地にラルクとユリ、レオが居るかもわからない状況で。

 ……騙してるような錯覚に陥る。いや、実際に騙しているのだ。

 レナはユリの実家に行けば、皆に会えると信じている。それは確定ではなくて、俺が言った嘘なのだから、嘘ではあって欲しくないが、確実性には乏しい。


「……う……ん、おにいちゃん?」

「ん?起こしちゃった?ごめんね」

 思考の底に落ちていた頭を視界へと意識させる。どうやら俺はずっと頬っぺたをツンツンしていたようだ。

「んーん、らいじょーぶ……おにいちゃんないてるの?」

「ん?」

 泣いていない。涙なんて流していない。

「かなしそうな顔してる……」

 そう言われ、無意識に自分の顔を触った。触ったところで自分の表情なんて読み取れるはずも無く、ただ、言われた事をどうしても実感したいと脳が行動を起こした。

 そして、レナの顔を、まるで、一緒に悲しくなっているレナの顔を、強く意識する。その顔が俺の顔の酷さを物語っているような、そんな感覚に陥った。

 もし、ここで俺が更に不安な顔をすれば、きっとレナも辛くなるのだろうな……。

「……大丈夫だよ、ありがとう、レナの顔見て元気出た!」


 顔に活を入れ――出来ているか不安だが――精一杯の笑顔を作る。


「まだ眠い?」

「……うん」

「そっか、じゃあ今日はゆっくり出来るから、満足するまで寝よっか」

「……うん、お兄ちゃん」


 俺はツンツンしていた手で頭を撫でていると、レナの両手がこちらに伸びてきた。レナの手は短く、俺かレナが寄らないと触れる事はないが、何かその仕草が無性に愛しくて、気付けば俺は顔を近付け、その手を受け止めていた。


「ん?」

「一緒に寝ようよ……、どこか行っちゃやだぁ……」


 その手は少しだけ、ほんの少しだけ震えていた。


「……そうだね、じゃあお兄ちゃんも横になろうかな!」


 その震えを打ち消すように、明るく振る舞い、そっとレナに添い寝をした。

 レナは嬉しそうに俺の胸に抱きつき「ぎゅー」と効果音を口で奏でている。俺は優しく包むように抱き返し、レナの頭を撫でた。


「……ありがとう」


 俺は溢れるように、まるで盃から水が溢れるように、小さく、心の声を漏らした。


 ☆  ☆  ☆


 レナがすやすやと寝息をたてたのを確認して、思考を別の事に回す。当たり前だがレナを撫でる手は止めない。この星が爆発しても止めるつもりはない。この手が止まる時は俺が死ぬか寝るかするまでだ。


 次は、身の安全の確保と金銭面の対策を考えないと。


 要はパーティーだ。


 最悪無しでも、ダンジョンのランクを下げれば、なんとかならなくもない。

 幸いお金にはまだ余裕がある。

 多分"シュリ"まで、余程の豪遊をしなければ問題なく辿り着ける。

 ただ、世の中何が起こるか分からない。元手は多いに越した事はないだろう。

 探してみて、見つかりそうに無ければさっさと次の町へ発つのも、一つの手として考えておかないと……。

 寧ろこれが今一番可能性の高い選択肢な気がする。もし、パーティーを組めたとしても、アルディナ達のように"シュリ"までずっと組んでくれるかは分からない。途中で別れて、また別のパーティーを探せば、それだけで時間のロスになる。最悪"ウストノルグ"まででも構わないのだけど、それすらも見つかるか怪しいところだ。しかも、船での出来事を思うに、俺は中々にパーティーが組めないらしい。

 まだ探してもいないのに、嫌な溜め息がでる。

 でも、元々は一人でやる予定だったのだ。反対に予定通りになったと思って行動しよう。


 船と言えば、あの女の子はなんだったのだろうか。

 いきなり不細工だの不恰好だの言われたが、そちらに意識をとられ過ぎて、なんて言っていたのか記憶が曖昧になっている。

 魔素って単語を二回使っているのは覚えているけど、具体的な繋ぎが思い出せない。本当になんだったのか。


(魔素が不恰好……?何かの比喩か?)


 もし、また会うことがあれば聞けばいいか。

 会いたいとは思わないけども、いや、でも、会いたいか。

 確証も何もないが、もし日本人なら、詳しく話したい。

 見た目が日本人過ぎる、純日本人の俺が純日本人だと思える程度には日本人日本人している。それに、今まで黒髪黒目の人種に出会った事がない。更に言えば、俺だけがこの世界に来たと考えられない。他にも地球から来た人がいるかも知れない。


 何故なら、俺がいるのだから(・・・・・・・・)


 俺が来れたのだから、他の人が来ていてもおかしくはない。ただそうなると、黒髪黒目に疑問が生じる。俺の前世は黒髪黒目だが、今は全く違う。真っ白な髪の毛に洋風の顔立ち、日本人と言っても十中八九嘘だと言われる顔をしている。

 なら、他の人もそうなのではないのだろうか?

 それなら、この前の子はなんだ?もしかして、そう言う人種がこの世界にも居るのか?

 それはそれで一度会ってみた気もするが、まぁ、会えたなら聞いてみよう。それでもし俺と同じなら、前の世界の話を聞きたい。

 家族も友人も居ない地球にそこまで興味がある訳ではないが、あの戦争が終結したのであれば結末くらいは知りたい。


 話が逸れた。

 今はパーティーをどうするかが先決だ。


(とりあえずはギルドに行くか、パーティーを組もうが組めまいがダンジョンには潜るんだ。それならギルドに行くのが効率的だろう)


 頭のどこかの自分に「効率厨乙」なんてつっこみを入れられた気もするが、ほっておこう。


 移動時に必要な食料の確保のちギルドで自分の売り込み、それから馬車があれば馬車にて出発。

 次にやることは決まったし、まだ昼間だが俺も少し寝よう。

 心は三十路以上だが、体は八歳児。日本にして小学二年生、眠くなるのは当然と言えば当然である。

 目を瞑ると、思っていたよりもそれはそれは簡単に眠った。


 ☆  ☆  ☆


「――っん、っとと寝過ぎちゃったかな……」


 もぞもぞと胸辺りに違和感を感じ、まだ疲れている目を覚醒させ、視線を下げた。


 とうやら、レナも今しがた起きたようで目を擦っているようだ。窓を見ると、少し日が暮れ始め、オレンジの光を浴びて屋根が朝とはまた別の色を放っていた。


「おはよ、今日のご飯はどうしよっか」


 声をかけるが、「う~」と声を返してくるだけで、明確な返事は得られなかった。どうやら目は起きたが、頭はまだおねむのようだ。


 特に返事を急かす気にはなれなかったので、そのまま頭を撫でると「んぎゅー!!」と寝る前より強めに抱き締めてきた。

 なんだこの可愛い生き物、可愛いすぎる。超ウルトラスーパープリティーキュート過ぎる天使か。

 いや、間違いなく天使だ。


「はいはい、ぎゅう!」


 負けじと抱き返した。 レナの顔を見ると何やら満足そうな顔をしている。それを見て、俺も満足な気持ちになる。良い連鎖だ。


 それから、宿で適当に食事を済ませ、床に入った。

 寝てばかりの一日になってしまったが、たまには良いだろう。


(明日は流石に行動を起こさないとな、まず、食料の調達、次にギルドでダンジョンの詳しい情報と出来ればパーティーの確保、もしパーティーを組めたら、それからはアドリブで行動。組めなかったら依頼(クエスト)はパスして、ランクの低いダンジョンで様子見だな、俺のランクがDだからEかFなら今までの感じ余程の事がない限り余裕だろうけど、地域が違うから今まで戦った事がないやつも多いだろうし、これからはレナを守りながらだから…………、まぁ、やってくしかないか)


 これからは一人でレナの護衛と魔獣との戦闘を行わなければならない。単純に今までの倍以上の行動力が要される、例え今までは余裕だったとしても、これからはそうはいかないだろう。

 そう胸に刻みながら眠った。


 翌日になり、当初の予定通り、食料の調達に市場に向かった。


 大陸と違い、町と町の道のりは短く、買い物の量は少なく済みそうだ。それに長期分の食料となると腐らない燻製などを買うことが多かったが今回は二日分なので、腐ることはあまり考えず好きなものを買えそうだ。


 流石港町なだけあって、売られている食材は海から取れるものが多く、何を買おうか迷いながら見ていると、懐かしいものに巡りあった。


「おじさん、このポラの雄を三本下さい!」


 俺は迷い無くタコを買った。

 実際には一週間ほど前にも食べたのだが、この姿を拝見するのは久しぶりだ。


 買うときに店主から、「こんな不気味なもんほんまに買うんかいな、まぁ、売ってるわいもわいやけど……」とか言われたが気にしない。

 だってタコだもの。

 ただ、ちょっとばかし大きいけど、それはいいとしよう。

 流石に油をリュックに入れる訳にはいかないから、唐揚げには出来ないが、タコの事だ、生でも美味しいに決まってる。


 他に食料を買い込み、次なる目的地、ギルドに足を伸ばす。


 ここでパーティーが見つからなければ、俺は一人、違うな、二人でダンジョンに潜る。

 護衛込み前線込み索敵込み指揮込みの込み込みだが、やれるだけはやってみよう。

 少しの不安を拭い去り、俺はギルドの扉を開けた――。



 その結果……



 ――俺とパーティーを組んでくれる人は誰一人見付からなかった。


 誰も爆薬を抱え込むのは嫌だそうだ。

 この世界は世知辛い。おっちゃん辛い……。


 次にただ、ギルドの受け付け(おねえさん)に聞いた時に。


「そう言えば、昨日君と似とる年の子をメンバーにしてたパーティーが来たって話を聞いたで」


 と、可能性の情報を仕入れる事が出来た。

 てか、市場の人と言い、ギルドの人と言い、ここはそう言う方言が使われているのか?


 パーティー名を聞いたが「ごめんなぁ、うちらが他のパーティーの情報を言ったあかんねん……」と言われうやむやにされてしまった。なんでも、パーティー同士の揉め事の誘発行為に触れるらしく、パーティー名やそれ以上の情報はギルドスタッフから開示する事は出来ないようで、プライバシーは結構しっかりしてるようだ。


 ……ん?


 アルディナの時は結構教えてくれた気がするんだけど?


 地域で細かいルールが違うのだろうか。きっとそうだ。


 ただ、少しだけ俺は項垂れてしまった。

 仕方の無いことだろう。ギルド内の殆どから足蹴にされて、ようやく手に入れた情報なのに、名前も人数も何もかも分からないのでは、探しようもない。ただ、希望を見せびらかされた気分だ。


 そんな事を思いながら項垂れていると「ほんで、ほんまは言うたあかんねんけど、トールドールっちゅうパーティーらしいで」と小声で教えて貰った。


 びっくりして、受け付けのお姉さんをガン見したよ。

 嬉しいさ半分、この人なに言ったらあかん事を言ってるんだ半分で。

 お姉さんはどや顔でウィンクなんて飛ばしている。

 スポーティーな体で髪はショートと、体育会系の美少女のウィンクだ。とても絵にはなっているが。

(プライバシーはどうした!)

 とツッコまずにはいられない。


 ……ま、まぁ今それを言ってしまえば善意を無下にしてしまうし、俺が損する事になるので、素直にお礼を言っておこう。


「ありがとうございます」

「ええてええて、でも、うちが言うたなんて死んでも言わんとってな?そないな事したら、うちの首がぎゅってなってしまうさかい」

「はい、言いません」

「うんうん、ええ子や、ほな頑張ってな、あぁせや、それとな、最近なんか道中に賊に襲われる件が増えてきてるから、町を出たときは気をつけぇや」

「え、あ、はい、わかりました」

「まぁ増えたと言っても、まだ注意勧告程度の被害やし、逢わへん確率の方がよっぽど多いさかい大丈夫や思う!」


 ちょっと待て、それは俗に言うフラグと言うやつでは……?


「……気をつけます」


 俺は受け付けに礼を言いつつ、足早にギルドを出た。

 いや、足早になってしまったの方が正しいだろうか。

 受け付けのお姉さんと話している時から感じていたんだけど、終わってからもっと強くなったんだよね。敵意が。あるいは殺意が。

 前にもこんな事あった気がする。

 なんだ?冒険者の間では受け付けのお姉さんと仲良く話したら駄目って暗黙のルールでもあるのだろうか?


 パーティーは組めなかったが、情報は手に入ったし、それだけでも良しとしよう。


 ダンジョンの情報だが、次の町までにFランクが一つあるので、様子見がてらそこに寄るとしよう。


「今日は疲れたし、そろそろ宿に戻ろっか」

「あい!お兄ちゃんだっこ!」

「はいはい、ほぉら!」

「ひゃっ!」


 高い高いするように勢いよくレナを持ち上げると、奇声のような笑い声のような、そんな声をあげた。その後にキャッキャと笑ってるので多分後者だろう。

 以前とは違い顔を隠そうとはせず、一緒に進行方向を向いている。


 ……少しはレナも前進しているのだろうか。


 そうだと信じたい。


 その後は仲睦まじく宿へと歩き、二人仲良く一緒の布団に入った。


 その時に、何故かユリやラルクの事を思い出して、中々寝付けなかった。

 他の三人はどうしてるだろうか。本当にこのまま進めばいいのだろうか。そんな事ばかりが浮かんでいた。

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