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魔法料理 ~異世界の料理は魔法よりも凄かった~  作者: 茜村人
第一章「アルト村編 幼少期」
1/51

プロローグ

短いです。

 眼前に広がる荒野、飛び交う銃弾、倒れゆく軍兵、そして―――

 



―――――――突きつけられた銃







 20xx年

 第三次世界大戦、核を使用した戦争が起きた。

 幾つもの国が地図から姿を消し、そして、日本も安全な国ではなくなった。

 自衛隊は戦争に行き、志願者も戦争に行く、そんな時代が幕を開けた。

 俺は志願者の一人だった。

 両親は既に居ない。兄弟も兄が二人居たが、もう居ない(・・・・・)


 戦争ってのは残酷だね。


 俺も一緒に殺して欲しかったのに――




 ――三八歳の誕生日



 こんな世の中だから俺は家族と祝おうと、せめて誕生日くらいは自分達だけの平和を作り上げようと、そう思った矢先に俺の住んでる町に空からの爆撃、所謂(いわゆる)空爆に襲われた。

 


 俺はケーキを買いに少し離れた町まで出ていた。

 どうしてそこまで行ったんだろう。


 ……あぁ思い出した。


 確かケーキも原料が取れなくて、俺達の住む町付近では、そこでしか売ってなかったんだ。


 空爆で建物が壊れ人々が死んだ。

 それは他人事に出来るわけも無く、俺の家も家族も死んだ。


 当然のように俺は生きた。


 生きてしまった。


 ははっ。

 人生恨むよこん畜生。





 怒りと悲しみと、それと、狂った世界がスパイスになり、俺は戦争に参加した。




 ――――殺した。


 敵と言う敵を殺した。


 殺して殺して殺して殺して


 一年位かな。確か九月に戦争に参加して今が翌年の七月だからもうすぐ一年。


 俺は未だに戦争と戦ってた。

 そんな時だった。

 荒野での銃撃戦、俺は荒れ狂うように殺した。


 慣れたもんだ。

 今考えれば、その慣れがいけなかったのかも知れない。


 唐突に伏兵が現れた。


 全く気付かないうちにすぐ目の前まで接近していたのだ。


 伏兵は左右両方から挟み込むように俺達を迎え撃った。


「くそっ」


 咥えタバコを吐き出しながら呟いた。


(これは死ぬわ。)


 理解出来た。出来てしまった。

 武器の残弾も少ないわけではないが、それを考慮しても、有り余るほどの敵がいる。

 長年でもないが、この一年でそんな計算も出来るまでには、心に余裕が出来ていた。 

 それに、やっこさんは銃を構えているが、こちらはまだ銃を構えてもいない。

 親切にこっちが構えるのを待ってはくれない。

 やっこさんから鉛のプレゼントが送られてくる。

 一緒に戦ってきた奴らは死んでいった。

 なんとか対応しないと、そう思い銃を構えた時、やっこさんと目が合った。

 やっこさんの銃火器から鉛が放たれた。


 寸分たがわず俺の方に。


 ――――死。


 それが分かった瞬間、永遠にも近い一瞬が訪れた。

 両親が死んだ時の記憶、俺が幼かったときの記憶、脳裏に焼きついている記憶、それぞれが何重にも重なるように流れた。


 走馬灯ってやつなのかこれが。


(もう少し生きたかったな……親父、今行くわ)


 何故だろう。

 両親が死んだ時は、死にたいと、確かにそう思っていたのに何故か今生きたいと、そう思えた。




 ――――走馬灯が終わるとき、俺の頭は鉛によって撃ち抜かれた。







 目が覚めた。




 おかしな夢を見た。

 戦場に行って敵を殺しまくる夢だ。

 伏兵が出てから鉛が当たるまで、鮮明に覚えていてる。

 正直トラウマになりそうだ。

 最後の銃から弾が出た所は思い出すだけで身震いしそうだ。

 吐き気はないが恐怖で今でもちびりそう。

 三八歳にもなって何がちびるだと少し冷静な俺がツッコミを入れてくるが、大人でも怖いものは怖いんだ。

 なんだっけ、生存本能とかが働くから生理現象だ。


 そんな一人漫才を繰り広げながらふと気がついた。


 ここはどこだ?


 全くもって見知らぬ天井だった。


(なんだここは? )


 周囲を確認する為に体を起こす。いや、起こそうとした。

 だが思い通りに体は起き上がらなかった。

 まるで、縄で全身を縛られているみたい……に……って――


(……縛られている!?)


 みたいとかではなく、これ完全に縛られてるだろ!

 首すらピクリとも動かせない。


 俺は必死に体を動かそうと、全力を出した。

 だが反抗虚しく体は動かない。

 これはやばい! 生け捕りか? これから尋問か? と恐怖で思考がぐちゃぐちゃになっていく。

 冷静になるなんて無理だ。


 その後も何度か脱出を試みているが、やはり体は動かない。

 動かそうとしても、体が言う事を利かない。


 その時。


 ギシ、ギシ、と床を歩く音が俺の耳に入ってきた。

 距離はそう遠くない。


(ちっ!やっこさんかよ、くそっ!)


 まともに心の準備も出来ていないまま、無造作に扉が開いた。

 現れたのは、白髪の黒縁眼鏡をかけた見た目は二十歳後半くらいの男と、青色の髪の毛を後ろにくくった若そうな女であった。


「ж¢☆£ёДЙ」


(うわ、マジかよ……これ死ぬわ……)


 本日――これは本日なのか――二度目の直感が降りてきた。


 日本ってのは先進国だ。

 それなりに知名度があるし顔を見たら大体わかる。たまに中国あたりと間違えられるけど、俺が着ていたのは日本の国旗付きの軍服だったしな。俺を日本人だとわかっていて、翻訳もせず意味不明な言語喋ってる。

 交渉材料とか、ここまで戦争が酷くなったら日本でも意味ねぇし、だめだこいつ尋問好きなやっこさんかなんかだわ。


(……親父、今行くわ)


 何度目になるだろうか。親父との再会を約束した時、男が不意に近づいてきた。



 ――多分俺は漏らしている。股間辺りがすんげぇ熱いもん。


 もしかしたら、夢の時点ですでに漏らしていたのかも知れないが、今は確実に漏らしてる。

 怖すぎて言葉も幼児化しそう。

 いや、思考はもうしてるわ。

 赤ちゃん言葉とか使ったら、笑って握手して許してくれないかな、とか考えてるもん今。


 そんな事を考えていると、男は目の前までやって来た。やって来てしまった。


(お袋…そっちでも味噌汁作ってくれや……)


 もう最後の一回と思いながら幾度となくしたこの世とのお別れを済ませていると、すっと男の手が伸びた。





 咄嗟に目を瞑った。





 浮遊感



 不思議と心が落ち着いた。

 それと股間が重い。大きいのも出ているなこの重さ。


 ん?

 浮遊感?


 俺は生首にでもなったのか?

 成人を持ち上げるのに、あんな腰の入ってない手の出し方では不可能だろう。

 なんだ?

 俺は生きている。

 意味がわからなかった。


 恐る恐る、目を開けた。



 そこには――



 俺の股間を見て焦る男の姿と、すぐ隣で俺を受け取ろうとする、女の姿があった。





 俺は生まれ変わった。



 その事を理解し終える頃には、股間の生暖かさは清潔さへと変わっていた。


初めての執筆です。ご意見ご感想頂けたら幸いです。

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