煩悩寺の変態
寺に来た檀家の男性に告白したその男、小野上如謙は僧侶である。日々、煩悩に悩まされ、出家したもののしきれずにいた。
日々募る恋心、出家する前よりも道を外れたと思うようになった。
「今日も山本君、説法会に来ないかな♡」如謙は僧侶になったと言うのにオカマキャラとなってしまった。
厳しい修行を越えている間に性格が曲がってしまったらしい。
「如謙法師、参りました。山本です」山本広重、かつては宮根地区のヤンキーであったが心を入れ替えて警察になった男である。
元は、十代目武羅蛇亜の総長でフランスパンを頭につけてブンブンブンブン走らせていた男であった。
「あら、山本君今日も説法聞きに来たの?嬉しいわね」
「先生の説法は面白いです。それに眠くありません」
「嬉しいわね。私と一緒に僧侶と警官の禁断の恋。体感してみる?」
「えっ!?住職、それはいけません。止めてください。う、うわぁぁあ」
「あれ?山本君。大丈夫?恍惚してるけど」
「せ、先生何があったの?俺。全然覚えてねぇけど、変なことしたら逮捕するからな、強要罪で」
「分かってるわよ。それに山本君顔が笑ってるわ」
「俺は嫌がってるかもしれないぜ」
「そうかも知れないけど、阿弥陀様が全てお見通しよ」
「そうだな。やはり住職はお坊さんなんだな」
「何よ!何が言いたいのよ。私がこうなったのも自己防衛が働いたせいだからね!元はこんなんじゃ無かったから!」
「いや、怒んないで下さいよ、法師。俺、務所に入って考え直したんすよ。全ては阿弥陀様がお見通しだと如謙法師の教誨を聞いてね。それでお世話になった警察で働こうと頑張ったんです」
山本は、不真面目連合という一大暴力団勢力に喧嘩をうって付近の住宅(空き家)で抗争を起こした。
そこを警察に見つかって捕まってしまったのだ。結果的に不真面目連合の総長、小涌井も逮捕され両者の抗争は自然終結となった。共に住居不法侵入罪であった。お互いに隣の牢に入れられ良く話をした。話を聞けば、小涌井はいい人であった。
景気を終えた彼は料理店でバイトしながら執行猶予が切れるのを待った。そして猛勉強して警察官となった。
そして不思議な縁だが、強盗にあった事件の被害者が小涌井であった。俺は全力で捜査し犯人を逮捕した。幸いにも武羅蛇亜のメンバーではなかった。
「私の説法で救われるなんて嬉しいわね。今日の説法は何にしようかな」
「では心が温まる説法を宜しくお願いします」
如謙の説法は今始まろうとしていた…