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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
第2章 妖精郷の脳筋(?)妖精
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錬金術師、出発することになる

ロクサーヌ・アスタロスさんに手を捕まれ、僕と紺さんは宙ぶらりんのまま、お城からいつもの妖精郷の出入り口に連れてかれた。


「オエェェェ……ぎぼぢわるい゛……」

「剣太さん、吐くなら向こうで……うぷっ……紅茶が逆流する……」


さながらジェットコースターの如く、高速で揺らされながら連れ去られた、というか吊れ去られたので、僕達は完璧に酔っていた。


「大丈夫ッスか?」


僕と紺さんが元凶に斬りかかり、殴りかかったのは言うまでもない。尤も気持ち悪さが勝ってろくなものではなかったけども。


―――――


「それでロクサーヌ師匠。剣太さんと駆け落ちする、とのことですが、私に何か弁明はありますか?場合によっては怒りますよ?」


しばらく酔いが治まるまで待ってから、既に怒りのオーラを纏う紺さんはロクサーヌ・アスタロスさんに圧をかけていた。

その圧をかけられているロクサーヌ・アスタロスさんは律儀に正座して、しかし、慌てることなく答える。


「黒金君だけじゃないッスよ?紺ちゃんも一緒に駆け落ちするッス。」


「ロクサーヌ師匠、それは駆け落ちとは言いません。駆け落ちは男女が許されぬ恋をし、そして認められないならば誰も知らないどこか遠くへ、具体的にはホッカイドーなる北国へ行く……というものであると私の趣味の書物にありましたから、剣太さんと恋仲でない貴女が使うのは間違っています!!」


「え!?そうなんッスか?男女の逃避行のことを駆け落ちって言うもんだと思ってたッスけど。」


「い、言われてみれば………か、駆け落ちになりますか、これ?」


ロクサーヌ・アスタロスさんの返しに紺さんは衝撃を受け、こちらに救援というか確認を僕に求めてくる。

ちなみに、紺さんがいう書物とは地球(向こうの世界)の少女マンガや小説のことだ。吸血鬼公国在住の生存組先代勇者の人から貰っていたらしい。

わりと趣味が乙女チックというか、喪女度が増しているというか……


「いや、まぁ、この場合は、えっとー……逃避行とか出奔とかそういうのじゃないですかね?

………最悪の形だと、僕達による妖精郷への内部破壊工作とか引っこ抜きとか…」


よく考えてみれば、妖精郷の大人物を1名、国から出すことになった原因が僕達である可能性があるわけで、罪に問われてもおかしくないのでは、これ?


「それってまずくないですか?」


「まずいと思う………いや、わりと冗談抜きであり得なくはないかも…要職についてた人物を出奔させるとか、国家転覆罪に問われかねないんじゃ………」


僕と紺さんは互いの目を見て頷いた。


((説得して止めなくては!!))


しかし、そうは問屋が卸してくれなかった。


「あ、ソル、スタールド、ルナティカ、ローリエ。遅かったッスね。さぁ、ちゃっちゃと用事を済ませるッスよ。」


文章にしたらいつ以来かになる気がするロクサーヌ・アスタロスさんの部下4人の妖精さん達が詰所からやってきた。


「いや、隊長、遅い早いとかじゃなくて!!」


「何してるのですか!?としか私達言えないんですけど?」


「突然ソルに役職譲るからという連絡が来たと思ったら、今度は王城から隊長が出奔するとか情報入ってきますし!?」


「隊長、何やらかしたんですか!!」


「お前達は何でウチが何かやらかした前提なんッスか!!」


「「「「日頃の行いを省みてください、隊長!!」」」」


ここでお世話になって、見慣れたこの光景がとても厄介に今はなっていた。

この流れになると口が挟めなくなるほど話が進んでいってしまう。例えるなら井戸端会議だ。おばちゃんパワーに圧倒されて声をかけたり声を出したりできない、あんな感じだ。

そして、僕と紺さんはこの一瞬怯んでしまったのがいけなかった。


「とりあえずウチは陛下と大喧嘩して、しばらく自由になるために国を黒金君達と出ることにしたッス」


「何言ってるんですか、このバカ(隊長)。育ての親と喧嘩して家出というか、国出するとか何言ってるんですか?何歳児なんですか!!」


「あぁ、スターが頭抱えちゃった!!いや、確かにほんとに何してるの、隊長も陛下もだけど!!」


「てかなんで私が後任なんですか!?」


「頑張るッスよ、元副長現隊長!!」


「酷い後任への引き継ぎを見ましたねぇ。」


「まぁ、幻術の結界はこないだ貼り直したッスし、4人なら見回りと点検もやれるッスし、問題はないッスよね」


「はいはいはい!!やれることとできることは違うと思います、隊長!!」


「はい、ソルの意見は却下ッス。やれるやれない、できるできないじゃなくてやらなくちゃならないッスからね。」


「隊長の天使ー!!独裁相(どくさいしょう)ー!!」


「独裁相様を天使と同列にするなッスよ!!

それで、王城からはウチらを捕縛しろとか何か指示はあったッスか?実力を行使するッスか?全力で抵抗させてもらうッスよ?」


「隊長、貴女、自分の実力わかってますよね!?両陛下のどちらかがいてようやく抑えれる存在を、並み程度の私達が止められるわけないじゃないですか!!しかも、貴女に鍛えられた黒金さんに紺様までとか無理ってわかってますよね!?もうやだ、スターおうち、かえる!!」


「よーしよし。スタールドは何も悪くないよねぇ……」


「あぁ、スターが幼児退行しちゃったし、ローリエはローリエで関わりたくないと言わんばかりにスター慰め始めるし!!ソルはバカだから使えないし、私だけじゃないですか今まともに隊長と話せるの!!」


「「「栗の癖に」」」


「だーれが栗かぁ!!てか、そこの幼児退行と保護者!!正気に戻ったなら隊長どうにかしなさい」


「ママー、栗がこわいよー」


「よしよし、スター。ママがいるから大丈夫ですよー。」


「こいつらは……!!」


「というか、私はバカだから使えないってどういうことだし!!」


「「「「何も間違ってないでしょ(ッスよ)」」」」


「隊長までそんなこと言うんですか!?あったまきた!!だったらなってやりますよ、隊長に!!それでみんなをギャフンと言わせてやりますからね!!」


「ソル!!じゃなかった、バカ!!挑発に乗るな、バカ!!じゃなかった、ソル!!」


「言い間違えるとこないよね、スタールド!?」


「バカ、も、ソル、も2文字でしょ?」


「あ、そっか……ってなるかー!!」


「というか、ソル、引き受けちゃったってことは……」


勢いに気圧されていた僕達の方を向き、ロクサーヌ・アスタロスさんはとてもいい笑顔で、


「そんなわけで引き継ぎも終わったッスし、ちゃっちゃと駆け落ちなり出奔なりするッスよ」


とこちらに報告をしてきた。

完全に場の流れに乗り遅れてしまった。いや、でもこれは無理だって。しゃべくり漫才みたいなことしながら話を進められるんだもの。間に入る隙が無さすぎる。

ちなみに話の中にあった「天使ー!!独裁相(どくさいしょう)ー!!」というのは地球でいうとこの「鬼!!悪魔!!ち○ろ!!」みたいなもので、独裁相どくさいしょうっていうのは500年ほど宰相をしている山村榛名さんのことである。話によれば笑顔の絶えない職場らしい、夜刀神国の中枢は。


「ロクサーヌ師匠、あの、そんな雑な感じでいいのですか?」


引き継ぎ経験のある紺さんは文化の違いというか、そもそもかなりの重役ポジションが簡単に変わってしまったことに僕以上に困惑している。


「大丈夫ッスよ。実際、ウチの幻術に及ばずとも4人でなら十分やれるぐらいッスし、なんならウチが1人でやってたことを4人で分割すれば遂行速度も上がるッスし、いいことずくめッスね。」


「やれなくはないですけど、働きたくないんですけど、隊長!!」


「知らないッス、却下ッス。

だいたいウチの国の妖精(ヒト)達は魔力量が生まれもっておかしい王家と魔王と呼ばれる一角の女王陛下は別としても、並の生まれであるウチがただひたすらに努力し続けただけこうなったのに、それを規格外扱いするのは些か不本意だと思うんスよね。

だから最前線でサボるわけにも遊ぶわけにもいかない状態にしておけば4人も晴れて強くなれるッスからいいことじゃないッスか。」


「横暴だー!!」


「でも、ここで抗議がてらサボったらヤバいのはわかるッスよね?」


「おかしい……私の最前線基地勤務はロクサーヌ・アスタロスという希代の英雄のお陰で楽に済むはずだったのに、なんで逃げることも許されず働くことになったんだろう………」


「諦めましょう、スタールド。所詮凡人である私達には隊長のような怪物に振り回されるしかないのよ……」


「ローリエ、諦めがよすg……貴女、よく考えたら王都との伝令役だから私達のなかでもあまりここにいないよね?もしかして他人事だと思ってない!?違うよね、ローリエ!?」


「何言ってるかちょっとわからないですね。」


「ローリエェェェェェ!!!!」


スタールドさんは膝をつき、ローリエさんは自分は関係ないフリをし、それをルナティカさんが指摘して絶望し、ソルさんはなんだかもう達観しているというか諦観しているというか、そんな感じの表情を浮かべていた。

何故だろう。自業自得な面とか落ち度がないとは言わないけど、横暴な上司に振り回された被害者にしか見えなかった。


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