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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
第2章 妖精郷の脳筋(?)妖精
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閑話 八卦見、衝撃を受ける

久々の投稿になりました。

FGOを始めたことは関係ありません。清姫の最終再臨のための素材集めにレベリングとかやり終えていませんからね‼

夕食のあと、指定されたように密室状態の部屋で待っていると、突然空間に亀裂が入り、そこが広がったかと思ったら、どこかで見たことのある背景を背にメイド服を着た無表情なお姉さんが現れ、そして亀裂が閉じた。


あまりにも予想外だったから、槍を構えることもできず私は立ちすくんでしまった。

そんな私の様子を見て、彼女は会釈をし、自己紹介を始めた。


「初めまして、高町なずなさん。私は旧姓嘉納、今は高町武蔵と申します。こちらの世界で500年前、向こうの世界で5年ほど前に召喚拉致された中学生だった日本人です。」


「なっ!?」


思わず大きな声がでそうになったけど、高町さん……って私がいうと変な感じだから嘉納さんから人差し指を唇に当てて静かにするようにジェスチャーされてギリギリで踏みとどまった。

でも、驚かないわけがない。だって日本人ですなんて急に言われたら……ちょっと待って。500年前に勇者が呼ばれたのは聞かされていたけど、地球だと5年前にってことは……


「やっぱり……」


「恐らくお考え通りですよ。私は真宵ヶ関中学に在籍しておりましたので。そして貴女の兄にあたる方と同級生であり、彼が夫です。

つまり、高町なずなさん。貴女は私の義妹となりますね。」


淡々と脳裏をよぎったことを言われて、私は頭が真っ白になった。

そんな、まさか、お兄ちゃんが生きていたなんて!!それにこれで手紙の義姉の意味もわかったし、でも、それ以上に展開が早すぎて訳がわからないよ!?

行方不明になっていたお兄ちゃんが異世界で結婚してるとかどうしてそうなったの!?


「混乱なさるのも無理はありません。私達にも色々あったということです。

もしお疑いでしたら、あの男から聞かされた貴女の話をいたしましょうか?保育園にいた頃はよくなついてくれていたのに、織斑君にであってから、兄離れされて奴を敵認定したと語っていましたよ。」


「ちょ、お兄ちゃん!?そんなこと思ってたの!?」


普通に第一次成長期で兄離れしただけで、全く一誠君は関係ないのに、本当にお兄ちゃんはシスコンだなぁ……

ただ、何となくだけど、この人は嘘を言っていないとわかった。お兄ちゃんのことを「あの男」って言った時、とても嬉しそうな幸せそうな表情をしていたからね。


「他にはそうですね……黒金剣太さんとあなたが同級生だった話もありますよ?」


「……知っているんですね、私と黒金君のこと」


「ちなみに黒金剣太さんとはお会いしておりますが、その際にこのことは言っておりません。

これについて、私が何かを言うつもりはございません。それは当人達の間で決めることですので。」


「………わかりました。嘉納さんを信じます。それでお兄ちゃんは……」


「……そう、ですね。そこもお話ししましょう。」


急に声音が下がったため、私は最悪なことを想定した……

せっかくまた会えると思ったのに、そんなのって……


「今は同級生の権力者から貰った島で観光行を営みながら、天使を倒すために昔の傷を癒しつつ、息子や娘達、あと孫を猫可愛がりしつつ、貴女に会うために生きていますね。」


おもわずずっこけた。

深刻な口調だから覚悟したのに、何やってるの、お兄ちゃん!?嘉納さんも急に声音を下げないでください!!………ん?


「息子や娘達、孫?」


「地球では5年ですが、こちらでは500年経っていますからね。

私と彼は【役職】によって、人から人ならざる者になり、500年生きてこれましたが、そのなかで、その、まぁ、はい。そういうわけです、えぇ。

それで息子娘も私たちと同じ固有種族であり、孫の羽入(うい)は母方の血を濃く継いだ可愛い女の子ですよ。」


嘉納さんは無表情のまま、言葉を濁しながら家族を紹介してくれた。

でも、待って。つまり私、異世界に来たら叔母どころか大叔母になっちゃってるの!?何で!?どうしてこうなったの!?

思わず頭を抱えてしまう。だって、展開が早すぎて訳がわからないよ。何これ、夢なの?


「……頭を抱えられるのもわかりますが、時間もありませんし、少し横道に逸れたので、お話を戻させていただきます。

私達の境遇及びこの世界の真実、そして黒金剣太様からのお手紙をお渡しします。」


そうだった、黒金君から手紙があるんだった!!

お兄ちゃんのことは後にしよう、うん。会ったら色々言わなきゃ。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ということがこの世界で起きていることですね。

ところどころ省略していますが、お聞きしたいことがあればその部分も含めお答えいたしますよ?」


嘉納さんから聞いたこの世界の実状は衝撃的過ぎて言葉がでなかった。

まさか天使教にそんな裏があって、世界ではそんな戦争が水面下で起きており、そして何よりもお兄ちゃんが魔王の1人であることまで聞けば、どうしても頭が追い付かなかった。

つまり、私達は今、敵地にいて、この世界のための生け贄にされかけているってことなの?


「!?なずなさん!?」


そう考えが辿り着いたとき、私は膝をついて倒れ、おそらく真っ青になって震えてしまっていた。

私がここに残ったのは間違いだったの?黒金君もこのことを知っているんだろうから、ここに来るはずがないよね?じゃあ私のしてきたことって無駄だったの?このまま私は私じゃなくなっちゃうの?

そんな絶望に陥りそうになったとき、嘉納さんが私の目の前に何かを見せてきた。

それは封筒。黒金剣太、と書かれているものだ。

嘉納さんの手からそれを奪って、開封すると、中には手紙と何かお札のようなものが入っていた。



『高町なずなさんへ

突然の手紙、失礼いたします。

今、僕は‘奈落’の底で手紙を書いています。

この手紙で僕は2つのことを告白し、高町なずなさんを助けたいと思っています。


1つめの告白です。僕は天使教と敵対して行きます。つまりクラスメイト、ひいてはベビルベリー王国と敵対することになると思います。僕はここで、高町なずなさんのお兄さんである高町倫太郎さんの同級生の人たちと出会い、真相を知りました。しかし、僕はその復讐を肩代わりするつもりはありません。

ただ、既に下っ端ではありますが、僕達の魂を狙う天使と交戦し、そこで僕個人として敵対することを決めました。


本来なら王国に戻って真相を話すべきなんだろうけれども、嘉納武蔵さんから聞いた話によれば、僕達は指名手配されてしまっているため、間違いなく話を聞いてもらえないと思っています。

こういう場合、話を通すためには相手を上回る何かしらの力が必要だと思うので、僕は見聞を広め、力をつけて、天使が王国へ来るまでに戻って交渉しようと思っています。


ここで、何故王国やクラスメイトを見捨てず、戻るのかということですが、それが2つ目の告白になります。

高町なずなさん。僕は貴女のことが好きです。友情などではなく、男女としての、恋愛感情としての好きです。

貴女が僕に話し掛けてきてくれることが最初は訳がわかりませんでした。でも、僕が警戒していてもめげずに話し掛け続けてくれるうちに、いつのまにか心を許していた上、なんだかわかりませんが、懐かしい感覚に囚われ、気付けば惚れていました。

だから、この手紙の答えを貰うために僕は戻ります。例えフラれるとしても、直接貴女に会って、そしてその言葉で聞きたいからです。

断っておきますが、フラれたからといって助けないなんてことはしないと誓います。僕達は等しく被害者だから、しっかりと落とし前を天使教にもベビルベリー王国にも、この世界にもつけてもらわなくては僕のポリシーに反しますから。


というわけで、僕は必ず力をつけて再び王国に訪れます。

それまでどうか諦めず、生きていてください。そして、色好い返事がされることを願っています。


黒金剣太』



その手紙を読み終えたとき、さっきまでの絶望感はどこへやら、私はやる気に満ち溢れていた。

だって、私の想い人もまた私のことを想っていてくれたんだよ?

これでやる気がたぎらない方がおかしいよ。

それにしたって、黒金君からラブレター貰えるなんて思ってなかったなぁ。そっかぁ。戻ってきてくれるんだ、よかったぁ。

そうとなればやることは決まっている。

今の状況を無理矢理にでも打破できるぐらいの力と地位を得て、黒金君が帰ってきて苦労しないようにしなくちゃ。そのためにも、そういう政治的なことを考えるのが苦手な私の補佐と、鍛練のための師を得なくてはいけないよね。

………いるじゃん、目の前に。


「嘉納さん、いえ、お義姉ちゃん!!これからどうする予定ですか?」


「………とても顔つきが変わりましたね。本当にあの男とそっくりですね、その感情表現の豊かさと切り替えの早さ、そして自分の欲が絡んだときの頭の回転の早さが。

私はこれより人狼の隠里に赴き、定期連絡を終えたのち、すぐさまこの王城にて一介のメイドとして身を潜めつつ、皆様を陰ながらお守りするつもりですよ。」


やれやれ、と表情に浮かべながら、それなのに嬉しそうにお義姉ちゃんは答えてくれた。

というか、お兄ちゃんに似ているって誉め言葉かどうか怪しい……あのお兄ちゃんだし。


「一介のメイドじゃないとダメですか?」


「そうですね。一応諜報も兼ねておりますので一介の方がいざというときに消えやすいのでそちらがいいですね。」


「勇者付きのメイドにはなれませんか?」


「………なるほど。確かに数名、世話係として貴女達に付いている子がいますね。しかし、私は新人として最初、入りますから、それは少しばかり骨が折れるかと。」


にべもなく断られてしまった。

うーん。身近にいてもらうことで、相談相手になってもらったり、本気でやる鍛練の相手になってほしかったりしたけれども、無理にはできないよね。

とはいえ、お義姉ちゃん以外、鍛練の師匠としても、地位確保のための政争を助けてくれる人はいないはず。

どうしようかなぁ……うぅ…勢いでのわちゃんと別れるんじゃなかったのかなぁ……いや、それだけは考えちゃダメだ。私達は互いに依存していた部分があったから、お互いの自立のためにも間違っていないんだから‼


「…そうですね。1ヵ月待っていただければ、貴女が行おうと思っていることに協力できますよ?」


頭を抱えていると、お義姉ちゃんはそんなことを教えてきてくれた。


「なずなさんは自分の鍛練相手が欲しいということと、クラス内での発言力の強化が欲しいということですよね?そして、私なら鍛練の相手としては最適、発言力を増すために必要な情報収集やフォローなどもできます。

ですので、1ヵ月で貴女付のメイドとなりましょう。少しばかり反則はさせていただきますが。」


「えっ、あっ、えっ!?なんでわかったんですか、私が考えていたこと!?」


「メイドたるもの主の考えを読み取り、応えなくてはなりませんので。私は倫太郎さんの妻であり、彼に仕えるメイドです。その妹君にも同じようにできるのは当然です。」


頭を下げ当たり前のように答えるお義姉ちゃん。凄いプロフェッショナルだ……



こうしてお義姉ちゃんとの最初の邂逅は終わり、私は来るべき時のために自己鍛練をしつつ、王城の中を奔走してクラスの緩衝材として動き、王国の動向を見ていること1週間後。

自室にいた私の前には今日から世話役となる1人のメイドさんがいた。


「お待たせいたしました、高町なずな様。本日より世話係となりました、ニーヤ改め高町武蔵でございます。

身分詐称しておりますので、今はニーヤとお呼びください。」


うん、お義姉ちゃん、凄い。1ヶ月どころか1週間で来てもらえちゃったよ。

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