錬金術師、気になる
透き通るような水色の水晶のようなポニテの美女は可笑しそうに笑いながら現れた。
白いワンピースのようなドレスを纏い、気品溢れる姿からわかるように、成長しているため僕が見たことのある姿からは変わっている。
しかし、それでも凛凛しい顔立とそれに矛盾するように存在する童女のような顔を持つ、平塚才人さんを慕っていた少女の面影は残っていた。
そう、現れた女性は現妖精女王コルド・ティターニアさんであった。
「へ、陛下!?お、お早いお着きですね!?」
「それはそうですよ。ローリエの復路に着いてきたのですから。」
「うぇっ!?じゃあ護衛も無しにこんな最前線に来てるんですか、陛下!?」
「そうですね。でも、妖精郷の中でも屈指の戦士であるロクサーヌとその部下の貴方達がいるから大丈夫よね?」
「ひぃ!?失敗したらダメだし、成功してもこれ評価されて昇進させられて自由が無くなる奴だぁ!!」
「きょ、今日のソルはとても頭が回りますね?頭でも打ちましたか?」
冷や汗をかくほど焦る3妖精の方々に対して、にこやかに返すコルド・ティターニアさんに返された方は戦慄しているようだった。
ロクサーヌ・アスタロスさんはというと、ニコニコと場の成り行きを見ている。
というか、妖精郷屈指の戦士って言われてたわけだけど、やっぱりただ者じゃなかったのか、ロクサーヌ・アスタロスさん。
「さて。貴方達の処遇についてはそのうちってことで、本題に入りましょうか。
500年ぶりに召喚された勇者である黒金剣太さん、そしてお兄ちゃんとお姉ちゃん、いえ、“魂を見透かす魔王”と“女神に最も近い魔王”の血を引き、さらに大仙人と現世神の血も引く【天狐】平塚紺さんですね?」
その発言に場が凍りついた。
僕はやはり知っていたかとは思ったものの、それよりも、ここでいうとは思っていなかったのでリアクションを起こせず硬直してしまい、紺さんも同じように固まってしまっている。
笑みを浮かべていたロクサーヌ・アスタロスさんは呆然としたような表情になって、こちらとコルド・ティターニアさんを交互に見ている。
そして三妖精+1の方々は顔を真っ青にして今にも倒れ、あ、ルナティカさんが倒れた。
『カハハハハ。流石は【氷妖精】。魔力無しで場を凍らせるとは。』
「え?なにか問題ありましたかね?事実ですよね?・・・・ん?今の声は誰ですか?」
何故こんな空気になったのかわからないと首をかしげつつ、小梅さんの声に気付くコルド・ティターニアさん。
なんというか、図太いというか、マイペースというか、面の皮が厚いというか、鈍いというか・・・多分こういう感性が政治家には必要なんだろうなぁ。
そして、それと同じく場の空気なんか知ったこっちゃないと言わんばかりに‘魂魄用無’も話しかける
『ここ、ここ。この刀だよ。直接話すのは初めてだけど、ビックリしてくれたかな?』
「えっ!!もしかして白鬼院小梅さんですか?お兄ちゃんから話は伺っていましたけど、本当に話せるんですね!!」
余裕ある女性から一気に子どものような雰囲気になって驚くコルド・ティターニアさんに、妖精さん達は声を潜めて、
「なんなんですか、あの陛下のご様子は!?」
「これは本当にあの刀の方とお知り合いみたいですね。」
「いやはや、陛下のあんな姿を見るのはウチも初めてッスねぇ」
と囁きあっている。
『ま、細かい話は追々として、それで、なんでけー君にこーちゃんのこと知ってるのさ?はーちゃんから聞いてた?』
はーちゃんというと、わりと現在、僕達を手のひらで転がしている疑惑のある山村榛名さんか。
確かに転がしているなら、僕達が妖精郷に来ることも知っていて、事前に伝えていたからここに女王陛下であるコルド・ティターニアさんがおいでになられたのだろうけど。
しかし、その予想と外れた答えが返ってきた。
「いえ、はーちゃんというのが榛名姉様のことでしたら違いますよ。
武蔵姉様から黒金剣太君および召喚された勇者のことはつい1週間ほど前に聞いてましたし、妖狐の里とは昔からの付き合いですから、見れば誰かぐらいわかりますよ。」
おお!?ここで嘉納武蔵さんの名前がでてくるのか!?
いや、そういえば嘉納武蔵さん、僕に狐の隠れ里へ行かせて、自分は他のとこを回るって聞いた記憶があるなぁ。
リアクションからして、この状況は山村榛名さんの手のひらかどうかやや怪しいところになってきたかな?どこまでも読めない人だなぁ。
そういえば嘉納武蔵さん、ちゃんと手紙を届けてくれただろうか。




