錬金術師、驚愕する
何故か話の流れで妖精郷への入口を守る門番の詰め所に行くこととなったので、意識を現実世界に戻すと最近寝慣れたところだった。
やっぱりさっきのは夢だったようだ。
『起きたかい、けー君。悪いけど、夢だけど夢じゃなかった、な現実だから早めに詰め所の方へ行こうか』
枕元の妖刀‘魂魄用無’に声をかけられて、さっきの夢が夢でないことを悟る。
そこにコンコンとノックがされる。十中八九紺さん、というか彼女しかいない。
「剣太さん、早く行きましょう、あの泥棒猫のハウスに。」
「いや、待って、なんでそんな言葉・・・知ってるかはわかったけど、使いどころが違わないかなぁ!?」
何故彼女の知っている地球のネタの語彙は、こう、偏っているというか、なんか微妙にずれているというか、残念な感じなのだろうか?
そんなことを思いつつ、僕達は‘工房’の外に出た。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「ども、さっきぶりッス。」
外にでるとさっきの恋妖精さんがいた。
さっきのドエロい格好に籠手と脛当を装備しているアンバランスさはどことなく妖艶さがあった。
というか、爆乳でムッチリしてると思ったが、よく見ると程よく引き締まった鍛えられた肉体をしており、健康美というものを感じる。うーん、彼女をモデルに彫刻とか作ったら高評価貰えそうだなぁ、地球なら。フィギュアだったら確実に高値で売れる。
「なんッスか?ウチをジッと見つめて?おっぱいならウチに勝たない限り揉ませないッスよ。」
「安心してください、恋妖精さん。剣太さんのおっぱい揉ませ担当は私で間に合っていますので。なのでそんなこと警戒しなくていいですよ。」
「それはそれで恋妖精としてはプライドが傷付くッスねぇ。どうッスか?お試しで触るぐらいなら許すッスよ?」
「ほう、私の前で剣太さんを誘惑しますか。いいでしょう、お望み通り殺して差し上げますよ。」
「わー、ストップストップストップ‼なんで一触即発な関係に一瞬でなるのさ!?」
ボーっとテキトーなことを考えていたら、何故か2人は喧嘩を始めていた。
「いや、なんでもかんでもウチのことをジッと見てたから、おっぱい揉ませないって言ったらこの妖狐の子が反論してきたんスよ。だからウチはムカついたんで、触らせようとしたら益々文句を言ってきたんじゃないッスか。」
「当然の主張ですが?いきなり男性に、それも剣太さんにおっぱいを揉まれることを考えたり、触らせようとしたりするような痴女行為を糾弾しているだけですし。そもそも貴女のを触ったり揉んだりするなら、まずは私のをしてもらうべきです。」
再び2人の間で火花が飛び散る。
上の空で考え事をしていたら、何故か胸を揉む揉まない触る触らないで争いが行われていた件。
というか、本当に紺さんはどうしてここまで色ボケた感じになってしまったのか。いや、僕が責任をとってないからなんだろうけど・・・
『はいはい、みんなそこまでだよー。まったく。ピンク髪でもないのに淫乱キャラばかりとか、エロゲじゃないんだから本来の目的に話を戻すよ』
「いや、その偏見もどうなんですかね?」
頭を抱えていると小梅さんが本筋へと戻してくれた。が、ツッコミはしなくてはいけない。
「それもそうッスね・・・・・・ってインテリアソードッスか!?」
目を見開いて僕の腰に下げている刀を見る彼女。
にしても、インテリア?・・・・あー、わかった。
「インテリジェンスソード?」
「そう、それッス‼昔で‘魂を見透かす魔王’が持っていたって話ッスね。王国とか帝国とか教国で有名かは知らないッスけど。いやー、本当に存在するんスね、喋る剣。」
「あー、うん、まぁ、うん、聞いたことないからね、うん。」
「え?剣太さん、それは・・・・」
「なんでもないよ、うん。ね?紺さん?」
「え?あ、え?はい?」
いやー、いいもの見た、と嬉しそうに頷く彼女に自慢したそうな紺さんを抑えつつ、苦笑いでごまかす。まだ情報を手札から出すのは早すぎるし。
一応、嘘ではない。インテリジェンスソードのことなんて王国で見た資料にはないし、【役職】の能力である人間側の知識にもそんな話は見当たらない。
そもそも、この刀が喋ることができる、あ、いや、当時はまだ念話だけど、できるのを知っているのは平塚才人さんのクラスメイトと戦友のフェン・リィルさんに茶枳さん、それから妹分のコルド・ティタ・・・・・
「?どしたッスか、急に呆けた顔になって?」
「あ、いや、なんでもないよ?」
待って。そうなると、その話を拡げるとしたら王女であるコルド・ティターニアさんだけだよね?
え?門番だから組織の下の方かと思っていたけど、もしかしてこの人、あ、いや、妖精、わりと凄い立場なんじゃないの!?
「・・・・・・何故その事をご存知なのですか?私ですら彼と出会うまでは知らなかったことですのに。」
僕が疑問に思っていたことをサラッと尋ねる紺さん。
いや流石に答えてくれないでしょ、一応機密みたいなものだし。
「あれ?有名なことじゃないんスか?陛下の兄上のような存在の方がいかに凄いのかを前に聞いたときに教えてくれたんスけど?妖狐族でも知っているはずだって言ってたッスし。
ところでさっきの時にいた小柄な幼女はいないんスか?置いてきぼりは駄目ッスよ?」
当たり前のように答えるんかい!?
思わずツッコミの声がでかかったが、変に話をこれ以上混乱させたくないのでグッと堪える。
『ほー。なるほど。まぁ、その辺は追々聞くし、君の気になる美少女については後にして、近付いてきている妖精さん達は君の部下かな?』
「ん?あぁ、そうッス。おーい、みんな、こっちッス‼」
4名ほどの軽武装した妖精に恋妖精さんは手を振って呼び掛ける。
その3名は駆け足で寄ってきて、そしてまず最初に彼女を全員が1回叩いた。
「上官に向かって何するッスか!?」
頭を押さえて抗議する彼女に、ショートカット、ストレートロング、ツインドリルの3妖精が答える。
「頭回さず喋る大隊長が余計なことを話していないわけがないから、その罰が私のぶんですよ」
「同じく大隊長のことだから、考えるのが面倒になって部下に丸投げしたことへの反発としてのが私のぶんです。」
「2人のノリにあわせました‼」
「ソルとスタールドの意見には全くもって反論できないッスけど、ルナティカのはおかしいじゃないッスか!?」
「「ぶっちゃけ私達も勢いです‼」」
「ふざけんなッス‼」
恋妖精さんは怒ったッス‼プンプンッス‼と腕を上げ下げして怒りの感情を向けるが、3妖精はケラケラ笑うだけであった。
なんだ、この妖精達の関係。




