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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
第2章 妖精郷の脳筋(?)妖精
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錬金術師、また迷う


狐の里から出発して3日経過した頃。

僕と紺さんは目的地のある場所に到着した。


「この森は確か・・・・あぁ、妖精郷へ行くんですね。」


そう。僕が次に行くと定めていたのは平塚才人さんの契約妖精であり妹分である妖精女王コルド・ティターニアさんのところであった。


妖精郷。

それは今いる‘迷宮樹海’と呼ばれるダンジョンとされている森の奥にある妖精達が住まうこの世でありながらこの世に存在しない場所である。某グルメ漫画風に言えば裏チャンネルとか裏の世界とかいったところかな?

妖精達はそこで生まれ成長し、自由気ままにこちらの世界とを行き来し、人にイタズラをしたり逆に助けたり楽しそうにしていたらしい。


妖精達は魔力が高く、その上季節を操ると言われるほどの力を持っていたが、それらは全て可愛いイタズラにしか使われていなかった。

しかし、天使教の偉い立場にいた人間にイタズラをしたことを理由に敵対種族扱いされ、その高い魔力を奪おうと人間は動き出してしまった。

結果的に人間に捕まって魔力を搾り取られて殺された者や愛玩動物としてなぶられた者、ひどい話だと人間に食われた者もいたらしい。彼らもまたそのイタズラに注いでいた情熱を復讐に注ぎ、気温を操って食物を枯らすなどして不作を引き起こして大ダメージを与えたり、人間の村に怪異を招き入れて大暴れさせたりと種族間戦争を始めたのであった。

これが500年前に大決戦となる戦争の引き金となったのである。

ちなみに天使教では人外と戦うことは聖戦としか言っていないため、なぜ戦争になったのか一般的には知られていないし、情報操作がされているらしい。僕がこれを知っているのは、あの‘奈落’での1週間修行で教えられたからである。


「それでここからどうやって目的地に行くんですか?」

『そだねーちょっと待っててね、こっちゃん・・・・・ふむふむ。さい君に残るほっそい契約の証を辿るに妖精郷に通じる大樹があるのはここから東の方みたいだね。そっちからコーちゃんの気配があるね。』

「えっ?まだコルドさんと契約できてるんですか?」


500年以上も前な上、平塚才人さんはすでに故人なのに契約の証があることに驚いてしまった。

妖精はその莫大な魔力を友となった人と契約という形で貸し出すことができる。対価として契約者は妖精への攻撃を一切できなくなるというおまけ付きだ。最も、暴行と認識するのは妖精なので、例えばじゃれあいの小突き合いなどはできる妖精もいれば許さない妖精もいるという感じでもある。


コルド・ティターニアさんと平塚才人さんとの間は前から言っているように兄妹のような感じであった。

今でこそ妖精族の女王だが、平塚才人さんと出会った頃の彼女は自分の能力で霜焼けや凍傷をするのが当たり前なほどポンコツで落ちこぼれな【氷妖精】だった。両親は人間と戦って死んだため、孤児であり、落ちこぼれぶりからただ一人の幼馴染みを除いた同族からも蔑まれていた彼女に平塚才人さん達は出会い、彼女を連れて旅にで、そして見聞と修行し、誰かから愛されることを知り、再び戻った妖精郷にて唯一味方だった幼馴染みに会いに行くと女だと思っていた相手は市井に潜っていた王子様であり、ずっと待っていたとかいう少女漫画真っ青なことが起こったわけである。

で、彼に嫁いで王族となったはいいものの、待っていたことからの解放から気が緩んだのかその王子様は病に倒れ、コルド・ティターニアさんは臨時に妖精郷のトップ代理として動いたが、地球の政治を先代勇者達から修行の過程で学んでいた結果、その腕前に皆が感服し、臣従することとなって実質的に女王になってしまったという、なろう小説顔負けな成り上がりまでしてしまっているのである。


そんなわけで家族ともいうべき契約関係だった2人だけど、500年前の決戦で平塚才人さんは瀕死の中、彼女との契約を終えたはずなのである。


『いや、それが面白いことがあってね?普通は契約が途切れたら痕跡も残らないんだけど、魔力が高い同士の妖精女王と魔王の契約の影響か、もうびっくりするぐらい魔力の残滓があって、それこそ位置を辿れるぐらいにこびりついているんだよ。』

「なんというか、お祖父様、すごかったんですね。」

『そりゃ、私達化け物スペックなうえ個性的なクラスメイトを束ねるまで成長できるほど元のスペックはあったからね。それに加えて鍛練を欠かさず常に上を目指していたわけだし、並みの人間ではないさ、さい君は。

アンチ恋愛主義者が恋愛脳になったときはめちゃくちゃ迷惑だったみたいだけどね。』


誉めたのが照れ臭かったのか、白鬼院小梅さんはそう悪態付く。

が、まぁ、ダイジェストで見ていたこちらとしてはその大変さを知っているのでなんとも言えなかった。

何せ今までアンチだったものを得てしまった自己矛盾に頭を抱えて、ろくに食事も会話もできなくなっていたレベルだったのだから。


『ま、その点、けー君はあれだね。恋を自覚したら猪突猛進で突き進んでいるから、楽と言えば楽かな?

強いて言えばもう少し寛容になっていいんじゃないかな?男の夢なハーレムだよ?』

「や、ハーレムって羨ましいと思ってもなるべきものじゃないと思いますよ。

そりゃ、園田や龍造寺みたいにお互いのことが大好きで前田に狂信していればいいかもしれないですけど、女同士の争いって怖いものですよ?

小学生の頃に学校の人気者の幼馴染だって理由で女子がその子を苛めるなんてことありましたから。僕がちょうど転校するから、ヘイト稼いで矛先を逸らさなかったらヤバかったかもしれませんね。」


あの若い、というか幼稚だった頃を思い出す。

引っ越して解決したと思ったら、あの虫すら殺さなさそうなほど温厚な父さんが見たこともない鬼のような形相で「自己犠牲で解決するとは何事か‼」と説教してきたときはパニックに陥って、しかも喝をいれると何故か竹刀でしごかれて、気付いたら身体中ボロボロにされ、隣で母さんに正座で父さんが説教されていたなぁ・・・・・

あれ以来、僕は自己犠牲で物事を解決しないようにしていた結果、前田達と対立してから仲良くなり、球磨川とも最初は衝突したけど今みたいな感じの付き合いになったんだよなぁ、懐かしい。


「なるほど。『すくーるかーすと』とかいうやつですね?」

「や、ちょっと違うかな?というかなんでそんな言葉知ってるんですか、紺さん。」

「榛名様が来たときに「私達の世界の話だよ、読んでみなよ」と仰られてマンガを数冊ほど読みましたので。」

「その漫画がどこから来ているかは心当たりがあるよ・・・・自重しろ、吸血鬼夫婦。」


目的地の方角に歩きながら、紺さんに地球の知識を与えた元凶である異能による廃品回収が趣味な吸血鬼公国にいるであろう先代勇者さん達にツッコミをいれる。

というか技術発展高いことや、巨大企業アンブレラ社とか、異世界の文化破壊してませんかね、これ?


そんな感じで歩いていたところで、紺さんがあることに気付いた。


「気のせいでしょうか?先程もここを通った記憶が・・・・・」

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