錬金術師、ついでにお使いを頼まれる
かくして、そういうわけで義手の完成と共に紺さんと共に行くことが決まってしまった。
本当はリハビリもしなくてはいけないから、一緒に出発する場合、あと数週間はずらさなくてはいけないけど、残り5ヵ月弱以内に見聞しつつ力をつけてから、王国へと戻り、高町なずなさんやクラスメイトとかを最低限助けなくてはいけないわけで、そうなると移動手段が徒歩か馬車が主な世界だからこそ、はやく移動しなくてはいけない。
一応、車を作れなくはない。
けど、操縦方法はわかっていても、マリ○カートさえろくに操作できない僕が操作できる実力があるとは思わない。
自動操縦とかも、元の世界でさえ実験段階なのに、何があるかわからないこの世界ではとてもじゃないが、怖くてできるわけがない。
自転車も道路があってないような世界だから動きにくいし、そもそも他の旅人だっているんだから、変に目だちたくない。
というわけで、結局馬がない以上歩くしかないので、早く出る必要がでてきて、で、それに紺さんが合わせてきたのである。
もちろんリハビリについては話したけど、彼女いわく「リハビリがわかる人と一緒にいた方が効率的では?」とのことでこちらはそれを飲むしかなかった。
なお、紺さん同行を飲んでから吸血鬼公国の方で普通に地球水準の医療技術が発達しているから、そっちでリハビリもさせられると知ってものすごく頭を抱えてしまった。本当に情報は大切。
あと、セレア・バラライカ・山田さん、いや結婚したらしいから、姓がかわったセレア・バラライカ・安弘さん達、やりすぎでしょ。頭痛くなるよ。
吸血鬼公国といえば、今回、来賓として来ていた人物がまだ義手を作っているときに、紺さんと一緒に呼び出してきたんだった。
来賓として来ていた男性、アンブレラ社社長アベル・バラライカ・ヤスヒロさんは紺さんの幼馴染で、兄のような人なのだそうだ。
「悪いな、初対面なのに変に呼び出して。なに、なんか責めるわけじゃねーから楽にしてくれ。」
通された和室に胡座を崩して座っているアジン・バラライカ・ヤスヒロさんに言われ、僕と両腕が未だにない紺さんは座る。
サラシを巻き、右肩を露出させる形で浴衣のような薄い着物を纏い、まるでどこかの組の人かと思うような衣装である。
ただ、金髪灼眼で王子様風北欧系のイケメンだからものすごく違和感しかない。間違いなくセレア・バラライカ・安弘さんの血だ。
「私だけではなく剣太さんまで呼ぶだなんて何事ですか、アベル兄さん?
もし私が彼について行くことを反対するのであれば両腕なくとも倒しますよ?」
「おぉ、こわっ。なにがおそろしいって、両腕なくてもマジで俺を倒せるんだよなぁ、紺は。じゃ、命を助けてもらうためにも手短に頼もうか。
これから旅する中で姉貴見かけたら縄でも鎖でもなんでもいいから取っ捕まえてくれねぇか?」
ケタケタと可笑しそうに笑ったあと、苦笑に表情を変え頼まれた。
というか、姉を捕縛してほしいとか、いったい何事!?
「ルセリア姉様に何かあったんですか?」
紺さんはそのお姉さんを知っているらしく、彼に尋ねた。
というか名前を聞くとどうも幼馴染みの例の腐女子吸血鬼の方みたいだ。
アベル・バラライカ・ヤスヒロさんは大きく溜め息をついてから、
「お袋と大喧嘩したあげく、お袋秘蔵のワイン、それも俺ら吸血鬼が好む人血から作られるブラッディワインを持って家出したんだよ・・・・・・」
「えぇ・・・・・しばらく会っていない間に何があったんですか、ルセリア姉様とオバ様に。」
「やー、身内の恥ともいえるんだけど、姉貴が30年前に『宗教立ち上げればお酒が献上されやすい‼』とか世迷言をほざいてな。
で、新興宗教なんざテロリストと大差ない、ろくなもんじゃない、って主張するお袋と大喧嘩ってわけだ。
結果、かれこれ30年音信不通の行方不明になっちまったってわけだ。」
呆れたように言うアベル・バラライカ・ヤスヒロさん。
というか30年音信不通なのに、ただの家出扱いとか改めて寿命の無い種族なだけあると感じた。
というか、腐女子疑惑に加えて酔いどれキャラ疑惑まで浮上とかキャラが濃すぎる。
「それで取っ捕まえたらどうすればいいのでしょうか?」
「カッカッカ。そんなに畏まらなくていいぜ、2代目魂を見透かす魔王君。
とりあえず姉貴を捕縛なりなんなりしたら、できれば吸血鬼公国に引きずってでも連れてきてくれ。ただ、あれだろ?王国による用事があるらしいし、そこ寄ってからで構わねーよ。」
快活に笑いながらさりげなくとんでもない言葉をぶつけられる。
なんなんですかねぇ、2代目魂を見透かす魔王って!?
「アベル兄さん、その話はまだ内密のことです。」
「んあ?何が内密だよ、紺。お前の婿になるんだから、それ相応の格をつけようってことを悪ノリした狐達の中で真っ先にそれを提案したくせに。」
「本人には内密に進めて、外堀を埋める計画だったのですけど、アベル兄さん?」
「カッカッカ。その程度の策じゃ外堀は埋まらないっての。
女なら既成事実でも作って本丸まで攻めた方がいいぜ?・・・・・あー、処女で喪女だからそんな度胸ねーか。」
「言いましたね、アベル兄さん?いいでしょう。私がヘタレでない証拠をお見せしますよ。
ほら、剣太さん、脱いでください。」
「いや、ちょっと待って‼色々と待って‼」
ちょっと煽られただけで、この場で脱がそうとしてくる紺さんを抑えてから、
「なんかもう格をつけるとか、お願いですから人じゃない存在扱いだけは勘弁してください。」
正座し、両手を付き、頭を垂れる古より伝わる誠心誠意を伝える体勢、‘土下座’で懇願する。この際ダサい感じとかは放り捨てる。
何がなんでも人間(笑)とかそういう扱いだけは勘弁して欲しい。そこは球磨川の担当箇所だ。ちなみに前田の奴は屑(偽)担当である。あの2人との関係を考えれば、まぁ、ね?
僕?4人からは「良心(※善人ではない)」と言われている。なんか色々と解せない。
「カッカッカ。嫌味なまで謙虚な奴だな。てか、あれか。実力は理解してるが認めたくないっていう人間としちゃ面倒臭いパターンのか。
だったら、まぁ、人生の先輩からの助言だ。別に人間だろうが人間(笑)だろうが、死ぬときは死ぬし、生きてるときは生きてるもんだ。だから、ちゃんと認めて力を振るえるように行動できるようにした方がいいぜ?」
真面目に返されたので、僕も顔を上げて真剣に聞く。
大変不本意ではあるけど、もう人間やめてるのを少しずつでも認めないといけないか・・・・・・
「まぁ、力があるってのは恵まれたことだぜ?
力がなければ守ることもできないなんてことどころか、守ることを選ぶこともできないぜ?」
カッカッカッ、と陽気に笑い諭してくれる姿は何となく兄貴と呼びたくなる感じだった。見た目、王子様系なのに。
かくして、僕の旅の目的に吸血鬼公国からのお使いが加わったのであった。
ちなみに、そのルセリアさんがどんな姿かわかるように写真を貰ったわけだけど、例に漏れず金髪灼眼ポニテのムチムチバイーンなTHE北欧人的な超絶美女のルックスと、それに物凄く相容れないコスプレ臭しかない巫女服を着た人だった。ほんと、なんなんだろうね、セレア・バラライカ・安弘さんの血は。
おかしい。この話で出立して1章終了予定だったのに・・・・・




