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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
第1章 隠れ里の孫娘
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錬金術師、告白される


それからの話をしよう。


両腕を切り落とされた紺さんは前言通り降参し、そのまま出血多量で気絶。

慌てて駆け寄ってきた茶枳さんの手にあった‘魂魄用無’をかっさらい、【神医】畑神威さんの力を借りて傷口の治療を行い、腕の接着を試みたが、ひどく切られ過ぎたせいで治せそうになかったため、感染症を起こさないようにしつつ、切断面を塞ぐ処置をした。

それから紺さんの部屋に運び込み、半日ほど寝てからつい先程意識を取り戻したのであった。

そして今、どういうわけか僕は彼女に呼ばれ、正座をして彼女の前に座っていた。



「えっと、紺さん・・・・・?」


目の前にいる紺さんはとても嬉しそうな、そして慈愛に満ちた笑みを浮かべてこちらを見ている。


「あー、その、両腕、あー、うん、その・・・」

「あぁ、気にしないでください。私の覚悟の結果ですから。

ただ、そうですね。確かにちょっとないのは不便なので義手とか作ってもらえますか?」


ちょっとレベルではなさそうな不便さなんだけどなぁ、普通は。


「え、あ、はい。あ、ちょっと待って。」


確か収納空間に・・・・・・あったあった。

いつぞやの野球大会で作ったグローブという名の手甲。某閃乱なおっぱいくのいちゲーのキャラが装備しているようなアレである。


「む。少し大きいですね。」

「ごめん、手持ちにあるのは今はこれだけなんだ。」


そもそもこれも義手じゃないから、手直ししないといけないし。

そう言おうとしたところで、彼女の顔を見るとさっきまでと違う好奇心からくるワクワクとしたような笑みを浮かべていた。


「剣太さん。これを装備できるような小さめな義手を作れますか?」

「え?できるけど。むしろ紺さんの両腕を元にした生体義肢ぐらいまで作れるけど?」


僕の時と違い、紺さんの両腕は喰われたわけでも毒に侵されたわけでもなく、ただ神経や血管の接続ができないってだけだからその腕を再利用できないわけではない。

この方法はもちろんもとの世界にはない技術、つまり僕が作り出したものだ。いや、まぁ、似たようなのはあるけども、ちぎれた腕そのものを義肢にしてしまうようなのはない。


「できますか。それで、その生体義肢とはなんでしょうか?」

「えっと、簡単に言えば、紺さんの腕をもとに義手にするってものですね。理論上、義肢にすると起きやすい幻痛とかが起きませんし、義肢と違って今までとなんのかわりなく動かせますよ。」

「・・・・・・なるほど。貴方の左腕はそれだったんですね?」


鋭い推理である。

実際、ちょっと僕のは違う。僕の細胞を培養して、それを機械と組み合わせて作った、SFにありがちな生体金属とかそういう系ので作ったものだ。

機械だから【錬金術師】の力で変幻自在、魔導の力で換装も可能。それでいてほぼ僕の肉体として繋がっているから拒絶反応やらそういったのは起こらない。

その代わり、下手に外すと焼けただれている傷口が痛いし、神経接続やらなんやらをまたやり直すのが手間なのである。


「まぁ、だいたいそんなものだよ。えっと、それじゃあ作りたいから戻るけど、いいかな?」


作業のため帰ろうと思ったけど、そういえばまだ紺さんに呼ばれた理由を聞いていなかったことを思い出したから、遠慮がちに尋ねると、


「あぁ、義手を作っていただくことで忘れてましたね。

では、改めまして・・・・」


真剣な表情になった彼女を見てこちらも何を言われるのか緊張する。


「剣太さん。私をお嫁さんにしてください。」

「・・・・・・ふぇ?」


おかしい。なんか今幻聴が聞こえた気がするぞ?


「えっ、な、なんだって?」

「ですから、私を貴方の妻にしてほしいんですよ、剣太さん」


まっすぐと真顔で彼女はこちらを見てくる。

そして僕の方は処理落ちした。


「・・・・・・・・うえぇぇぇぇ!?」

「な、なんですか、急に奇声をあげて!?」

「いや、ちょっと待って、聞き違いだよね!?そんな、あんなに僕のこと嫌ってた感じだったのにプロポーズしてくるはずがないよね!?」

「ところがどっこい、これが現実ですよ、剣太さん。

私はあなたに恋をしました。それこそあなたの子を孕みたいと思うぐらいに。」

「アイェェェェ!?ラブ=フラグ!?ラブ=フラグナンデ!?」


思わず某言語がでてしまうぐらい動揺してしまった。

いや、するでしょ!?今まで僕に嫌悪感を示していた子が子ども産みたいレベルの求婚してきたら動揺するに決まっている。

何が、いや、いつだ、フラグが建ったのは?


『いやー、鈍すぎでしょ、けー君。』


錯乱していると腰に下げていた刀から白鬼院小梅さんが呆れたような声をかけてきた。


「白鬼院小梅さん!?」

『はい、私のことは小梅ちゃんと呼ぶ。』

「えっ!?あの白鬼『小梅ちゃん、だよ?』・・・小梅ちゃんどういうことですか?」

『やれやれ、けー君は鈍感だねぇ。乙女心がわかっちゃいない。

いいかい?こーちゃんはけー君に倒されたから惚れた。それは君が強いオスだって本能で理解してしまったからだよ。違うかな、こーちゃん?』

「まったくもってその通りです。

剣太さんに片腕を切り落とされたとき、私は貴方が高町なずなさんについて語っていたときのようなキラキラとした視線を欲しいと思いました。

そこからどんどんと考えていくほど、私は貴方に惚れている、それこそ子を産みたいと思うほどに恋をしました。」


少し照れたように彼女は真顔のまま頬をわずかに染めてくねくねと動く。

ただ、僕は安堵と呆れの息を吐けた。

要するに彼女は図らずとも起こった死闘による吊橋効果と瀕死による種の保存欲求の本能が起き、結果としてそれを恋だと勘違いしているだけなのだ。


『と、自己評価の低さと警戒心が高いけー君のことだし考えるだろうけど、残念ながら違うんだよなぁ』

「ぶふっ!?ちょっ!?なんで僕が吊橋効果とか考えてたのわかるんですか!?」

『や、たぶん、君の内面を理解できてる人ならわかると思うよ?

おもいっきり安堵してたしさ。勘違いかぁ、と考えていることぐらい読めるよ?』


白鬼院小梅さんに見透かされ、戸惑う。

というか勘違いじゃないとかそんなこと言われても、僕にも譲れない想いがあるのである。

だから、ここで彼女を受け入れるわけにはいかないのである。


「私は、私を見て欲しいと思い、そして貴方のその歪な警戒心を和らげることができる存在になりたいと思いました。

だから吊橋効果や種の保存を優先する本能でもないですよ。」


くねくねとしていたのをやめ、キリッとした真面目な表情で真剣に伝えてくる紺さん。

あ、ヤバい。最近気づかされた歪な警戒心すら受け入れて和らげようとするとか、なんか軽く惹かれる。

え、なに、僕、チョロインの素質でもあるの?

しかし、こちらとしても折れるわけにはいかないのだ。


「と、とりあえず、その、あれだよ。あれ。

高町なずなさんとのケリをつけてから改めて考えさせてください。」

『うわぁー、自分を心底から惚れてくれた可愛い子をキープしとくとか清々しい下衆だわぁ。』

「うぐぅ・・・・・」


ケタケタと笑いながら白鬼院小梅さんに正論でからかわれる。

凄く反論したいけど、正論だから本当に言い返せない。


「私は構いませんよ?

その高町なずなさんと再会するまで一緒に旅をするわけですし、その間に好感度をあげる、あわよくば骨抜きにすればいいだけのことですから。」


そう言った紺さんの目は捕食者の目をしていた。

てか、えっ!?一緒に行くことになんかなってる!?

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