錬金術師、決意する
お久しぶりです
開幕と同時に、紺さんは、当たった相手を衰弱させる呪いの魔力球“冥狐の術”、鎌鼬を生じさせる真空の魔力球“狡狐の術”、さらに“狐火”と【紅狐】の力で作られた土塊を放ってきた。
相変わらず見事な腕前で、シューティングゲーの弾幕のような鮮やかさは惚れ惚れとさせられる。
けど、こっちもやられるわけにはいかない。
実力を見せろ、と言われたため、白鬼院小梅さん達がいる刀“魂魄用無”を茶枳さんの手元に預けている以上、ここ数日で作り上げ剣と、仕込み左手を使わなくてはならない。
「『左腕換装・モードシールド』!!」
空間収納からヒラメのような平たい片手剣を取り出しつつ、義手に仕込んだ術式を発動させる。
すると、義手の左手を魔導陣が覆い、そして手が完全に小型の盾に変貌した。
それらを使い、弾幕を全て防ぎ斬り、生じた破片の流れ弾から身を守った。
『なんということでしょう!!
左手が突然変わり、どこからともなく平たい刀のようなものを取り出したかと思うと、あの紺様の初見殺しとして名高い弾幕を斬り、守り、無傷で乗り切りましたぁ!?』
『これは全部が剣太君の力ではないでしょうね。
恐らくですが、あの変わった形をした片手剣は防ぎ“斬る”ことができ、それで姫様の弾幕を無傷で乗りきったんでしょうね。』
相変わらず茶枳さん、鋭い。
この平べったい刀、“防鮃”は刃がないので斬ることはできない。
しかし、攻撃、特に紺さんが使うような魔力球などを防ぎ弾き流し“斬る”ということができるのである。
要は対紺さん使用術式剣というわけだ。
「面倒ですね。完全に私対策といったところですか。」
「まぁね。これで認めてくれて、折れてくれるとありがたいんだけど?」
「はっ。笑わせてくれますね。
その程度の欠陥策ごとき、どうということはないですね。」
紺さんは鼻で笑い、こちらを嘲ると、先程の攻撃を先程の倍以上の量で放ってきた。
くぅ、わかっていらっしゃる。
先程同様捌くが、明らかに対応が間に合わなくてケガを負い始める。
そう。この防御戦法の弱点は、処理速度は人間である僕に依存するため、数が増えると処理が追い付かないという単純なことである。
「先ほど敗けを認めろとおっしゃいましたけど、まさか目も使わずに私に勝てるとたかをくくっていませんか?」
「まさか。願望を口にしただけで、なんとしてでも勝たせてもらうよ。キマシタワー建築阻止のためにも。」
「・・・・・・前から気になってましたが、キマシタワーってなんですか?」
「ふぁっ!?グホッ!!?」
相変わらず某東の方のプロジェクトみたいな弾幕を撒きつつ、真顔で問いかけてきた。
思わず一瞬固まってしまい、処理が追い付かずに小さな土塊を膝に受けてしまった。まだ膝に矢を受けたわけではないからセーフだけど。
『おおっと!!ここでついに黒金選手に一撃が入ったぁぁ!!』
『んー、今のは防げると思ったんですけど、何かあったんですかね?』
外野が何か言っているが、気にしてはいられない。
崩れた体勢を立て直し、ばら蒔かれる攻撃からなんとか身を守れた。
「ちっ。残念ですね、あと少しで殺せましたのに。」
「いや、そんな残念がられても・・・・・・とういうか、今の質問は僕に隙を作らせようとしたんですか?」
舌打ちし、悔しそうな表情を浮かべる紺さんに再び武器を構えながら尋ねると、
「いえ、本当にわからないので聞きましたよ。
で、貴方が勝手に死にかけて、死ななかったので悔しいだけです。」
この暴論というか自己チューというかマイペースというか、そういう感じの物言いである。
いやまぁ、確かに戦闘中に固まった僕の落ち度なんだけどさ。尋ねておいて攻撃してきて、かつ悔しがるって、それはどうなのっていうね?
仮にも命のやり取りをしているんだし、あまり手は見せない方がいいんじゃないの?
ネタのバレた手品と喧嘩の手段ほど冷めるものはないって球磨川も言ってたし、中学の頃から。
「何かお気に召さなかったみたいですけど、私は貴方に勝たなくてはなりませんので、付け入る隙があれば付け入りますので。」
「・・・・・・そういうのって言わない方がよくない?」
「?基本的なことを言っているだけですけど?」
可愛らしく首を傾げる紺さん。
どうも彼女は相手の隙を指摘し、対応されたところで叩き潰せるほどの実力と自信があるようで、ある意味慢心に近い部分がある。
悔しいのはその慢心を隙として攻められるほど僕に力はないということだ。
そう。力はない。
あまり使いたくはないけど、まぁ、向こうも殺す気じゃないと死ぬとかいう感じのこと言ってるし、お望みを叶えるとしようか。
「魔剣・三振両腕堕」
そして、僕は収納空間からここ3日で作った最新作である魔剣を取り出した。
.
春イベが、春イベが執筆時間を削るのです・・・・
誤字脱字ありましたらご連絡ください




