錬金術師、気合を入れる
「さぁ、いよいよ今祭り最大のイベント『紺姫様嫁入り決闘 デッドオアマリッジ』が開始されます。
司会は私、白狐一族代表‘貧乏クジ’の琥白、解説は宰相‘白面蒼毛有角九尾’茶枳様、審判はご存知‘衰え知らずの老狐’銀火様でお送りしまぁす!!
なお、今大会は吸血鬼公国の最大手企業“アンブレラ社”の提供を頂いており、本来であればその社長にお言葉をいただきたいところですが、お忙しいとのことで、来賓に若様がいるということだけ紹介させていただきまぁす!!」
決闘会場である和風の国に似つかわしくない中世のコロシアムのような場所に押し寄せた観衆へ、嘉納武蔵さんの書状を渡したときにいた一番若そうだった白狐のお姉さん、琥白さんの声が届けられていた。
……うん、なんか、こう、なんで吸血鬼公国が提供にいるとか、不穏過ぎる社名とかツッコミ所は満載だけど触れないでおこう、うん。
そんなことよりも勝って、紺さんを僕のものにして、高町なずなさんにフラグを建たせないようにすることの方が大切だから。
4日間じっくり考えた結果を果たさなくては、僕の恋愛のためにも。
「それでは選手入場!!」
その声とともに目の前の入り口からスモークが勢いよく吹き出し、僕は入場した。
「さぁ、まずは挑戦者にして巻き込まれた人間(仮)の青年、黒金剣太選手!!
500年前の魔王陛下および天狐紅様の力によって一度は我らが姫様を破った実力者です!!
またこちらにあります情報によりますと、神代の魔物タウロスオーガ、カガチヒュドラを先程の天狐紅様の力なしで倒した経験もあり、肉体改造によってカガチヒュドラの目を移植し、片腕は機械仕掛けという、まさに人間(笑)という状態だそうです!!」
「ちょっと待てぇぇ!?
なんで個人情報駄々漏れなの!?いや、犯人は茶枳さんだろうけど!!
というか、(笑)とか(仮)って何!?なんで人間やめてるって言われてるの、僕!?」
「リングで何か黒金選手は言っているようですが、ここからではよく聞こえませんねぇ、茶枳様。」
「そうですねぇ。まぁ、どうせ『もっとかっこよく』とかじゃないですか?男の子ですし。
そんな神代の魔物2体も葬った自分が人間やめてる自覚ないわけじゃないでしょうし。ねぇ、剣太君?」
うわ、大人汚い。
明らかに聞こえてるのにスルーするどころか、発言を捏造された。
あと神代の魔物2体葬りましたけど、人間やめたつもりはないですから、ないですから!!
観客席からは、
「負けろぉ!!」
「いや、むしろ勝って姫様をもらってあげてぇ!!」
「人間じゃない人間なら姫様も文句ないはずだしぃ!!」
「姫様が欲しければこの俺をうわ何をするやめぐぼはぁっ!?」
と大歓声を受ける。
というか、なんか最後の人の発言のあと、ボコスカと場外乱闘が発生したみたいだけど、大丈夫なのかな?
「続きまして、我らが妖狐族が誇る最強のチャンピオンである姫様。平つ、あ、痛いです、茶枳様!!痛いですって!!わかりましたから!!ごほん。紺様の入場です!!」
向かいの入り口から同じようにスモークが吹き出し、いつもの巫女服と軍服を掛け合わせたような衣装を纏った紺さんが歩いてきた。
「さぁ、皆様もご存知だとは思いますが、改めてご紹介いたしましょう!!
妖狐族最大の恩人‘魂を見透かす魔王’平塚才人様と天狐紅様のご息女にして、現妖狐族族長である天狐紫様と、茶枳様の一人息子の蒼介様の忘れ形見である、生まれながらにして【天狐】であったのが我らが姫様、紺様です!!
その強さへのストイックさは有名であり、幼馴染みにあたる銀火様曰く『花より団子より鍛練』というほどの鍛練中毒者。
それゆえに悲しいかな、120年生きてきて、処女なうえ、喪女…ひっ!!ちょっと紺様!!狐火を実況席に撃ってこないでくださいよ!!茶枳様の張った結界なかったらひ弱な私なんか簡単に死んじゃいますって!!
……ごほん。殺意をのせた眼差しで睨まれましたので先に進めますねー。」
あの実況、超面白おかしく適当に話してない?
僕のときもだけど、なんであんなに煽るんですかねぇ……
紺さんのやる気というか殺る気がさらに高まってるじゃないですか、ヤダー。
「ではでは改めましてルール説明をいたします!!
まずは勝敗。
これはどちらかが降参、あるいは気絶して10カウント以内に復帰しなかった場合、もしくは最悪死亡することで決着がつきます!!
つまりこちらからは余程のことがない限り介入はいたしません。
余程のこととは死体蹴りぐらいですかね?まぁ、その辺は審判の銀火様の采配ですのであしからず。
次に戦闘に関して。
原則的に何をしても構いません。武器を使おうが、魔法魔術を使おうがそれは自由です。
ただし、10カウント中に故意の攻撃を加えた場合は反則敗けとなります!!
最後に勝敗によって生じる結果です!!
黒金剣太選手が勝利した場合は姫様をめとり、共に諸国漫遊という名目で新婚旅行に旅立たれます。
逆に姫様が勝利した場合……あれ?何もないんですけどどうなってるんです、茶枳様?」
「姫様は勝つのが当たり前と仰られていましたので、何も要求はないそうなんですよ。
だから、師匠権限で勝ったら黒金君に何でも命令聞かせる券をあげることにしました。」
そぉい!?なんかすごい初耳なことを聞かされた!?
なんか僕の知らないところで、僕を好き勝手できる券が発行されたんだけど!?
というか、なんか紺さんも唖然としてるんだけど、何?また当事者達の味方は誰もいないパターンなの!?
「なんでも命令を聞かせるとかエロいですよ、エロい!!
でもご安心ください、皆様。きっと喪女の姫様はヘタレますから、健全になりま…危なっ!!ちょっ、姫様!!無数の狐火を撃ち込まないでくださいよ!!茶枳様が障壁張ってなかったら事故ですよ、事故‼」
実況席に容赦なく火球を放ち、爆発を起こす来紺さん。
そして障壁によって受け流された爆発が観客を襲い、阿鼻叫喚の地獄絵図に・・・なってない!?
なんか、観客の皆さん、わーきゃー言いながらめちゃくちゃ笑ってる!?何この狐達怖い。
「黒金さん。」
混迷極める場外をよそに、その元凶たる紺さんはしれっと平静そうにして声をかけてきた。
「前もって言っておきます。
少しでも気を抜いたら、死にますからね?私は全力をもって殺しにかかりますので。」
「・・・・・・つまり、勝ちたかったら全力で来いってこと?」
「えぇ。両腕でも落とされでもしない限り、私はあなたを殺しにかかりますので。」
「なんというか、傲慢だね。まるで僕が勝てないみたいだよ。」
「傲慢?いいえ、私が言っていることは事実ですよ。
前にも言いましたが、貴方が神代の魔物を何体倒していようと、それより上位に存在する、女神に近い存在たる【天狐】を相手取るのですから、当然ですよね?」
自信満々の紺さんの表情に改めて僕は感心し、そして、気合いを入れ直した。
絶対勝って高町なずなさんとのキマシタワーフラグをぶっ壊す!!
今まで携帯から投稿だったところをPCにかわったので、1話から少しずつ改行やらルビやら調節始めました。
誤字脱字などありましたら報告くださいまっせー




