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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
第1章 隠れ里の孫娘
55/92

錬金術師、矯正され始める。


そんなこんなで、こちらの意思を完全無視された結果、1週間後にどういうわけか紺さんと決闘し、勝ったら嫁にもらうことになってしまった。


正直、負けたい。


いや、紺さんが嫌いな訳じゃない。

むしろポニテ巨乳狐耳巫女と素晴らしいぐらい好みな容姿だし、性格も負けず嫌いで若干弄られ体質で可愛いなぁ、と思う。


ぶっちゃけ、高町なずなさんに出会ってなかったら、あるいは彼女への恋心に気付かなかったら全力で勝ちを目指しただろう。

だが、残念ながら僕の心には既に高町なずなさんという存在がいるのである。


というわけで、負けたいわけだが、手を抜くわけにはいかない。

何故なら手を抜く=死に直結するレベルで相手が強い上に殺る気満々なのである。

さらに言えば、僕の力だけでしか戦えないため、あのチート武器である妖刀‘魂魄用無’が使用不可なのである。つらい。


「黒金様、よろしいでしょうか?」


どうにか死なないよう負けられるいい手段がないか考えていると、襖の向こうから茶枳さんが声をかけてきた。


「あ、はい、なんですか?」


返答すると部屋に入ってきた茶枳さんはこちらに正座して向き、


「1つお話が、というよりも提案があります。」


「提案ですか?」


はて?もしかして決闘をうやむやにできる方法とか?

茶枳さんは、ふぅ、と一息ついてから、


「私が師となって鍛練を行いませんか?」


「絶対にNO!!」


「即否定ですか!?」


茶枳さん、驚愕である。

いや、まぁ、申し出はありがたいけれども、こう、勝とうというモチベーションがないからなぁ、こっちは。


「今のままですと確実に負けますよ?刀を使えないわけですし。

……もしかしてですが、負けるおつもりですか?」


「え?あ、いや、まぁ、はい、そうなりますかね?」


あっさりと答えると茶枳さんは


「ぐぬぬ……それならそれで姫様を手元に置いておけますけど、流石に姫様のチャンスを潰したくはないですし、何よりあの男に批難されるのだけは嫌なのですが。」


ぐぬぬと顔をしかめてこちらを見てくる。

そんな顔で見てきてもこちらは揺るぎません。


『あ、だっちゃん。けー君の意思は無視して訓練所なり連れてっていいよー』


「ちょっとぉ!?」


唐突に白鬼院小梅さんが僕の意思を無視していいと言ってきた。


「なんでそんなこと言うんですか、白鬼院小梅さん!!」


『いや、けー君が勝ちたくないってのはわかるけどさー。

魂を鍛えてから肉体が追い付く鍛え方も限界があるからね。基礎体力とかの問題で。

だから、だっちゃんに鍛えてもらえるなら鍛えてもらった方が肉体を鍛えられないこちらとしてはありがたいんだよ。』


うぅむ……そういう理由なら仕方がないのか……また、そっちの方が面白いから、とか言われると思ってたよ。


「じゃあお願いします」


「なんだか釈然としませんけど、まぁ、いいでしょう。

では、鍛練所に行く前に呼び方、変えましょうか」


「呼び方?」


「私は今後、黒金様から黒金君にします。」


「え?あ、はい。」


なんでわざわざそんなこと宣言するんだろう?


「今、不思議に思いましたね?」


「え!?あ、はい。なんでわざわざ?」


不意に心を読まれたような問いかけをされ、マジでビビる。

茶枳さんは息を吐いてから、


「小梅さんや紅ちゃん、あとはあの男とのやりとりを見ていて気付いたんですけど、黒金君、こう、他人に興味がないタイプといいますか、他人と関わるのが嫌でしょ?」


「……はぁ?」


え、なに?どういうこと?なんで急にそんなこと言われるの、僕?


『おー、だっちゃん気付いたか。

それに気付いてるの、僕とさい君、あとひーちゃんぐらいだよ。』


白鬼院小梅さんは茶枳さんの言葉に賛同し、褒め称える。


「ちょっと待ってくださいよ。

なんで僕、そんな風に見られてるんですか!?」


他人と関わらなかったら、わざわざ平塚才人さん達と鍛練したり会話したりしないはずじゃん。


「私がこの結論に至った理由は3つですね。

1つ目。他人は常にフルネーム呼び。

2つ目。会話するときは極力敬語。

3つ目。他人をマジマジと観察している。」


僕の質問に茶枳さんは答え始める。


「1つ目から言えば、相手に心を許していないから警戒心を剥き出して名前を呼んでいる感じですかね?

2つ目は嫌味となるぐらいへりくだった態度で相手へ警戒心を向け続けているアピール。

3つ目は相手を観察することで自分に被害が起きないよう警戒しているんじゃないですかね?」


「なっ!?」


茶枳さんの推理の根拠は理解でき、そして否定できなかった。


『だっちゃん、正解。

こっちの結論は、けー君はパーソナルスペースが広い、だね。』


「パーソナルスペース?なんですか、それ?」


『ん?こっちにはそんな言葉ないのか。

簡単に説明すれば、親しい人からの抱擁と知らない人からの抱擁を考えたとき、後者には嫌悪感や警戒心を抱きやすいよね?

それは自分の中で触れられてもいいラインっていうのがあるってわけだ。

これがパーソナルスペースってやつ。

けー君はこれが広いから、他人への警戒心が強く、自分のパーソナルスペースから出ていかせようとしているんじゃないかな?』


うぅむ。

白鬼院小梅さんの茶枳さんへの解説を聞きつつ、僕は否定できないことを認識してしまった。


確かに僕は知らない人には警戒心が強い気がする。

こう他人と関わるのが嫌というか、面倒臭いというか、なんとなく距離を置いておきたい感じだ。

そういえば、今でこそ前田や球磨川と呼んでいるが、あの4人にも最初の頃はフルネームで呼んでいたなぁ。


「その顔は何か思い当たることがありましたか?」


「あー、まぁ、はい。

確かに少し前まで友人達もフルネームで呼んでたなぁ、と。」


「では、何がきっかけでフルネームから呼び方が変わりましたか?」


茶枳さんの問いに中学時代を思い出す。


んー……球磨川と会った頃はまだ前田達もフルネーム呼びだったような気がするし……あー、あのときからかな。


「ちょっと女子を浚って売春やら陵辱やらやろうとしてたギャングというかチンピラの集まりがいたので、それを僕達6人で潰したときですかね?」


「なにそれ、けー君!?

けー君の中学時代、どうしたらそんなことができるの!?」


白鬼院小梅さんがめちゃくちゃ驚愕する。

いや、まぁ、確かに普通の生活ならまず巻き込まれないし、巻き込まれようとはしないと思いますよ、うん。


ただ、‘鮮血の生徒会長’と畏れられるほど、暴力で悪を潰していた球磨川と、暇潰しで他人への悪戯を楽しむ前田がいる時点で、巻き込まれないわけがないわけで。

つまり僕も被害者なんだよ、うん。実際あの時も逃げ回ってたし。

なお、こう言うといつも4人から、

「一番ノリノリで作戦立ててたじゃねーか」

「黒金がいたから、俺達はブタ箱に行かなくて済んだわけだし。」

「逃げ回ってたってわりには突撃するとき木剣持って戦う気満々だったし。」

「というか、何人かボコってたよね?私達ほどじゃなかったけど。」

と言われる。解せぬ。


確かに小さい頃に父さんから貰った木剣を持っていったけど、こちらはもう逃げるのに精一杯で、適当に振り回してただけなんだけどなぁ……


『なんか軽く思い出している感じのとこ悪いけど、けー君。

結論から聞いて、それがどうして君の親友である子達への警戒心を解くことになったんだい?』


懐かしき中学時代を思い出していると白鬼院小梅さんが尋ねてきたので思い出した話を言う。


「まぁ、潰した後に、やりとげた感からハイになって、そのまま仕事で両親不在の前田の家に泊まって格ゲーやったり、‘ドラゴンハンタークエスト’で疫龍神アシッド討伐クエやったりして打ち解けた感じですかね。」


『おお!!懐かしいゲーム名!!

アシッド強かったよねぇ。状態異常無効がなかったらまず死ぬし、霧出されたときに運が悪いと即死級の水魔法ブレス放ってくるからねぇ。』


おや、白鬼院小梅さんもハンターだったんだ。

まぁ、当時の中高生なら誰しもがハンターと言われてたし、おかしくは……白鬼院小梅さん達が行方不明になったのって、発売されてまだ数日じゃなかったっけ?

なんで裏ボスたるアシッドを知ってるんだろう……


『いやぁ、アシッドはソロではキツかったから、みんなに協力要請したら、まだ皆D級ハンターで、『4日間欠席して特S級ハンターになってる廃人と同じだと思うな』って異口同音に言われたのが懐かしいなぁ。

そのあと、皆をアシッド討伐クエ受けれるまでパワーレベリング的なことしようと考えてたら、こっちに呼ばれたからなぁ……なんか思い出したら王国滅ぼしたくなってきた。』


ゲー廃でしたか、白鬼院小梅さん。

あと殺気を刀からださないで!!なんか妖刀っぽ…妖刀だったわ、‘魂魄用無’。


「あのぉ…話がわからなくなってるんですけど?」


あ、茶枳さん忘れてた。


「えっと、とりあえず色々と協力した結果ですかね、あいつらの呼び方が変わったのは。」


僕は笑みを浮かべて返答すると、茶枳さんは、ふむぅ…と唸ってから、


「では、こうしましょう。

黒金君と姫様が打ち解けあえるよう、これから1週間、姫様と同じように、一緒に鍛練をしていただきますか。」


「はい!?ちょっと待ってくださいよ!!それ、絶対向こうは嫌がるじゃないですか!!

というか、普通の人間である僕を【天狐】と同じ鍛練させようとか、死ねってことじゃないですか!?」


なんかとんでもない無茶ぶりを要求された!?

白鬼院小梅さんから『普通の人間はヒュドラの目は持たないし、瘴気耐性もないし、左手にいろいろと仕込んでないんだよなぁ』とか言われたけど、それぐらいは誤差である。

誤差である。重要なことなので2回主張しました。


「そもそも私、姫様の教育係でして、姫様が全力をだせる鍛練相手なんですよ。

なので、姫様の担当から外れるっていうのは難しいんですよ。鍛練所を壊しかねませんし。」


しみじみと聞き捨てならないことを呟く茶枳さん。

鍛練で鍛練する場所壊すとか1週間を待つことなく絶対僕死ぬじゃん。


「いや、流石に力のセーブできるでしょ!?100年ちょい生きているわけですし!?」


「姫様はどうも魔力操作に波がありましてね。

今まで原因はわかりませんでしたけど、あの男の言葉から考えてたら、不完全な【天狐】だからでしょうかね。

いやはや、狐火を放ったら、鍛練所爆発とか稀によくありますからねぇ。

それでどれだけ里の予算が飛んでいることやら。

最近だと、里のみんなから姫様基金とかいう救済金を渡されて泣けてくるんですよね。」


遠い目をする茶枳さんに同情を禁じ得なかった。

しかし、ポンコツ天狐なのかぁ、紺さん。

ヤバい、若干萌えて心惹かれる。

落ち着け、僕。君には高町なずなさんという心に決めた人がいるだろ!!


「……あながち脈無し、ではないみたいですかね?」


『まぁ、あれだけアピールしてもつれない態度を取り続けていたもっちーからわかると思うけど、私達のいた世界の私達の国じゃ、こっちの世界みたいに重婚は認められておらず、二股はクズ、みたいな風潮あったからねぇ。多分、けー君もその辺の折り合いがつけれてないんじゃないかな?

だいたい欧米文化とか宗教が悪いんだよねぇ。

雄なら多くの雌に種を残そうとするのは当たり前なのに、姦淫は罪とか宗教が決めるから面倒なんだよ。

大方、自分が惚れた女性が他の男に寝取られたことに嫉妬した男が戒律なりなんなり作って復讐しようとしたんじゃないの?

あー、やだやだ。毒男の醜い嫉妬が関わる宗教なんてろくなもんじゃないね。』


「いや、それは極論過ぎというか、全世界の宗教を敵に回しかねないですから、白鬼院小梅さん!!」


『宗教を敵に回すぐらいもうしてるから、今更だね。』


「ぐっ…確かに……

あ、あと脈は無いですから!!無いですからね!!イイネ?」


白鬼院小梅さんの説はちょっと面白いと思ったのは内緒だ。

あと脈が無いと主張しとかないとさらにヤバいことになりかねない。

……誰だ、今、既に手遅れって言ったの。


『どしたの、けー君?虚空を見つめて?中二病?』


「いや、なんでそうなるんですか!?ただちょっと視線がそっち向いてただけですよ。

……あ、そういえば何で僕の警戒心高いのを解そうとしたんですか、茶枳さん?」


すっかりスルーされていたが、冷静に考えれば結構唐突に僕の無意識なメンタルに踏み込まれたわけだし、それを矯正しようとしてきたわけだから、理由ぐらいは知らなくては。


「え?そりゃ、姫様と婚礼を結んだ際に他人行儀のままにさせるのはマズイかと思いまして……」


あれ!?婚礼反対派じゃないの、茶枳さん!?


「……なんですか、その表情は。

そりゃ個人的なことを言えば、あの男みたいに私の可愛い可愛い姫様を紅ちゃんのように持ってかれるのはムカつきますが、それ以上に姫様が行き遅れ過ぎで心配だったんですよ。

なので、機会があるなら私の感情ぐらい切り捨てますよ。それが為政者ってもんですよ。」


誇らしげに話す茶枳さんに少なからず僕は心動かされた。

くっ。ちょっとかっこいいじゃないですか。


「ま、そういうわけで、勝たせるためとは言いませんが、姫様自身が決めた機会をすぐに潰したくないですからね。鍛練や矯正ぐらいはさせてもらいますよ。」


「……わかりました。

よろしくお願いします。」


こうして、僕は戦う相手と共に現実世界で鍛練をすることとなったのである。


――――――――――――


『ところでだっちゃん。

結局どうやってもっちーを落としたの?』


話が一段落つき、鍛練所に向かう道中、刀から白鬼院小梅さんが尋ねた。


「榛名様に手伝っていただいて、こう、お酒を飲ませてから、グッと。

あとは快楽攻めからの暴走誘発で安全日という危険日でフィニッシュですよ。」


そう言いながら茶枳さんは握り拳の親指を人差し指と中指の間から出す。

うん、やめましょうよ、女性がそんなモザイクかかるようなハンドサインするの。生々しい会話も。

美人で巨乳な方が明け透けにいうと頭に色々よぎるじゃないですか、思春期的に。


『ほほぅ。流石エロスの伝道師。実戦経験ないのに頼られていただけの事はあるねぇ。』


「榛名様は『かれこれ何万回と悲恋になったのを見てるから、幸せにしてあげないと私の良心が耐えられない』とおっしゃってましたね。いままでの私、よく頑張りましたよ。」


『なるほどねぇ。正妻様を味方につけられ、既成事実をつくられたら、流石の狂人メンタル仙人も陥落するのかぁ。』


「……何企んでるんですか、白鬼院小梅さん?」


大変話の流れ的に不穏な気配しかないんですけど。


『やだなぁ、けー君。僕が企んでも動けないからどうしようもないじゃないか。

で、だっちゃん。けー君にこっちゃんを認めさせるには襲わせればいいんじゃない?』


「わかってますよ、その辺は抜かりありません。手管の取り方は教えてますから。

だからこそ、勝っていただけたらスムーズに事は済みそうなんですよ。

孫娘たる姫様をそう動かすと思うと、心境は複雑ですが。」


「アウトォォォォ!!!!」


思いっきり言いやがりましたよ、この刀の人!!

というか、茶枳さんもそんなこと企んでたんですか!?


「少なくとも本人の前で言わないで貰えませんかねぇ!?」


「………ふむふむ。わかりましたよ、黒金君。

では、密かに動かせていただきますよ。」


「バレバレの時点で密かも何もないんじゃないんですかねぇ……絶対に思惑なんかに屈しない!!」


『数日後、「思惑には勝てなかったんだよぉ(ビクンビクン」とアへ顔ダブルピースするけー君の姿が!!』


「ないですから!!しませんから!!

変なこと言わないでもらえますかねぇ、白鬼院小梅さん!!」


ニヤニヤと企む茶枳さんと絶対笑っている白鬼院小梅さんを見て、僕は頭を抱えてしまった。

マジでどうやって安全に負けよう……思惑に屈しないためにも。






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