錬金術師、チートさを把握する
結論から言おう。
僕の役職【錬金術師】
そして手に入れた異能“夢幻の創造”
2つ合わせると、ただの内政・生産チートである。
いや、マジか……剣と魔法系の異世界でそっち系なのか、僕の才能。
と、思わず呆けてしまったが、冷静になって頭の中を整頓しよう。
まずは役職【錬金術師】。
名前の通り、もとの世界で色々なファンタジー作品にある役職であり、一般的なイメージに漏れず、薬学・化学に関する知識が急に理解でき習得してしまった。
その上、異世界らしく「魔法」や「魔術」についての知識まで認識し理解できてしまった。
話は少し逸れるが、どうやらこの世界の「魔法」と「魔術」は別のものであり、
世の中にある法則、例えば『木は燃える』『火に水を掛けたら消える』と言ったもの、を強くするのが魔法。
つまり、法則に従い、法則をより強化するものだね。
一方、魔術は逆に法則に逆らうものらしく、『重力に反して空を飛ぶ』『温度に反して凍結させる』などが含まれるらしい。
これら2つをあわせて魔導と呼び、僕の役職はこれらを研究し、理解し、習得できるもののようだ。
もう少し魔導に関しては細かく別れているみたいだけど、今は関係ないので割愛。
さらにこの役職は化学から発展して鉱物に関する知識まであり、そこから派生して鍛冶技術まで理解でき、習得してしまった。
しかも、もとの世界ではまず無理な原子の書き換えで石を鉄に、最終的には黄金やダマスカス鋼などにまで変化させることができるとか、これだけでも十分チートだ。
ついでにこの世界だけでなく、もとの世界の知らなかった知識まで理解できており、もはや一般的に思い浮かべる錬金術師を超えた何かである。
この役職のチートさの説明をするなら、
もとの世界の知識によって農作物の栽培・育成の効率をあげたり、生活を豊かにできる部分で内政チートであり、
さらにはもとの世界にない魔導や物質に関する知識もあるため、もとの世界との違いが比較できるため、応用が効き、生産に関してもチート性能があるといえる。
要するに「現代知識と魔導知識で俺TUEEEEE!!」というわけだ。
ちなみに他にもこの世界の成り立ちや宗教観など意外と役立つ知識も習得してしまった。
故に織斑の役職の凄さも理解してしまったわけだ。
伝説の役職とか、反則だろ……
しかし、これ以上に異能“夢幻の創造”はチートであった。
効果を簡単に説明すれば、
『自分が想像したものを素材があれば完璧に制作できる』
というものである。
つまり、どんな物でも斬り倒す聖剣を想像すれば、想像した通りの聖剣を作れるし、魔剣も同様に制作可能。
極端なことを言えば戦闘機や戦車も想像すれば制作できるというわけだ。
まぁ、制限として『制作するものを細部まで理解し、設計する必要がある』というのがあるので、普通だったら刀とか剣ぐらいしか作れないだろう。
銃とかも無理なんじゃないかな?そこまでミリオタでもない限り、銃の構造とか知らないだろうし、普通だったら。
だが、もうお気づきだろう。
何せ僕は役職【錬金術師】の能力で、知らない知識は無い状態なのである。
つまり戦車や戦闘機、核兵器の設計図や理論の知識もあるわけで……いや、流石に核兵器は作らないよ、うん。
あれは人が使うものじゃないと思うよ。
まぁ、つまり、役職と異能が上手いこと噛み合い、結果として作れないものはない生産チートに僕はなってしまったのである。
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しかし、現実は非情である
全員が役職と異能を把握し、王国側もクラス側も誰がどうなっているのかまとめるために、自己申告することになったとき、これほどのチートだというのに、異世界の方々からの評価はかなり悪かった。
というのも、
『戦闘するために召喚したというのに、戦えない役職というのは……』
という、脳筋、あるいは戦闘好きとしか言えない理由であった。
確かに役職と異能が噛み合いすぎてヤバいと思い、「制約は多く、知っているものしか作れない」とは言ったが、それを抜きにしても、この評価はかなり低い。
挙げ句の果てには、
「ものつくりなど民草にやらせるものであり、勇者とは思えん」
なんて言われた。
いや、生産職侮り過ぎだと思うんですが……
あまりの言われように僕は呆然としたが、すぐにある視線に気付いた。
クラスメイトの一部が蔑む視線を向けてきたのだ。
もともとクラスでも、少しふくやかな体型であり、気弱でオタクであったせいなのか一部のクラスメイトからは蔑視されてはいた。
流石に曲がったことが嫌いな女帝がいるなか、堂々といじめはなかったものの下に見られていたことは否定できない。
そんな人物が戦えない能力を持っており、国から役立たずの発言をされたとなれば、そういう反応にもなるだろう。
僕はこの先、嫌な予感しかしなかった。
簡易人物説明
黒金 剣太
身長170センチ弱 体重80キロ弱のちょっとぽっちゃりな愛嬌のある青年。自称・気弱で、周りの人の顔色を伺う癖がある。
クラスの中では特に目立たない方だが、筋金入りのオタクで一部のオタク嫌いなクラスメイトからは蔑まれている。
オタ友は前田慶一と球磨川四万十。
最近はクラスの高嶺の花である、高町なずなによく話し掛けられている。