閑話 交霊術師、O☆HA☆NA☆SHIする
「やれやれ。
まさかここに入ってこれる怪異がいるとは予想外だったよ。」
ボク、白鬼院小梅は目の前の怪異族の少女に話しかける。
見た目はセミロングの白髪にブレザー、整った顔立ちでモデル体型、と美人に分類されるタイプの人間だ。
だけど、【交霊術師】の能力の1つにある魔力関知で、目の前の子が怪異であることがわかっている。
怪異とは、‘時と闇、そして恐怖を司る女神【祟神】キョーザ’が生きとし生けるものに恐怖で戒めるために産み出した存在で、俗に言えば魔物だ。
で、こいつらには普通理性はないんだけど、稀に進化して意思と知性と理性を持った、ゲ○ゲの鬼○郎にでてくる妖怪みたいな感じになる。
これが怪異族と分類される連中だ。
そういえば、怪異族の代表のあの騒霊君は元気かなぁ。
「怪異族?私はただの女子高生だにゃあ。
そういうあなたは誰かにゃ?」
おや?なんだか今、気になることを言わなかったかな?
怪異族でありながら、それを認めず、女子高生だって?
「それはこっちのセリフだね、名も知らない怪異少女ちゃん。
場合によってはこの世界の全力をもって壊してあげるよ?」
脅しつつ相手の真意を探ろうとすると、怪異少女ちゃんはビクッと反応してから目を見開き、ニタニタと笑い始めた。
……なんか、ディ○ニーのチェシャ猫っぽいなぁ、気味が悪い。
「私を壊すぅぅ?
無駄無駄無駄ぁぁ!!
私は夢を行き来し、喰らう存在なんだよ?」
「……なるほど。どう入ったかは理解したよ。」
どうやら目の前の怪異少女ちゃんは、この魂だけが動ける世界、‘夢’を肉体共々入ることができるみたいだ。
んー……夢に介入できるねぇ……あ、思い当たる怪異がいるや。
「もしかして:【獏】」
「!?」
あったりー!!チョロいもんだぜ。
「これは驚いたなぁ。
意思と知性と理性を持つ怪異は怪異族となるけど、獏とはまた見たことがない相手だねぇ。」
もっとも、怪異族になるぐらいの存在自体が少ないっていうのもあるけど。
「………なんか面倒くさい相手に捕まったにゃあ。
じゃ、尋ねるけど黒金剣太の夢の中になんで私らの母校、真宵ヶ関中学があって、しかも私に対抗できる存在がいるのかにゃあ?」
ほー………だいぶ掴めたかな、この子の正体。
「答える前に聞こうか。
君はそれを知ってどうするんだい?
言っておくけど、答え次第じゃ本気で潰させてもらうよ、怪異少女の勇者ちゃん?」
普通は人間から怪異に、そして怪異族になるなんて難しい話だが、稀にあるからありえなくはない。
それに加え、勇者が人外なんてあり得ないわけじゃない。セーちゃんとかこっち来たら【吸血姫】になってるわけだし。
「………にゃはははは。
勇者ちゃんだなんて、なんのことだかわかるないにゃあー。
私はただ、協力者の1人が正しい情報を欲していてね。
だったら私がそういうのに向いているからってわけでいるんだにゃあ。」
嘘はない、か。
だけど、まぁ、私の支配するこの世界に侵入できるほどだし、警戒するに越したことはないか。
ボクは一瞬で彼女の目の前に移動して、けー君に見せた記憶の総集編を頭に刻み込ませる。
次の瞬間、彼女は目を見開き、飛び退いてから、先程までの余裕をなくし、私を睨んできた。
おぉ、すごい。あれほどの情報過多を食らっても、気絶せず発狂せずだなんて。
「どうしたのさ、後輩ちゃん?」
「どうしたもこうしたも……あぁ!!もう!!面倒なことに巻き込まれたにゃあ!!」
頭を抱え、しゃがみこんでしまった。
「さて、これ以上の話はないかな?
それじゃあ君の協力者にもそれ、見せてあげなよ。
できるでしょ?夢を操ることに関しては夢魔たる【恋妖精】と並ぶ怪異【獏】なんだからさ。」
「………………仕方がないにゃあ……じゃあ私は退散させてもらうにゃあ。」
そう言ってボクの作った世界に抜け穴を作り出す。
んー、抜け穴作られてわかったけど、【獏】に加えて異能も夢に関わる感じかな?
あ、そうだ。
「あなた、名前は?
ボクは白鬼院小梅。親しみをこめて、小梅ちゃんと呼んでもいいよ。」
抜け穴にほぼ入っていた彼女は首をだして答えてくれた。
「私は夢浮橋現。どこからどうみても一般人でモブキャラだった少女だにゃあ。」
そう言って頭を引っ込め、穴は塞がり、彼女は去っていった。
夢浮橋現……また変わった名前だねぇ……
確かに【獏】が似合う名前だよ。
とりあえず、まぁけー君に言わないでいっか。
どうも彼女は、いや、彼女達はベビルベリー王国相手、あるいは世界相手に何か企んでいるみたいだし、別にここで何かされたわけでもないしね。




