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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
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錬金術師、鍛えられる


嘉納武蔵さんから4人が

何をしたのかを聞いて、頭を抱えてしまった。


なんというか、うん。

僕が魔族に通じてる濡れ衣で指名手配されたことも衝撃だったけど、それ以上に本当にあの4人、何してるのさ!?

中学時代ぐらい、前田に至っては出会ったときぐらいはっちゃけてるじゃん!!更正したんじゃなかったの!?


「…あれ?指名手配されたんですよね?

ということは僕が生きてるって知られてるんですか?」


「死体が確認されていないことに加え、魔族と通じている者が簡単に死ぬだろうか、という疑念より、一応指名手配したようです、王国は。

ちなみに、王国は昨日1日であまりにも問題が起こりすぎたため、大変だったようです。いい気味ですね。」


嘉納武蔵さんが律儀に教えてくれた。

しっかし、なんでこんなに内部事情に詳しいんだろ?

………ん?


「昨日?」


「はい。黒金様が記憶を見ておられるうちに1日は経過いたしました。」


「まぁあの日からの数年分の記憶だからね。

むしろ1日で情報詰めれるんだから、すごいでしょ」


嘉納武蔵さんの横で胸を張る白鬼院小梅さん。

ちょっとかわいい。


「かわいいだなんて誉めても何もだせないよ。

とりあえず、そんなわけだからさ。今、のこのこと帰るってことは、ギロチンに首を突っ込みにいく自殺願望の持ち主ってことだよ。」


「マジですか……」


なんか1日のうちに立ち位置がヤバいことになってしまっていた。

まぁ、荷物の多くは工房にいれてあるし、支給された生活用品は、まぁなくても問題ないけど、だからといって王国というこの世界での拠点を捨てるのはなかなか勇気がいる。


「そんな君を私達が特訓させようってわけなんだよ。

これでもみんな、野宿や解体、その他諸々綺麗事から裏方まで経験豊富だからね。

拠点を捨てて、旅をするからにはそういう技能を学ぶのは悪くないでしょ?」


「まぁ、確かに……旅か………」


拠点を捨てるってことはつまり旅するなりしないといけないわけだもんな……なんか異世界転移ものの定番『国追放からの旅開始』みたいな感じじゃん。

そう思うと、なかなか燃える部分があるのは否定できない。

そう、男はみんな冒険者!!


「おぉ!!意外とノリノリだね、けー君。

さて、じゃあ体が使えるようになる残り2日間、学び、体も戦えるように鍛えようか。」


「えっ…?」




かくして、僕は異世界の、しかも魂の世界にて勉学と鍛練を行うこととなった。


――――――――――――


「というわけで、ベビルベリー王国一帯を3日連続で季節雨が襲った場合、翌日から2週間は大気が安定して、快晴になります」


【祈祷師】米原さやかさんからこの世界における天候の見方などを学び、



「『(のろ)い』は『(まじな)い』に通じるから、治療などもこの術式とこの術式を組み合わせれば、既存の回復魔法より効果があがるわけだ」


【呪術師】香坂恭介(コウサカ キョウスケ)さんから術の裏技を学び、



「どんな人にも必ず相がでる。それを見極めるのは占いをかじってないと難しいわけだが、今なら格安1000万でコツを…いでっ!!」


「バカくれ!!変なこと言っとらんと、ちゃんと教えたらんかい!!」


【占星術師】葉隠家康(ハガクレ イエヤス)さんと【ひよこ鑑定士】葵比奈(アオイ ヒナ)さんの漫才講義を受け、



「自殺の場合、首にこういう痕がつかないわけ。

つまり殺害されたと見るのが妥当なのよ」


【探偵】霧家響さんからは検死の仕方と、そこから考える道筋を教わった。



他にも、生活の知恵や僕の知識にはない魔法魔術の組み合わせによる裏技など様々なことを座学として学んだのであった。

はっきり言ってこの辺はまったく問題なかった。



――――――――――――



問題は運動の方だった。


「動きはわるくないんだが……」


「まるで呪われたように武術の才能がないな。」


「みんなが使う武器のどれにも適性がないうえ、素手もどこかぎこちないって…」


「やっぱデブいのが原因か、こりゃ」


平塚才人さん、日村刀士郎さん、苗桐誠一さん、和田門司(ワダ モンジ)さんが口々に言い、他にも戦いの鍛練を教える人達も頷く。


そう。何を隠そう、僕は運動音痴、略して運痴なのだ。

体育の授業=拷問というぐらいに運動は苦手だ。

とはいえ、中学はそれなりに体を動かせないとヤバい不良の溜まり場だったので、前田や球磨川に習って、回避と逃げ足だけは学んでいるんだけどね……しばらく平和だったから完全に鈍っていてなかなか酷いことになってる。


「ぜぇ……ぜぇ……これ…ひゅー…鍛える意味…ふー…あるんですか?」


一通り色々やらされた結果、呼吸すらままならない状態で僕は尋ねた。

忘れられているかもだけど、今、僕は魂だけなわけで、鍛えたところで肉体が鍛えられるわけじゃ――


「ないわけじゃないんだな、これが。」


ブルマにダボダホ長袖体操着を着た白鬼院小梅さんが、もう慣れたけどいつのまにかいた。


「魂と肉体は密接な関係だからねぇ。

肉体を鍛えれば魂も強靭になるし、魂を鍛えれば肉体がそれに適応しようと変化するんだよ。

『健全な魂は健全なる精神と健全なる肉体に宿る』ってやつだね。」


くるくると回りながらそう言う。

なるほど。無駄じゃないのか、そういうわけなら。


「しっかし、けー君はなかなか酷いね。


これじゃ、刀を媒介に私達の役職能力を使えるか怪しいところだよ。

というか、よくこんな体力と筋力で悪名高い不良中学・曲月(まがつき)中を生き延びたもんだね。」


「ま、まぁ、頼りになる人達が4人いましたからね。

それに今の曲月はいろいろあって汚名返上して、まともな学校にしましたよ。」


と、母校について答えつつ、僕は白鬼院小梅さんの言葉に、苦笑いしかできない。


前の所有者だった平塚才人さんの記憶を見て知ったことだけど、白鬼院小梅さんが作ったこの世界が封じられた刀『魂魄用無』は、刀身を触媒とした魔法術式として、封印されている魂の役職を一時的に使用できるようになるのだ。

‘魂を見透かす魔王’が圧倒的な強さを誇っていたタネはまさにこの術式のおかげなのだ。

まぁ、異能は使えないし、役職の本人よりは劣ってしまう欠点はあるが。

それでも反則級な強さには違いない。


「もしかして鍛えられている理由ってそれなんですか?」


「まぁ、主にはそうだね。

さい君の記憶見てわかってるとは思うけど、本来1人に1つしか魂が宿れない器たる肉体に、この刀の術式は無理やり干渉する影響で、体力を大幅に奪うからね。

ちなみに、たまに役職を2つ以上持つ人たちがいるけど、その辺は鍛えられているとか人間じゃないってことだからね。


で、はっきり言って、今1回行使しただけで、数秒使えるどころか起動と同時に倒れるぐらいに基礎体力が足りないね、けー君は。」


そこまで体力奪うんんですか、その術式の副作用……

やっぱり1つの体に1つの魂しか入れられないから、他の人の役職使うのはきついんだなぁ。


…………あれ?いや、待って。もしかしてこうしたら……


「ふぁっ!?けー君、君は頭おかしいんじゃないの!?

そんなこと普通の人間じゃ思い付かないし、思い付いてもやれないし、やらないよ!?」


白鬼院小梅さんは僕の考えた仮説と方法を知って、呆れと驚愕の表情を浮かべ、そう言ってきた。

それに僕は苦笑で返しつつ、僕を鍛えてくださっている先輩方に思い付いた方法を話してみた結果、


「た、確かに理論は間違ってはないとは思うけど……」


「よくまぁ、そんなことしようと思うな。

下手したら死ぬし、失敗すればただじゃ済まないぜ?」


「うーん……いけるのかな、それは。」


とやっぱり渋い顔をされて同意は得られなかった。


まぁ、この発想、普通は思い付かないし、できないから仕方がない。

でも、僕だからこそ、これは絶対できるのだ。

これさえできればもうこの辛い運動地獄から逃れられ――


「まぁ、その手段を使うにしても、旅に体力は必要だから、剣とか武術を学ぶ時間を使って、今まで以上に基礎体力だけ鍛えようか、けー君。

やったね、けー君。体力と筋力が増えるよ。」


「おい、やめろ」


魔王(とそのクラスメイトの皆さんの鍛練)からは逃げられなかった。





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