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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
28/92

錬金術師、過去を見せられる その壹


高町なずなさんのお兄さんについての色々は、横に置いて、先程の話の気になることを尋ねる。


「勇者として喚ばれた皆さんの中から、十魔王が産まれたのはどうしてなんですか?」


さっきの話からすれば、そもそも魔王も魔族もでっちあげなわけで、つまり何か産まれる原因があるはずだ。

小説や漫画なんかにある、絶望したり、国から追われたりした勇者が魔王化するとか、そんな感じの理由が。

霧家響さんはその問いに頷き、


「いい質問だわ。それに関してはある記憶から抽出した、あの日の光景を見てもらうのがいいわ。

そのために今から過去を追体験してもらうわね。」


そう言われると同時に、僕の視界はさっきまでいた教室のものではなくなっていた。


――――――――――――


気付くと目の前にはどこかの制服を纏った人達がいた。

この学生服は確か真宵ヶ関中のはず……

つまり、これはさっき言われたみたいに、これは過去の世界なのかな?

そう思いながら体を動かそうとしたけど、動かない……

もしかして、記憶を追体験しているって言われたから、見ているだけで動けない、つまり映画を見ているような感じなのか?

そんなことを思っていると何やら演説が始まった。


『女神様が魔族や邪神によって殺され、神々に変わって大天使ミカエル様達が今は世界の規律を守っておられる。そして、ミカエル様は勇者様方に祝福を授ける、と天啓を授けてくださったのだ。』


王冠を被った男性 ――恐らく当時の国王 ――が大聖堂のような、大きい教会みたいなところの一番奥のところから声をだしている。

この場所は確かベビルベリーで見かけた記憶があるぞ……確か名前は……うーん………なんか有名なところだったはずなんだけど………んー………?


『怪しいもんだな、拉致られて半年ちょいでそういうことされるとか』


周りに聞こえないぐらいの声でそう言ったのは、今の視点主のようだ。

それにしても、今の視点に映っている人達の中には白鬼院小梅さんは見当たらないし、他にも2、3人いない気がする。

…………あれ?あのツインテールの女子高生と何かこっそり喋っている男性、どこかで見たことがあるような………


『勇者様方!!まもなく大天使ミカエル様が降臨なさる。

無礼の無いよう、よろしく申し上げる。』


国王の横にいた司祭服の男性がそう告げた時、突然、爆発音がした。

周りは何事かと騒がしくなり、爆発音の発生源を視点主が見ると、先程のツインテールの女子高生が杖を構えており、先程の男子生徒もまた何か術を唱え始めている。


『何してるの山村さん!?』


『急に爆発させるとか今やることじゃないし!!』


『何をやっているか!!』


『いくら勇者とはいえ、やっていいことと悪いことがありますぞ』


クラスメイトや国の偉そうな人達の声に山村さんと呼ばれたツインテールの女子高生は真剣な、どこか焦りがあるような声で、


『まだ気付いていないのか!!強力な催眠魔術がそこの司祭が話した途端発動したんだ。

私はそれに気付いて爆発音でみんなを叩き起こし、今、望月にレジストしてもらっているんだぞ!!』


その言葉を聞いた瞬間だった。

司祭服の男性の横にいた国王の首が飛び、周りにいた兵士や生徒の一部も吹き飛ばされたり、切り傷を負ったりし始めた。

その原因は……


『やれやれ。大人しく我々の傀儡となればよいものを、鋭い奴が邪魔をしおって。』


司祭服の男性が持っていた剣から血を滴らせながら、溜め息を吐いた。

その状況に生徒達は悲鳴をあげ、パニックが起こり始めたが、


『大天使ミカエル……!!』


山村さんと呼ばれた女子高生が一気にクラスメイト達の前に飛び出し、ミカエルと呼ばれた男に立ち塞がって杖を構えたことで、全員が怯えつつも彼女に注視する状況に変わった。


『ほう。我を見破るか。』


『こちらは、1億と10700回も同じやり取りをしているから、嫌でもわかるさ。

まぁ、これまでの1億と10824回の内の最初の124回はどうしても防ぎきれなかったがね。』


どうゆうこと?1億と10824回?

実際、視点主も他の人達もミカエルと呼ばれた司祭服の男性も首をかしげている。


『……ちょっと見てみるか』


視点主はボソリとそう言った。

見てみる?何を見るんだろう?


『……………はっ?』


ちょっとして、視点主は理解不能なような声を出す。


『つまり、そういうことなのか………マジかよ……』


何か視点主はぶつくさ言うが、一体何を見たって言うんだろう……めちゃくちゃ気になるじゃんか!!


そうこうしている内に、気付けばミカエルと呼ばれた司祭服の男性と交戦を始めた山村榛名さんを、周囲は理解が追い付かずにただ怯えながら呆けて見ているだけだ。


『ふ。その程度の杖で我に挑むとは浅はかなやつだ。』


『安心するといい。1億と10004回目から安定して貴様達反逆の使徒4人のうち2人とはやりあえている。この初心者用杖で。』


『またわけのわからんことを……我らを愚弄するか、小娘?

そもそも反逆の使徒などとくだらん呼び方を……』


『自分達が仕えていた女神を封じ、神に成り代わろうとしているから間違いではないはずだが?』


その言葉に周囲の人々はざわめきたつ。

特に王様の遺骸を守るようにしている兵士や腰を抜かしてへたりこんでいる貴族っぽい偉そうな人達の動揺具合は半端じゃなかった。


『……そこまで知っているのなら、消さねばなるまいな。』


6枚の羽を広げ、司祭服の男は飛び上がり、右手を構える。


『ど、ど、どういうことで――』


『知らなくても良いことだ。

知ったところでここにいる人間は死に、勇者達は我らの傀儡として魂を熟成してもらうだけだ。』


恐らく教会関係の貴族っぽい人の首を魔導でかき消しながら、その天使は告げる。


『だが、邪魔な者には消えてもらうとしよう、小娘。』


『合理的な判断だ。

だが、私も何回も何回も戦っているうちに、一時期は絶望のあまり正気を失って、50000回ほど、チート能力を持ったクラスメイト達を殺めきったほど、私は戦闘を経験しているからな。

簡単に倒せると思わないことだ、ミカエル。

私を倒したければ、今ならガブリエルやラファエル、ウリエルを呼ぶことをオススメする。』


『身の程を知らぬ人間だな。腑抜けた女神どもを放逐した我ら全員でないと相手にならないとはよく言ったものだ。』


『腑抜けさせていても女神を封印することしかできない程度の実力で私に勝てるつもりか?』


『ッ――!!いいだろう。貴様を神敵と見なす。』


そう言うと同時に男の天使は雷と光線を放ち、それを山村榛名さんは浮遊魔術を駆使して回避しつつ、別の魔導でそれらを打ち消し、弾き、防いでいた。

気付けば屋根が吹き飛び、2人は空で交戦していた。

あまりの超展開に下にいる人達は呆けていたが、さっき山村榛名さんと話していた男性が手を叩いて注目を集める。


『さて。みんな、僕を見てくれるかな?

榛名ちゃんが時間を稼いでいるうちに、これから君達にこの世界の正しい情報を伝えるよ。』


そのねっとりとしたような癖のある声を聞いて、僕はどこかで見た、という記憶を思い出した。

僕が‘奈落’で出会ったあの太公望だ!!

つまり白鬼院小梅さん達のクラスメイトだったのか!!そりゃ確かに向こうの知識があるわけだよ。

僕が驚愕しながら混乱していても、視点主は話を進める。


『太鼓原、1つ聞きたい。

お前の役職は前までは【仙人】だったはずだ。

だが、ついさっき見た、今のお前は【大仙人】だ。

どうやって、いや、どうして変わっているんだ?』


太鼓原と呼ばれた推定太公望はどこか嬉しそうに肩をすくめながら、


『流石平塚君。1億と10824回経っても鋭いね。僕は別の時間軸の記憶があってね。つい最近、それを思い出したのさ。

最も、僕「は」前回だけしか記憶はないんだけどね。


さて、まずははっきり言っておこう。

榛名ちゃんがなにもしていなかったら、君達の内、半数は殺され、さらに半数は操られ、いつも無事なのは平塚君、高町君ぐらいらしいよ、ここにいるクラスメイトなら。あぁ、ここにいる肉体があるクラスメイトならね。

でも、今回は運がいい。

何せ僕が榛名ちゃんのサポートに回れるからね。

今までは抵抗しながら説明していたから、みんなを守れなかったらしいけど、今回は僕のおかげで集中して時間稼ぎができるんだよ。』


そうか。この視点は平塚才人さんか。

ということは、さっき僕の役職や異能を見破ったように、山村榛名さん(?)や推定太公望から何かを見たんだ!!

僕はさっきからの視点が誰のものなのかは納得しているが、周囲の人達同様、目の前の推定太公望の話はよくわからなかった。


『それじゃいくよ。

「仙術・記憶共鳴」!!』


次の瞬間、僕にも視点主である平塚才人さんの記憶に大量の情報が入ってきた。

天使教の成り立ち、天使の実態、天使の祝福に関すること、女神様達の封印されているところ……一瞬で大量に入ってきたので、僕の頭には負荷が掛かりすぎたのか、頭痛が走った。

平塚才人さんも同じ、いやそれ以上だったらしく、立ちくらみのように、その場でしゃがみこんでしまった。

周りの人達も同じように伝達されたようで、しゃがみこんだり、貧血のように倒れたりしている。


『あれ?みんな大丈夫?何かあったのかい?』


『お前の……やった…ことだろ…うが、おい……』


辛うじてしゃがみこむこともなく、肩で息をしながらツッコミをいれている男性がいた。

あれはさっきの顔写真から考えて間違いなく高町倫太郎さんだ。


『やだなぁ。僕はただ、君達に絶望の知識と希望の知恵を与えたんだよ?

あぁ、これで歴史が変わるかもしれないと思うと、僕は堪らなく興奮するよ!!

さぁ、君達の希望を、奇跡を僕に見せてくれ!!』


『こいつ……変態本性を…だしてきやがった………』


『いや……お前に…だけは言われたく………ないだろうよ……太鼓原も…………で、太鼓原……何をすれば…いい?』


立ち上がりつつ、平塚才人さんは何だかトランスモードに入っている推定太公望に問いかける。

そこに彼はこちらへ鞘に入った刀を投げ渡してきた。


『平塚君にはとりあえずこの刀を渡しておくよ。』


『?なんで俺に?』


『んー、説明したいのは山々だけど、時間がないね。』


そう言って上を見た太鼓原望月さんに合わせて見上げると、山村榛名さんがいつの間にか増えた4人の天使と戦っていた。

さっきまでとは違い、押され気味で防戦一方になっていた。





誤字脱字等ありましたらご連絡ください

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