錬金術師、真実を知る その壹
いつもより、より短めです。
白鬼院小梅さんに手を引かれ、僕は教室をでて、廊下を歩いていた。
向かっているのは視聴覚室。なんでも色々と教えることがあるそうだ。
そもそもこの学校のようなところは、白鬼院小梅さんによると、自分達の母校、すなわち真宵ヶ関中学に似せて、彼女が役職の力と異能で作った場所、というより魂の世界らしい。
白鬼院小梅さんの役職は【交霊術師】。
‘輪廻機関’というところに行く前の魂と会話したり、憑依させたりと魂や霊に関する様々なことができる霊能者らしい。
本人曰「霊能者っていうよりは魔法使い、いや魔術師かな?」とのことだが。
ちなみに輪廻機関とは輪廻転生をするために、
『生と死、そして輪廻転生を司る炎の女神【常世神】コットリオン』
が産み出した、世界の仕組みらしい。
これがあるから輪廻転生をすることができるのだとか。
僕の知識にも無いので何だが疑わしいが、白鬼院小梅さんによると、
「ほら、普通に考えて、ペットボトルがどうしたら衣類にリサイクルされるかわかるかい?
それと同じで、どういう風に輪廻転生をしているかまでは知られてないってだけじゃない?」
とのこと。
そして異能は“監獄”。
魂を輪廻機関に行かせず、何かしらの物に閉じ込めるものらしい。
実際、後で詳しく話すと言われたが、白鬼院小梅さんが殺されたときに自分で刀に魂を封印したそうだ。そう、この世界は刀の中なのだ。
本人曰く「第一犠牲者として色々伝えようと思ってね……残念ながら手遅れになっちゃったけど。」とのこと。すごく、きな臭いです
白鬼院小梅さんは殺されてからずっと刀の中で役職と異能の力を使いこなそうと鍛えた結果、某エンジェルでビーツな作品よろしく、この学校のような場所ができたらしい。
死んだ世界戦線みたいなもんだよ、と白鬼院小梅さんはどこか誇らしげだった。
そもそも‘役職’とは、その魂が持つ器の大きさが力として具現化したものだそうで、強い力があれば後天的に他の役職を得ることもできるし、鍛えれば鍛えるだけ役職の力も強く、幅広くなるのだそうだ。
‘異能’は魂の持つ余剰エネルギーが因果や法則、その他もろもろに影響を及ぼした結果のものだそうで、異世界から来た住人でもない限り魂のエネルギーに余剰はないそうだ。
こちらも役職同様、鍛えれば鍛えるだけ強く、幅広くなるそうだ。
つまり僕の力も鍛えれば何かしら新しくできるようになるかもしれないという、何ともロマン溢れる可能性があるのだ。
そうこうしている内に『視聴覚室』と書かれた部屋の前に到着し、白鬼院小梅さんは勢いよく扉を開けた。
「たのもー!!
準備できてる?」
「あ、小梅ちゃん。もう少しだけ待ってて。今、和田君がプロジェクターとパソコンの接続してるから。」
部屋の中には15人ほどの人がいた。若干女子が多い感じだけど、中心のプロジェクターをリーゼント姿の男性がいじっているなど、男性もちらほらといる。
「おし、接続完了。
白鬼院。いつでもいいぜ。」
リーゼント姿の男性が白鬼院小梅さんに声をかける。
それにしても白鬼院小梅さん、さっきから命令多いし、監守長って呼ばれてたし、もしかして皆のリーダーなのかな?
「んー。私はただこの世界で一番偉い人ってだけだよ。創造主だし。
リーダーっていうなら、せい君とかさい君じゃないかな?
そんなことよりも、けー君。
早く座って座って。
えっと、ひーちゃんが教える担当でいいのかな?」
白鬼院小梅さんは黒板の前にいる薄い紫色の長髪の女性に問いかけた。
「ええ。この中で一番私が適任でしょ?」
「そりゃね。【指導者】の懐刀だもん。
ボク達の中で君ほどあっち側を知っているのは、せい君とひーちゃんぐらいだもんね」
「なんだが棘のある言われ方ね。間違ってはいないけど。」
……ちょっと待って。
【指導者】の懐刀がいるとかどういうことなの?
「そこはこれから説明されるからさ。
さて、じゃあ始めよっか。
あの時の真実を伝える授業を。」
白鬼院小梅さんのその声は、さっきまでのおちゃらけた感じではなく、真面目で重々しい感じだった。
「あ、途中でトイレいきたくなったら、出て左側の突き当たりにあるから。」
……そうでもなかった。




