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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
21/92

錬金術師、死す

そこからの相手の動きも僕の反応も何の代わり映えのないものだった。


「「「「「「「「KISYAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」」」」」」」」


カガチヒュドラは首が届く範囲で瘴気を撒き散らしながらこちらに噛みつこうとしてきた。


「くっ。ゲイボルグ!!」


僕は僕で収納空間からゲイボルグを取り出し、投げ付ける。

投げられたゲイボルグは不思議な力で相手の向けてきた頭すべてを避け、心臓を貫いた。


「やったか!!」


思わず口に出したが、すぐに気付いた。

「やったか!?」はやれてないフラグだぁ!!


事実、心臓を貫いた瞬間、ゲイボルグは溶けた。

限界で灰のように粉になったエクスカリバーなどと違い、溶けたのである。

つまり、心臓という血の塊に触れたことで、その毒でゲイボルグが溶かされたのだ。

というか、もはや毒というより劇薬じゃん!!

硫酸とか硝酸とかそういう系の毒じゃん!!

しかも絶望的なのは、心臓を貫かれたのに、カガチヒュドラは平然としており、貫かれたところは徐々に塞がりつつあった。

反則過ぎやしませんか、その再生能力………


――――――――――――


それから、僕は襲いかかってくる頭に対して、ミョルニルで殴ったり、その他多くの作品を在庫処理のごとく使ったりして、カガチヒュドラへ攻撃をした。

が、普通の生物なら致命傷となる攻撃すらカガチヒュドラは回復し、怯むことなく襲いかかってくる。


「はぁはぁはぁ……」


そしてそんな状況に僕は肩で息をするぐらいに追い詰められていた。


はっきり言えば、かなりじり貧だ。

致命傷を与えても回復され、しかも、こちらのそれができる武器は2〜3振りすれば壊れるからどんどん使える手が減ってくる。

ついでに言えば、僕自身はたぶん許容量以上の瘴気を吸い込んでいるためか、かなり息苦しい。

手が震え、頭痛や吐き気といった高山病みたいな症状が出始めている。


そして相手の攻撃を避けきれず、かすり傷や突き飛ばされたダメージが蓄積されている。

というか平々凡々な肉体強化の魔術を使っていなかったら、突飛ばしの時点で肋骨が肺に刺さったり、内臓が破裂したりして死んでいる、間違いなく。

ちなみにこの肉体強化の魔術、一種のドーピングみたいなものなので、使用後、筋肉痛で動けなくなる。

かすり傷もかすり傷で、こちらにとっては致命傷。

猛毒を持つ牙や血が付着した相手との接触で浴びた毒は、作っていた毒消し薬で治療したものの、普通の毒ではないようなので、たぶん解毒しきれずに蓄積されており、そのうち致死量に至る危険性が高い。


とはいえ、ここまでの攻撃が全く無駄ではないことはわかっている。

8つの首それぞれと戦っているうちに、回復の時間が追い付いていない首が3つも作ることができた上、1つは完全に再生を封じることに成功した。

やり方はギリシャ神話と同じで、切り口を焼いてみた。

ただ、それをするのに1本しかないレーヴァテインが犠牲となった。

他の火属性の武器では焼き落とせず、回復されてしまったことから、レーヴァテイン級の火属性の剣でないと無理みたいだ。

そしてもはや火属性の剣も槍も尽きている。


「まずいなぁ……もう手がほとんどない……」


手元にある剣は森の探索用に作った片手剣ぐらいしか残っていない。


カガチヒュドラもそれを理解しているのか勝利を確信したような声を出しながら無事な首で攻撃してきた。


仕方がない。

使いたくなかった手を使おう。

僕は剣や刀、槍以外のものをいれている収納空間から、黒く小さいパイナップルのような某北九州の県の特産品みたいなのをとりだす。

そしてピンを抜いて投げつける。


次の瞬間、激しい閃光が生じた。


そう。僕が投げつけたのはお手製簡易スタングレネード。

といっても、刀や剣に比べて生成するために必要な材料や時間など色々なものが足りなくて、完全なものではなく、マグネシウムに爆竹とかそういうので火をつけて閃光を生じさせるレベルで、イメージ通りに作れていなかったら光量が足らなくてろくに使えなさそうな不良在庫品もどきだ。

ちなみにイメージして作ったのは、某ラーメンの上に乗ってる具材の名前を持つ忍者漫画で使われる閃光弾だ。

めちゃくちゃまぶしくて、光量の少ない森の中でも影を伸ばして縛れるぐらいな感じ。


これだけあれば光を認識しない動物でもない限り間違いなく怯ませることができるはず。

事実、神代の魔物と呼ばれるカガチヒュドラでも突然の閃光に驚いたように身を硬直させていた。

この隙に僕は『どこからでもドア』に入り、少ない材料で対策を練る準備をするつもりだった。

が、


「KISYAAAAAAAAAA!!」


やつは首2本を動かし、ドアを呼ぼうと隙だらけの僕に正確に噛みついてきた。

そして、想定外の動きを受けた僕は咄嗟に動けず、突き飛ばされると同時に左手に強烈な痛みが生じた。


「ぐああああああああ!!!!!?」


痛みで理解できた。

左腕が付け根からばっさり喰い千切られたのだ。

ついでに猛毒の唾液と瘴気も傷口に付着した結果、瞬間的に傷口は焼けただれ、体内に致死量の毒が入ってきたのは考えるまでもなかった。

幸いなのは傷口が焼けただれた結果、出血だけは免れているが、かなりまずい


「SYAAAAAAAA!!!!」


5つの首は未だに視力が回復していないようでフラフラしているが、僕を突き飛ばした2つの首は雄叫びをあげている。

くそっ。なんで何の迷いもなく動かせる首があったんだ・・・・・・


僕は僕で、痛みで気絶しそうになり、そして痛みで気を取り戻すを繰り返していた。

幸い、突き飛ばされたことで首の射程距離からは逃れられたため、追撃はないが、もはや追い詰められた状態であることは火を見るより明らかだった。

消えそうな意識を振り絞って、実験として作っていた回復ポーションを飲んで意識を失わないようにした。


この回復ポーション、ゲームとかマンガみたいに回復する、というよりは鎮痛効果を与える麻酔に近いものだ。

なんで回復ポーションという名前なのかというと、鎮痛することで「回復した」と勘違いしたのが始まりらしい。

ちなみに疲労回復ポーションという名前で体力を回復できるものはある。こちらはこちらで、あくまで体力だけで、負傷までは治らない。


とにかく、そんなこんなで回復ポーションによって痛覚を麻痺させて動けるようになり、使いたくなかった現代兵器という手段の中でも一番使いたくなかった手段を収納空間から取り出す。

取り出したのはこれまた某北九州の一般家庭からでてくる程度の大筒である。

剣や刀、槍などに比べて火薬類は素材こそ生成できても、狭い工房では爆発の危険性がやばいし、外では硫黄の臭いで何をしているのか警戒されそうだったので、1発分しか用意できなかった。

だが、某ゾンビゲーのロケランをイメージしただけあって、破壊力だけは抜群である・・・・はずだ。

試し打ちすらできる環境じゃなかったので、想像でしか威力がわからないのだ。


さっそく相手にロックオンしようとするが、本物より軽いとはいえ、片手でしか支えられないため、かなり不安定だ。

1発しかない分、外すのは致命傷だ。

僕は腰を低くし、落ち着きながら膝立ちで狙いを定める。

カガチヒュドラもこちらに違和感を覚えたのか、首を向けつつも丸くなるようにして防御態勢に入る。


そして爆音が洞窟内に響いた。


――――――――――――


「はぁ・・・はぁ・・・・」


結論から・・・・はぁはぁ・・・・言おう・・・・・・

カガチヒュドラは・・・・木端微塵に・・・吹き飛んだ・・・・・

某ゾンビゲーのボスすら・・一撃で仕留めるのをイメージしただけ・・・ぐふっ・・・・ある破壊力、というか想像以上だった・・・・

あの破壊力・・・・現実だとこんなにやばいのか・・・・・


そして僕は・・・はぁ・・・・その反動と爆発によって・・・・・おえっ・・・・・さらにまずいことになっていた・・・・・・

まず右目に・・・ふぅふぅ・・・・カガチヒュドラの最後のあがきなのか・・・・その牙が突き刺さって、失明した・・・

そして、ロケランの反動で・・・・右肩が確実に壊れた・・・・外れたとか・・ふぅ・・・・・そういうもんじゃない・・・・・たぶん骨についている腱が一部ぶち切れた・・・・・

内臓も・・やられたっぽい・・・・血がこみ上げてくる・・・・・おえっ・・・・・


・・・・まずい・・・・もう・・・・意識が・・・・・


・・・・・・・もう一度・・・もう一度高町なずなさんに会いたかったな・・・・・前田達が・・・暴走しないか・・・心配だ・・・・

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