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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
20/92

錬金術師、エンカウントする

恐る恐る慎重に奥へ進んでいくと、次第に明るくなってきた。

最初は理解できなかったが、警戒しつつ進んでいくと理解でき、そして理解できなかった。


「なんでこんなところに蝋燭とかがり火が……」


誰もいないはずの場所に人工物がある。

これを恐怖と言わずして何と言うのか?


「誰かがいた?

それとも誰かがいる?」


謎に恐れながら、僕は先へ進んで行くと、急に瘴気が濃くなってきた。




瘴気。

わかりやすく言えば、猛毒のガスだ。

この世界の魔導は己の内部にある「魔力」と呼ばれるエネルギー、そして空気中にある「魔素」と呼ばれる目に見えないエネルギーがバランスよく結び付くことで発動しているらしい。

つまり、この世界の大気中には必ず魔素が存在しているわけだ。

そして、気流が無ければ空気が澱むように、魔素もまた溜まることがある。

これを瘴気と呼び、魔導のバランスを壊すため、体調の不良を起こしたり、最悪命にかかわったりすることがあるのだ。


しかし、普通ならば生じることはほとんどなく、瘴気が発生するのはかなりヤバい状況だと言える。


つまり、“奈落”の奥、要するに今向かっているところは何かイレギュラーなことが起きており、かつかなりヤバいわけだ。


「すっごく行きたくない……」


だけど、流石にここまで来ると逆に気になる。

何故こんなところに蝋燭や松明などがあるのか?何故本来なら生じないはずの瘴気があるのか?


………なんだかこの世界に来てから、好奇心が上昇した上、歯止めが効かなくなっている気がする……

いや、あれか。いつもなら好奇心を動かすより前に前田達がアクションやトラブルを起こすから、そっちの対応に追われて、抑えられていただけかも。


とにかく今はただ、気になって仕方がない。

僕は意を決して、警戒しつつ歩いていった。


―――――――――――――



「うわぁ……………うわぁ」


岩影に隠れつつ、思わず二度見し、二回も溜め息がでてしまった。

奥に進んでいき、ついに扉のようなものが見えてきた瞬間、ゾッとして岩影に隠れたのが現在だ。

そして、チラッとゾッとした先を見たら、信じられないものを認識してしまった。


「なんで……なんで“巽”カガチヒュドラがいるんだよ!!」



“巽”カガチヒュドラ。

8つの首を持つ西洋龍の姿をしたモンスターであり、タウロスオーガ同様、神代の魔物であり、しかも特に強い4体の1体だ。

穢れと憎悪を司り、その血肉には触れたものを殺める猛毒がある。

しかも、とてつもなく再生能力が高く、斬られれば猛毒の血を撒き散らしながら傷は塞がり、首を落とされれば何事もなかったように生えてくるそうだ。

そのせいか、タウロスオーガのように討伐された伝説も伝承もない。

いや、まぁ、タウロスオーガ同様、カガチヒュドラも伝承や伝説が少ないから、もしかすると倒した人はいるかもしれないけど。

それにしたって神代の魔物を2体もこんな短期間で見るとか、死ぬんじゃないかな、僕。

確率的にたぶん宝くじ1等が当たった直後に落雷に遭うぐらいだろうし。



ごほん。まぁ、とにかくそんな不死身の存在が、怪しい扉の前でまるで門番のように立ち塞がっていた。


「マジかぁ……えぇ………」


もはや呆れるしかない。

わけがわからないよ、現状が!!


ただ1つわかったのは、この洞窟の奥で瘴気が生じている原因はカガチヒュドラだ。

穢れと憎悪を司るだけあって、かの魔物は存在するだけで空気を穢れさせる話がある。

空気を穢れさせるの意味はわからなかったけど、目の前で見てわかった。つまり、やつの吐息には大量の魔素が含まれており、それが8つの頭の数だけある。そりゃ大気中の魔素のバランスが狂って、溜まって瘴気が生じるわけだ。


「しかし、なんでまたこんなところにいるんだろう?

まるで扉を守っているみたいだ。」


カガチヒュドラの後ろにある大きな扉を見て、そんな印象を受けた。

見た感じ、扉には特に装飾品や模様などはない。ただただ扉のように岩が削られて形作られているみたいだ。

ただ、どこか清浄な空気を醸し出しているような感じで、なんだかマイナスイオンみたいなのを感じる。


そしてカガチヒュドラはその前で首だけを動かし、周りを警戒するようにしている。

その巨体は決して動かず、扉の前から動くつもりはないようだった。


「……となると、だ。

あの扉の向こう側にはかなり凄いものがあるんじゃないかな?」


そこまで考えて、また気付いてしまった。

また好奇心が湧き出てきて抑えられなくなりつつある。

気付かなかったら間違いなく今、衝動的に飛び出していた。危ねぇ……


「冷静になるんだ。

流石にあれには勝てないんだぞ、僕。

あいては斬っても斬っても死なない存在なんだぞ?」


しかし、現実とは理不尽なものだった。

自分にそう言い聞かせているとカガチヒュドラの首が1つこちらを見てきた。

そして、しばらくジッと見てきたかと思うと、その首だけでなく、他の首もまた咆哮した。


僕は察した。

あ、死んだ、と。

やめて!カガチヒュドラの力で、製作品を焼き払われたら、非戦闘要員の黒金君まで燃え尽きちゃう!

お願い、死なないで黒金君!あなたが今ここで倒れたら、高町さんや前田との約束はどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、カガチヒュドラに勝てるんだから!


次回「錬金術師、死す」。デュエルスタンバイ!


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