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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
16/92

各々、動き始める ―八卦見は覚悟を決める―


いろいろとあって、黒金君と両想いだったのに気付かなかったことを教えられ、そしてのわちゃんから愛の告白を受けて混乱している状態であった。

だけど、それが逆に効いたのか、冷静に考えることができ、私、高町なずなは黒金君の親友、球磨川君の提案に乗ろうとしたところであることに気づいてしまった。


今のままでは黒金君を助けに行けないのなら、王国を抜け出して自分だけででも行くというのはいい手段だと思う。

むしろそうしてでも私は黒金君を助けに行きたい。


でも、1つだけ、1つだけ私はやらなくてはいけないことがあった。


「球磨川君。私はここをでても構わないと思ってる。

だけど、ここで真実を知っている私達が逃げたら、黒金君は無実の罪を被ったままなんだよね?」


私の問いかけに球磨川君は苦虫を踏んだような表情を浮かべ答えてくれた。


「……まぁ、そうなるだろうな。

だが、考えてみろ。どう足掻いたって、どんな世界でも敵に回すと面倒くさい“権力”によって事実にされた以上、覆すことは難しい。

仮に覆せても、今回のようなことが簡単に起きるような場所に俺はいたくないな。いつ自分が巻き込まれるかわからないからな」


確かにそうかもしれない。

疑うこともなく、一誠君を、あるいは勇者の中の勇者を最も第一に考える清隆君の言葉を信じてしまうクラスや王国の今の環境にいるのは、とても危険だと思う。

だけど、それじゃあダメだと私は思う。


「私は、黒金君の無実の罪を放っておいたらダメだと思うの。

球磨川君が言う通り、この環境は危険だと思うよ。

だけど、放っておいたらまた誰かが黒金君みたいにされるかもしれないんだよ?」

「つまり高町は残って、この状況を覆したいのか?」


球磨川君の表情はさっきまでとうって変わって、私へ失望したような、見られるだけで恐怖を感じる視線を向けてきた。

だけど、ここで怯むわけにはいかない。


「まぁ、そうなるかな。

私は出てもいいけど、このままでいいとは思わないの。

私だけなら今すぐにでも一緒に黒金君を探しに行きたいよ。

でも、クラスのほとんどの人は何も知らずに情報操作されているだけなんだよ?

私はそれを見過ごせない。」

「甘いな、高町。

このクラスの連中はほとんど考えることもなく、織斑が言ったから、黒田が言ったから、と情報を鵜呑みするバカばかりだ。

そんな連中はどうせどこかで破綻するだけだ。むしろ関わったら自分も痛い目に遭うぞ。

お前は結局、口では何とでも言えるだけで、実際は黒金を助けるつもりはないんだろ?クラスの連中と黒金を天秤にかけているしな」


球磨川君の毒とも言える今のクラスへの意見は正しいと思う。

だけど、私のやらなくちゃいけないことはクラスのためなんかじゃなく、黒金君のためであること主張して、球磨川君に認めてもらわなくてはいけない。


「それでもさ」


私は一番の目的は―――


「私は黒金君が戻ってくるかもしれない場所を放置できない」


私の気づいてしまったこと。

それは黒金君の戻ってくる場所がないことだ。


「確かに今の王国は黒金君にとって針のむしろでしかないと思うよ。

だけど、前田君や球磨川君といった彼の親友がいるからという理由で、きっと黒金君は戻ってくるはずだよね?だって黒金君だもん。

う、自惚れれば、わ、私がいるからっていうのもあると思いたいけど……ま、まぁそれは、うん、ちょっと可能性は低いよね……

……おほん。とにかく。その2人がいなくなってしまえば、黒金君はこの世界で戻ってこれる場所が無くなってしまうわけで、私はそれを見過ごせない。

だから私が戻ってくる場所になるためにも、私は涙を飲んででも黒金君のために王国に残ろうと思ったの。」


私の考えを言うと、球磨川君は目を見開いて驚いた表情を浮かべ、黙り込んでしまった。

そして、クックック、と笑い出し始めた。


「そうか……そうか……

クックック。流石高町。盲点だったぜ、それは。

あの親友(バカ)は間違いなく戻ってくるだろうな。それがすぐか、あとになるかはわからないが、きっと戻ってくる。

そのときに俺や前田がいなかったら、ただの針のむしろ、下手したら処刑台に首突っ込むだけになるか。だから、あいつを守るために帰ってくる場所になる、とは恐れいったぜ。

いい女房になるな、こりゃ。

まったく。どんな世の中でも敵に回しちゃいけないものをこの王国は5つも敵に回しちゃっていやがるのか。

クックック。面白いことになりそうだな。」


……えっと…今、褒められたんだよね?

不安からのわちゃんの方を見る……


「ちょ、のわちゃん!?なんでそんなに泣いてるの!?」


めちゃくちゃ号泣してた。

あのクールで表情をみんなの前では変えず、だけど人一倍繊細で優しいのわちゃんが、乙女としての恥も外聞もかなぐり捨てたように、顔がとんでもない大洪水になっていた。

これ以上はのわちゃんの名誉のために明言は避けさせてもらうけど。

のわちゃんはハンカチで涙とかを拭きながら、涙声で、


「だって……だって、私のなずなが強い意思を持って辛い道を選択しようとしているのよ?

それを大きくなった、って嬉しいと思う反面、心配で心配で仕方がないのよ。

あの男達が絶対なにかしてくる危険があるのにそんな決断をするなんて。」


球磨川君がボソッと『お前は高町の母親か』って言っていたけど、触れないでおこう。

のわちゃんが言う私への好意は恋愛感情じゃなくて保護欲というか、こう、保護者的立場な感じの好感度の可能性が……

とりあえず話を戻すと、のわちゃんが言う危険が何を指しているのかはわかる。

一誠君の認識を事実にしようと、清隆君による外堀埋めのことを指していると思う。


のわちゃんによると、一誠君は私を狙っている、というか、すでに一誠君のものだと思われているらしい。

私に対して、一誠君の彼女、あるいは好意を抱いていると周囲の一部の人認識しているそうだ。

もちろん、そんな事実はない。

私は、その、まぁ、うん、黒金君が大好きだし。


だからといって、一誠君のことも嫌いじゃないよ、幼馴染みだもん。

だけど、恋愛対象かと聞かれたら、違う、と断言できる。

みんなと仲良くなれる一誠君だけど、なんとなく、何か変な感じがするんだよね……みんながみんな、一誠君を1番にして、一誠君もそれを当然のようにしている気がする。

それがどう変か、と聞かれるとわからないけど、やっぱり何か違う気がする。ただ、私としてはそれが気味が悪くて、苦手だ。

うん、わかった。私は一誠君が嫌いじゃなくて苦手なんだ、うん。


「確かにのわちゃんに言わせれば危険かもしれないよ?

でも、もし私達2人とも抜け出した場合の方が危険だと思うんだ。

まず、抑止力となるのわちゃんがいなくなって、清隆君が好きなようにクラスを動かすことになるんじゃないかな?

そうなると、夢浮橋さんや橋爪さん達が多分割りを食うことになると思うの。

私にはそれを知っていて無視することはできない。

それに私と一誠君を結ばせたいってことは、私も一緒にでたら、球磨川君やのわちゃんを魔族と通じているとして、私を誘拐した、って名目で追っ手をださせようとすると思うの。

王国も、一誠君とパーティーを組んでたから、私達は重要なポジション扱いだろうから、2人もいなくなれば、その提案に乗らざるを得ないと思う。

もともと私達は魔族の人たちと戦うために呼ばれたわけだし、戦力を失うわけにはいかない、って思うだろうし。

そうなればいつか捕まって2人の命が危ないかもしれない。

だから、私は黒金君の居場所を守るためにも、球磨川君達を守るためにも、ここに残った方がいいと思うの。」


と口では堂々と言えるが、私は恐る恐るのわちゃんの顔色をうかがった。

私大好きで、現在号泣しているのわちゃんが納得してくれるとは思わなかったからだ。

しかし、現実は違った。

のわちゃんは涙を拭いながら、少し笑みを浮かべ、


「本当に、本当にこんなに立派になって……

なずなは、私は出奔すると思ってたみたいだけど、私はあなたがいるところにずっといるつもりだったわ。

私があなたを守らなくちゃいけないと思っていたから。

でも、あなたの覚悟、そして思いを聞いて、腹をくくるわ。

私は大変不本意だけど、球磨川君の提案に乗って出奔し、なずなと別の道を行くわ。」


と私を見据えて言った。

その強い決意と、それを選ぶ苦悩を見て、私はなんだか、さっきまでの自分の不甲斐なさに泣けてきた。


思えば、こっちに来てから、知らなかった様々なことを思い知らされた。

いつも強いと思ってたのわちゃんの苦悩や弱さ。

仲がいい幼馴染みの男子2人の歪さ。

クラスメイト達の、たったちょっとの差でクラス内に明確な線引きをしてしまう、人間の心の醜さ。

そして、そこから生じている歪み。

好きになった相手、黒金君の本心。


「ダメダメだなぁ、私」

「大丈夫よ、なずな。

あなたは烏合の(クラスメイト)達に比べたら、いえ、比べるのもおこがましいぐらい立派よ。

それに、そこにもっとダメな男がいるから安心しなさい。」

「おいコラ、雪風。

それは俺のことか?それとも織斑のやつか?」

「そこ、と言っているでしょ?

まぁ、ちゃんと自覚はあるみたいね。」


私は自分のダメ具合に弱音を吐いたけど、のわちゃんと球磨川君のやりとりに思わず笑ってしまった。

2人も私につられるように笑い始めた。


――――――――――――


「じゃあ、前田達と最低限連携を取れるように話しに行くが、雪風。お前も来るか?」

「そうね。どんな手段を使うか知らないけれど、失敗だけは避けてほしいから聞かせてもらうわ。

というわけで、なずな。しばらく離れるけど、不審者を入れちゃダメよ。

具体的には織斑一誠って名前の男や黒田清隆って名前の男よ」


そう言ってのわちゃんは球磨川君と一緒に部屋を出ていった。


……のわちゃん、なんだかんだ言って、球磨川君と仲いいよね、あれ。

よく考えれば、のわちゃんが男子と皮肉や毒舌の平常運転しながら会話しているのってかなり珍しいような……

……もしかして好きなのかな?

でも、私への愛情を恋愛感情だと勘違いしちゃうような子だし……


そんなことを考えていたら、部屋の扉をノックされ、声をかけられた。


「なずな、俺だ。一誠だ。」


…のわちゃんに入れるな、って言われた幼馴染みが来てしまった。

当初予定

→なずなは優柔不断だけど一途な子

現在

→覚悟完了形女子


なずなちゃんといい、野分さんといい、キャラがどんどん変わってていくぅぅ

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