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錬金術師(アルケミスト)の世界革命  作者: 悠々自適
プロローグ いざ、異世界に
12/92

錬金術師、戦う

ちょっと時間は遡り、視点は剣太に戻ります

嫌な予感が気になり、『奈落』へ急いでいくと、先程の男が既に織斑一誠君達と接触していた。


僕は身を近くの岩影に隠して、様子を見ることにした。



しばらく何か話していたようだが、4人と一緒にいた鎧を着たおじさん、確かアークさんだったか、が急に倒れた。

遠目からだが、駆け寄ってすぐ織斑一誠君が斬りかかりに行ったところから見て、殺されたのだろう。

僕はその光景を見て、今まで麻痺して感じていなかった恐怖心が、急にわいてきた。


なぜここに来てしまったのか。

何をしたかもわからないまま、あの人みたいに殺されるんじゃないか。


そう考え始めたら、体がカタカタと恐怖で震え始めてしまった。

僕が恐怖にうち震えているうちに、織斑一誠君たち4人はあの男に攻撃をし始めていた。

しかし、全てかわされたあげく、詠唱妨害ができずに牛頭の巨人を呼び出されてしまった。


そして僕はあの魔物を見て驚愕し、より震えが激しくなった。



あの魔物は『タウロスオーガ』。別名『(うしとら)』。

神代の魔物と呼ばれる12体の中でも、特別強い4体の1体だからだ。

神代の魔物というのは神話にでてくる魔物で、なんでも世界の穢れが人間への試練として変化したものらしい。

が、天使教の神話では伝承すらほとんどなく、もちろん今の世界では存在はもちろん、痕跡すら確認されていないため、創作や非現実だと思われている魔物だ。



だからこそ、僕は驚いたのだ。

実在しないはずの存在が目の前にいるからだ。

言うなれば、目の前にネッシーやビッグフッド、チュパカブラがでてきているようなものだ。


タウロスオーガは暴力や破壊の化身と言われる存在であり、まともに戦うのは命知らずと言われている。

つまり、あのローブ姿の男は織斑一誠君達を殺すつもりであの魔物を呼び出したのだろう。


今、この場であの魔物のことを知っているのはおそらく僕と召喚者であるあの男だけだろう。

でも、知識があるだけ僕が出ていったところで、あの魔物について話す前に、殺されるのは目に見えているし、足を引っ張るだろう。


まぁ、曲がりなりにも織斑一誠君は勇者の中の勇者なんだから、大丈夫なはずだ。



――――――――――――



そう思っていた時期もありました。


気付けば4人は追い詰められていた。


まだ、かろうじて雪風野分さんと黒田清隆君の立ち回りで持ちこたえているが、何か1つでバランスが崩れ――


『うおおおおおおお!!!!』


織斑一誠君が連携やタイミングを無視した突撃したが、案の定、タウロスオーガに防がれた上、弾き飛ばされた。

しかも、運悪く壁に激突したことで悪い方向にバランスが崩れた。


というか、織斑一誠君。なんで突撃したの!?

今、1人でも戦闘能力が落ちたらやばいってわかってないの!?


戦場において、地雷が使われるのは、負傷兵を産み出して、そっちへ対処させることで、倍以上の兵力を落とすからだよ。

今、1人でも負傷者がでてそっちに回復を回したら攻撃によって抑えられていたバランスが崩れるに決まっているじゃんか!!



案の定、雪風野分さんは現在の危機がどれほどなのかわかっているようで、忌々しそうにいつも通り織斑一誠君を罵り、そして、高町なずなさんはそんな彼を回復を施しに行こうとしていた。

しかし、一瞬のスキから動きに自由ができ始めたタウロスオーガの斧が彼女に降り下ろされんとしていた。


その瞬間、僕は頭が真っ白になり、気付けば自主封印した収納空間から聖剣を1振り取り出していた。




『聖剣・エクスカリバー』


もとの世界で最も有名な聖剣を模して作ったものだ。

もっとも、この作り出したエクスカリバーの元ネタは原型より某セイバーのアレだけど。




僕はそれを握り、岩影から飛び出していた。

そして高町なずなさんの元に降り下ろさんとしていた腕に向かって剣を振った。


「エクスカリバァァァァァァァァ!!」


次の瞬間、光のビームが剣先から発射され、タウロスオーガの腕を切り落とした。


思わぬ破壊力を持った一撃だったようで、タウロスオーガは斬られたことをすぐ認識できなかったようだが、痛みが襲ってきたのか、攻撃を認識し、痛みと恐怖と怒りの混ざりあった咆哮をした。

普通ならばビビってしまうほどの咆哮だったが、『某セイバーのアレとかをイメージして作ったかいあった。』という満足感と現実と頭が追い付いていない結果、逆に冷静になってしまった。


斬れないものはなく、射程無制限のレーザー斬撃を放てるイメージで作ったのが、この聖剣・エクスカリバーもどきなのである。


「BMOOOOOO!!!?」


そして、地の底から響くような低く、恐ろしい声は僕を正気に戻し、そして大問題に気付かされてしまった。


思わず作った聖剣(チート)を取り出して、衆人環視の中で使っちゃったよ!?



「黒金……?」

「黒金君、なんでここに!?」


当然のように、織斑一誠君はこちらを見て呆然としているし、

高町なずなさんは驚愕していた。

少し離れたところにいる雪風野分さんと黒田清隆君もこちらを驚いたように見ている。

激しくやっちまった感が僕の頭の中を駆け巡る。


「いやいや!!これは驚いた!!懐かしいなぁ、エクスカリバーって名前!!

まさかこんなところで出会うとは予想外だよ。

しかも、原型じゃなくてあっちの方がモデルっぽい感じのとか、超凄いよ!!」


しかも、最後の目撃者の1人であるローブ姿の男性は手を叩きながら爆笑していた。

しかし、今の発言からして、やっぱりあの人、僕たちの世界を知っているみたいだ。


「あなたは、一体何者なんですか?」


僕は声を震わせながらもエクスカリバーを構えて最も聞きたいことを尋ねた。

相手は笑うのをやめ、顎に手をあてながら真面目な顔で悩んでいるような苦渋の表情で答える。


「一体何者、か。哲学的だねぇ。

まぁ、言ってしまえば過去の亡霊かな、僕は。

いや、英霊の方がいいかな?君のそのエクスカリバーのセンスを見る限り。」


「………500年前、こっちに召喚された現代人、ですか?」


相手の話す内容、そして森で見かけた時から、ひっかかる言動を思い出していくと、ふと思いついた仮定をぶつけてみた。


ただ、普通に考えたらそんなことはあり得ない。

あっちの世界で500年前といえばだいたい戦国時代の始まりの辺だ。

そんな人物がまず生きているはずがない。

そして、エクスカリバーのことも、ましてやこのエクスカリバーの元ネタも500年前の人が知っているはずがない。


だが、もし前提条件が違うなら――

この世界とあっちの世界の時間の流れが違うとしたら――



僕の仮定の一言に彼は苦渋の表情を緩め、再び笑い始めた。

不気味に、しかしどこか嬉しそうに。


「それを知りたかったら、こいつを倒してみなよ。

そしたら教えてあげなくもないよ、エクスカリバーの使い手君」


気付けばタウロスオーガは一切の動きを止めていた。

まるで彫刻のように苦悶の表情を浮かべたまま、吠えることすらなく、一切の動きを停止していた。

一体どうやってそんなことができるのか、僕の知識にも載っていないのでわからない。


「僕が召喚者だからね。

今、話を妨害されたくないから、完全停止させただけだよ。

さて、エクスカリバーの使い手君。君のそれがどれほど耐えられるか、試させてもらうよ。追加試験者としてね」


彼がそう言ってから、指を鳴らすと、彫刻のように固まっていたタウロスオーガが再び動き始めた。



しかし、どれほど耐えられるか、ってどういうことだろう?


そう疑問に思ったが、握っていたエクスカリバーを見て気付いた。

たった1回レーザー斬撃を放っただけなのに、既に何合か打ち合ったかのように刃先が少し欠けていたのだ。

破損しないようにイメージして作った聖剣がだ。


「気付いたようだね、エクスカリバーの使い手君。

君のエクスカリバーはとても強い。

間違いなく、切れ味や攻撃力だけなら、この世界で最強の一振りだろうね。

が、この世界にはエクスカリバーに関する伝承も伝聞もない。

その結果、異世界の神格を持つ武器武具は世界の修正力とでもいうべき力で壊れ、そして、それらは修復すらされない運命にあるんだよ。

もっとも神格があるから、簡単には壊れないんだけどね。だいたい2回ぐらい物を切れたらいいほうじゃないかな?」


ローブ姿の男は近くの岩に座りながら、丁寧に、そして何故か詳しく知らなかった知識を教えてくれた。

しかし、まさか僕の生産チート能力にそんな穴があったとは……

ということは製作した聖剣魔剣、その他諸々の伝説の武器武具は使い捨てに近くなるのか……


それに知識チートも世界一般で知られていることしかわからない、ってことが今の一件でわかった。

便利な反面、ちゃんと情報の取捨選択をしないと危ないな。



「黒金。先ほどの攻撃、放てるな?」


あの男と話しているうちに近くに来ていた黒田清隆君がいつものように上から目線で尋ねてくる。

というか、レーザー斬撃が使える前提とか、危なくないかな、考えが。使えるけど。


「撃てるとは思うけど、2回できるかどうかだと思うよ。」


「そうか。では足のどちらかを斬れ。

やつの動きを完全に封じろ。」


「え、いや、僕、戦闘訓練してないから戦えないんだけど!?」


「知らん。貴様にはそれができる力があるんだ。無理でも行使しろ。」


苛立ちを隠さない高圧的な態度で非戦闘員の僕に理不尽な指示を飛ばしてくる。


「清隆、俺が黒金のそれを使えば……」


「一誠。貴様はまずそのままなずなに回復してもらえ。貴様はとどめが刺せるようにしておけ。

今は俺達が時間を稼ぎ、お前が倒せるようにしてやる」


そう言って黒田清隆君はタウロスオーガの拳を己の拳とぶつけ合う。

しかし、やはり力負けしており、織斑一誠君のように飛ばされはしないものの、押されていた。


「黒金君。あなたが何故ここにいるのかは後で問い詰めるわ。

今は何としてでも奴を倒しなさい。

あの役立たずで足手まといに黒田君は手柄を渡すつもりのようだけど、そんなことになる前に倒して構わないわ。」


雪風野分さんはいつものように毒を吐きながら氷の魔術による弾丸でタウロスオーガの注意を引き付ける。

というか、後で問い詰めるとか死刑宣告にしか聞こえないんですが。


「黒金君」


織斑一誠君に回復魔法をかけつつ、高町なずなさんが僕を呼んだ。


「どうしてここにいてくれたかはわからないけど、助けてくれてありがとう。」


急に頭を下げてお礼を言われ、僕はパニックになった。

あのときはただ、頭の中が真っ白になって、無意識に動いていただけだから、お礼を言われるようなことじゃない、はずだ。


「いや、そんな!!僕はただ咄嗟に動いただけで、今でも怖くて怖くて逃げ出したいよ」


素直に心境を暴露すると、彼女は嬉しそうに、そして懐かしそうに笑いながら、


「でも、逃げ出さないところ、本当に優しいよね、黒金君。

あの時と変わらないまま、ずっと一緒で」


と言ってきた。

はて?あの時ってなんだろう?

僕が考え始めかけたところに、


「黒金。君のその剣は一体……」


織斑一誠君の問い掛けですっかり忘れていたことを思い出した。

どう説明する、このエクスカリバーについて……


「黒金!!何をしている!!早く攻撃準備をしろ!!奴の足を斬れ!!」


僕がどう言い訳しようかと考えていたら、黒田清隆君に呼び掛けられ、慌てて僕はエクスカリバーを構えて向き直り、再びレーザー斬撃を放った。


しかし、今度の攻撃をタウロスオーガは巨体とは裏腹なほど、軽快な動きで横に飛び、回避した。

そしてそのまま着地と同時に手元の岩を僕めがけて投げてきた。


咄嗟に僕は身を守るためにエクスカリバーでその岩を斬ってしまった。

結果的にこれによって僕と後ろにいた高町なずなさんと織斑一誠君も無傷だったが、エクスカリバーが粉々に砕けてしまった。


「あらららら。壊れちゃったかぁ。

でもそこまで持ちこたえるとか、かなり奇跡だねぇ。」


ローブ姿の男は、うんうん、と頷きながら、こちらを見てくる。


「ちっ。役立たずが……黒金!!使えん貴様はもう下がれ!!」


黒田清隆君は明らかに僕を蔑み、声を荒げて指示を飛ばす。

確かに僕は戦えない……けど、今さがったら高町なずなさんも、織斑一誠君も危険だ。


………仕方がない。

後からなんと言われるかわからないが、今は生き残るためにやるしかない。


僕は収納空間に手を突っ込んで再び封印していた武器を取り出す。


「魔剣・グラム!!」


取り出した大剣は人間1人分はあるであろう大きさ、いわゆる斬馬刀のようなものだが、その見た目に反して軽く、振りやすい。

魔剣グラムをイメージして作っただけあって、この剣ならば斬れないものはない。

突如僕が何もない空間から大剣を取り出したことを後ろの2人に驚かれているうちに、タウロスオーガの足元へ一気に距離を詰め、そして最凶の力を持つ魔剣を振るった。


「GUOOOOO!!」


流石に太いため、足を切り落とすことはできなかったものの、右足の腱を切られたタウロスオーガの絶叫を聞き、追撃とばかりに僕は無我夢中でグラムを振るう。


そして右足の3分の1ぐらいまで切ったところでグラムは砕け散った。

すかさず今度は聖剣デュランダルを取り出して、今度は左足を狙って切りつける。

グラムほどでないにしろ、大剣であるデュランダルだが、切れ味の高いグラムに似て、こちらは切るよりは重さによる打撃の破壊力が中心、すなわち斬るよりも、叩き壊すや叩き斬るというようになっている。


「おいおいおい!?伝説の武器のオンパレード過ぎじゃないかい!?

何なんだよ、あのぽっちゃり君!?あっちが【指導者】じゃないの!?」


ローブ姿の男が手を叩きながら爆笑し、何か言っているが、現状、気にしていられない。

痛みに苦しみ、斬られた部分を回復しようとしても最凶の魔剣・グラムの呪いにより、負傷箇所を治せないタウロスオーガは、デュランダルが砕けた瞬間、両足の肉がメリメリと音をたてながらちぎれ、遂に転んだ。


「よし、よくやった、黒金!!

一誠、出番だ。呆けている場合じゃないぞ。」


黒田清隆君の声でこちらに驚愕の目を向けていた織斑一誠君はハッとしたようにしてから、剣をとって立ち上がり、タウロスオーガの首へ刃を振った。

その1振りでタウロスオーガの首は綺麗に胴体と分かれた。


しかし、僕は知っている。

伝説通りなら、タウロスオーガは首をはねた程度では死なず、戦うことができる。

そして事実、今、首をはねられたというのに、タウロスオーガは残っている左腕を織斑一誠君に向けようとしていた。


しかし、そこで魔槍「ゲイ・ボルク」を取り出した僕は、うつ伏せになっているタウロスオーガの背中から心臓を狙って突き刺した。

タウロスオーガは心臓を潰さない限り戦い続ける魔物なのだ。


こうして、けしかけられた戦いは幕を閉じた。



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