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連奏恋歌〜愛惜のレクイエム〜  作者: 川島 晴斗
沙羅の章:双曲のパストラル
183/200

第5話

デート編が3話ほど続きます。

なぜかギャグ要素が……。

 何事もなく月日が過ぎてしまい、2月になる。

 この半ばから瀬羅がまた、今度は3ヶ月の間、魔界に帰省する事になっていた。

 帰省……なんだよね。

 響川家が帰省先じゃあないもの。


 でも永遠の別れじゃないし、魔界と行ったり来たりはこれからも続く。

 次第に向こうに居着くようになると思うけど、僕らはいつでも瀬羅を受け入れるし、出て行ってしまう覚悟も出来てる。

 ただ、縁は切れないからね。

 これからも瀬羅は、僕らの家族だ。


 と、響川家に一つイベントを迎える前に、学校で環奈に呼び出された。

 部活を2人で抜け出し、ちょっと1-1の教室まで向かう。

 適当にあいた机をくっつけて、環奈の指示で僕らは対面するように座った。


「……で、急にどうしたの?」

「これあげる」


 僕の言葉を無視して、環奈は2枚の紙切れをポケットから出して机の上に投げる。

 その紙を覗き込むと、テレビでも見たことのある、テーマパークの招待券だった。

 貧乏性の環奈にしては価値のあるものだろう。


「にゃー……これどうしたの?」

「年始に商店街でスタンプラリーあったじゃん? そんで福引やったら出たんよ、1等」

「1等!? 凄いね、何回まわしたの?」

「11回かね? 噂の11連ってやつ?」

「それはちょっと、違うような……」

「違うんか〜」


 ほうほうと首を縦に振って納得した様子の環奈。

 11連はともかく、1等のこれって、ペアの……だよね?


「これは貰えないよ……。環奈が生徒会長と一緒に行けば良いじゃん」

「前も言ったけど、会長の任期、もう終わってるから。とにかくウチら大丈夫だよ。キトリューが卒業したら2人で旅行行くし」

「……えーっ」


 既に環奈は計画があるから行かないらしい。

 実際は計画なんて建前で、僕にこのチケットを渡したいだけなのかもしれないけど……。


「なんで僕に渡すのさ……」

「だって瑞揶、絶対沙羅とデート行ってないでしょ。行け、家に篭ってんな」

「えーっ? 家だといつも沙羅と一緒にいれるよ?」

「……まったく、これだから瑞揶は」


 やれやれといった風に肩を竦める環奈。

 ええー……?


「いい? デートってのは型があんの。まず待ち合わせする、服褒める、そんで目的地に行って仲良くやる。んで、夜はキスする。そのあとはホテルであんな事やこんな事を……あ、ホテル使わんでも家同じか」

「最後の方はよくわからないけど、そう言われてみればデートも魅力的かも」


 今までは四六時中一緒だったからすることすら考えなかったけど、環奈の言うようなパターンに沿って、沙羅とデートするのも良いがしれない。

 沙羅はドラマが好きだし、ドラマのようなシチュエーションでデートできたら、喜んでくれるはず。


「よっしゃ、じゃあこれ貰って」

「……なら貰うけど、ほんとに良いの?」

「いいよいいよ。正直、瑞揶の財産の1/6を持ってるし、死ぬまでお金に困らんからね。あっはっはっは」

「……まぁ僕もチケット貰わなくても行けるしね」

「いやいや、デートはきっかけあってこそだよ。ただ、問題があるんよね……」

「問題?」


 僕が小首を傾げると、環奈がくるくると自分の黒髪を指に巻きながら答える。


「……服さぁ、見慣れてんじゃん? デートだから初めて見る服がいいよね」

「ふむふむ……確かにそうかも」


 見慣れた服を着てデートに行っても新鮮味に掛けるだろう。

 しかも僕らは同じ家だし、待ち合わせしてもリビングで遭遇したりしたら……うーん?


「だからさ、服は買うでしょ。そんで、沙羅はウチの家に泊まらせよ。前日だけでいいからさ」

「おぉ……。でも、そこまでしてもらうのは……」

「甘えられるときは甘えなよ。つーか親友なんだから頼れ! わかった!?」

「え……じゃ、じゃあ、その……よろしくお願いします……」

「おけー♪ んじゃ、部活戻ろ。どうせ練習しないけどね」


 半ば強制的に決められ、環奈が席を立つ。

 環奈は勝手に戻って行き、僕も机を戻してから部活に戻るのだった。




「っていう事があってね、僕とデートして欲しいんだ〜っ」

「それ帰り道で話す事?」

「にゃー!?」

「まぁいいけどね。私も、今更アンタとデートってのはおかしな感じだし、軽いノリで構わないわ」

「……ふにゃー」


 黒い空の下、2人で歩く帰り道はちょっと寂しくなってしまう。

 もっと良いムードでデートに誘えば良かったなぁ……。


「……なに変な顔してんのよ」

「むにゅーっ」


 何故かほっぺをつねられた。

 変な顔になってるからか、沙羅はフフッと笑う。


「別に、デートが嫌とは言ってないわ。楽しみね」

「うん……。2人で出掛けたのは、街以外だと温泉に行ったぐらいかな?」

「そうね……。あの頃が懐かしいわ。環奈と遭遇して、結局4人になっちゃったけど……ん?」

「……ん?」


 沙羅が立ち止まり、僕も立ち止まる。

 ……ん?


「……ねぇ。チケットくれたのは、環奈よね?」

「そうだけど……」

「…………」

「……ん?」

「……アンタ、何も気付かないのね。まぁいいや、それはそれで見せつけてやるし」

「……にゃー?」


 よくわからないけど、沙羅が不敵に笑ってて楽しそうだ。

 行くなら今週の土曜日、一緒に行こーっ♪


 僕も楽しみで思わず笑い、沙羅の手を取って、家を目指すのだった。












「もちろん、ウチらも当日券買うんだけどね」


 そんな環奈の思惑を、僕だけは分かっていなかった。

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