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連奏恋歌〜愛惜のレクイエム〜  作者: 川島 晴斗
沙羅の章:双曲のパストラル
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第4話

「ナエトくんもレリも、戻ってこないねーっ?」

「今更こっちに戻ってくるとは思えないわ。もう冬だし、帰ってこないでしょ」

「……そーだねーっ」


 秋が過ぎ去り、木々は葉を落として冷たい季節になっていた。

 家ではソファーとテーブルを片付け、こたつを出していつも3人で入っている。

 リビングにもエアコンがあるけど、それでもこたつは良いもので、手も足も入れてぬくぬくとあったまる。

 それが現状だったりする。


 今日は土曜日、みんなが家にいる日。

 そうでなくても家にいる瀬羅は最近体重が気になりだしたようで、今は体を動かしに出掛けていた。

 沙羅と2人きりだと思うと、胸が熱い……のはこたつのせいじゃないよね。


「とう〜」


 こたつの中に入って沙羅の足に抱きつく。

 こたつの中暑い……けど沙羅の足〜っ。


「ぬぁ〜っ、引っ付かないでよ。暑いっ」

「こたつの中はもっと暑いよ〜っ」

「なら出なさいよ……」


 呆れられたので出ることに。

 沙羅の隣に顔を出し、彼女の膝下に頬擦りをした。


「……なにすんのよ」

「……なにしてるんだろう?」

「頬擦りよね」

「頬擦りだね?」

「…………」

「……にゃー?」


 沙羅が体を横たえ、首から下までをこたつの中に潜り込ませた。

 目と目が合い、見つめられるとなんだか恥ずかしい。


「……瑞揶って、ほんと甘えん坊よね」

「にゃーだもんっ」

「はいはいっ……」

「逆に、沙羅は甘えてこないよね……。外だと抱きついてくるのになぁ〜……」

「……寂しい?」

「……こうして近くに居るから、全然寂しくないよ」

「……そう」

「うん……」

「…………」

「…………」


 お互いに無言になる。

 見つめ合うと恥ずかしくて、目線を逸らしてしまった。

 見慣れた顔なのに、胸が熱くなって苦しい。


 ドキドキしながら彼女の手を探す。

 こたつの中だと狭いから抱きつけないけど、せめて手を繋ぎたい。


 探っていると、何か柔らかいものに手が触れる。

 なんだろうこれ?

 ちょうど手に収まる感じでむにゅむにゅする。

 ……んー?


「……どこ触ってんのかしら?」

「えっ……」


 ビクリと顔を上げると、沙羅が顔を赤くして頬をヒクつかせていた。

 睨んでるように見える瞳は潤んでるようにも見える。

 そしてやっと、触ってるものの正体に気付いた。


「ご、ごめん……。手を探してたのに、なんか柔らかいものがあったから――」

「……瑞揶ならどこ触ってもいいけど、許可を取りなさい」

「え、あ……う、うん……?」


 手を離し、胸から腕を伝って彼女の手を見つけて握った。

 沙羅の顔は真っ赤になっていて、手も暖かかった。

 目をそらしてそっぽを向くような彼女も可愛くて、沙羅の桃色の唇にキスをする。


 もう何回としたキス、なのに飽きることなく今日も唇を重ねた。

 沙羅の方も抵抗なく僕を受け入れてくれる。


「……ポカポカだね」

「アンタのせいよ……」

「えへへっ」

「……もー」


 2人でこたつから出た。

 そして暫くの間、2人抱きつきあっていた――。







「新年明けまして!」

「おめでとうにゃー!」

『…………』


 あっという間に年明けを迎え、深夜に突如現れた愛ちゃんとポーズを取ってみんなに挨拶。

 そんな響川家のリビングには客人が2人いた。

 家族の沙羅と瀬羅を始め、今夜は瑛彦と理優が居る。

 みんなこたつに入って僕らを白い目で見ていた。


「……にゃー隊長! みんな興味なさそうですっ!」

「愛ねこさん、耐えるにゃー! 理優! 君もこっちに来るにゃー!」

「アンタ達うっさいわよ。つーかなんで愛がいるわけ?」

「新年の挨拶につかまつもうたり……あれ、言葉変かな?」

「めっちゃ変よ」


 沙羅にツッコまれて愛ちゃんは「にゃはーっ」と言いながら倒れる。

 あららら……。


「まったくよー、ズズーッ……ここは騒がしいよなー、ズズーッ」

「アンタは年越し蕎麦食いに来ただけじゃない。人ん家で年越し蕎麦食おうなんて何考えてんのよ」

「さーちゃん、お蕎麦を食べるのは良いことだよっ。あと瑞揶くん、おかわり」

「姉さんも年明けてるのに年越し蕎麦食べないでくれる?」


 瑛彦も瀬羅も沙羅にツッコミを食らう。

 でもダメージは無いようで、僕は瀬羅からお皿を受け取った。

 今日のために5kg分のお蕎麦買ってあるし、まだまだ()でるよ〜っ。

 ネギも小口切りですっ。


「まったくもう、全然年が明けた気分じゃないわ。つーか愛、アンタは他の神とかに挨拶回りしなくていいわけ?」

「大体はメールみたいなので済ませるよー? ほら、一斉送信ってやつ!」

「すごく親近感湧く発言するのやめて、ホントに。私も一斉送信派なのよ……」

「神様に親近感って、沙羅もついにねこさんの凄さがわかったようだね!」

「わからないから」


 そんな会話を耳にしながらネギをトントン切る。

 愛ちゃんも久々に会ったのに変わらないな〜っ。


「ねぇねぇ理優ちゃん。このグミ、少し食べていいかな?」

「いいですよ〜っ。どうぞっ」


 瀬羅と理優もグミを食べ合い、瑛彦は蕎麦をズルズル食べている。

 年明けの響川家も平和なのでした。

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