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連奏恋歌〜愛惜のレクイエム〜  作者: 川島 晴斗
第にゃー章:ねこさんのキャロル
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後編

「はぁー……」


 とんでもない1日の始まりを迎えるも、今日も今日とて学校に行かなくてはならない。

 私は自室に戻って着替え、今はカバンの中をチェックしていた。

 瑞揶の2頭身バージョンの笑顔を思い浮かべながら。


 早く戻らないかしら……。

 そう思っても戻ってはくれないだろう。

 でも私の好きになった瑞揶はあんなのじゃないし……。


「……はぁ」


 カバンのジッパーを閉じて肩にかけ、重たい足取りでドアを開いた。


「にゃっ!?」


 ぶにっ、ぽにっ。


 すると、ドアが何かを跳ね飛ばした。

 いや、悲鳴から何を跳ね飛ばしたのかはわかっている。

 ドアを閉めて廊下に出ると、少し離れたところで瑞揶がうつ伏せで倒れていた。

 もちろん2頭身。


「……うにゃーっ」

「瑞揶、そんな所で転がってないでよ」

「沙羅が吹き飛ばしたんでしょーっ!? 痛いにゃー! 骨折れたニャーッ!」

「はいはい。いいから行くわよ」

「うん〜っ。一緒に登校〜っ」


 そう言って起き上がると、彼はポンっと煙に包まれた。

 次の瞬間には、身長170cmぐらいの瑞揶に戻っていて、ばっちり制服も着ていた。


「登校するときは、こっちの方がいいかな……」

「あの姿じゃカバンも持てないでしょうが」

「そうじゃなくて……ほら、手を繋いで歩ける……でしょ?」

「…………」


 どうして普通の姿だと、そんな風にドキドキさせてくるのかしら。

 彼も恥ずかしかったのか、ちょっと顔が赤い。

 可愛い……それに、男らしくもあって、胸がキュンとなってしまう。


「……ねぇ、瑞揶」

「な、なに……?」

「……そのままの姿の方が素敵よ、貴方は。にゃーの姿も多少は目を瞑るけど、私が愛したいときは、貴方はその姿でいてちょうだい」

「……うん。それは、もちろんだよ」


 瑞揶ははにかんで答え、笑った。

 私もつられて笑い、駆け出して彼の手を取る。

 体制を崩す瑞揶だったけど、笑顔のままでいた。


「さっ、行くわよ!」

「うんっ」


 こうして、私たちは今日も高校に向かった。







 そして帰り。


「にゃーさんふぁいやーっ!!! しゅぼぼーっ!」


 私はいつも通りソファーでテレビを見ていたけど、後ろをむけば台所で瑞揶が火を吹いていた。

 もはやなんでもありのにゃー。

 あんな姿でも家事はこなすのだから、文句言えた義理でもないけれど。


 そして夕飯が運ばれてきた。

 私にはステーキをメインにした洋食が運ばれ、瑞揶はミニかぼちゃを丸かじりしている。

 こんな風景、他の食卓だとありえないだろう。

 しかも瑞揶、大口開けてかぼちゃかじってるのに歯型も付いてない。

 口がふごふご動いてるだけだ。


「ふむーっ、かぼちゃねこさんは硬いですにゃー」

「かぼちゃはねこさんじゃないでしょうが」

「ううん、全てはにゃーなんだよ? かぼちゃも沙羅も、にゃーなのですーっ!」

「……そう。もうどうでもいいわ」


 家帰ってからも家事やってる瑞揶がこんなに元気なのに、私は動いてないのに気疲れしそうだった。

 にゃーの奥深さ、恐るべし……。



 夕飯から少し経ってお風呂になる。


「沙羅にゃー! お背中流しますにゃー!」

「入ってくんなぁぁぁあああ!!!」

「にゃぁあああ!!?」


 お風呂場に突撃してきたり、


「沙羅にゃー、肩をお揉みしますにゃー」

「え? あぁ、うん、そう?」


 お風呂上りに、なぜか肩を揉んできたり、


「沙羅にゃー! 事件ですっ!」

「どうしたのよ?」

「にゃーがさらわれました!!」

「そう、まったくわからないわ」


 よくわからないことを言ってきたりする。

 なんだかなぁーと思いつつ、正面から見つめられると文句も言えなくなってしまう。


 これでいいのかしら――。

 でも、瑞揶が笑顔だし、何か生活が変わるでもないし、これでもいいか――。


 そんなことを思いながら、私は1人で自室のベッドで眠るのだった。

 明日は1日、普通の瑞揶ならいいなと願いながら――。







 一方、天界のとある部屋。

 自由律司神は空間モニターから瑞揶の様子を伺いながら、こう呟いた。


「これは……もはや僕のクローンでもないな。恋愛しようが、好きにしてくれ……」


 こうしてアキューはレリと聖兎への干渉を止めた。

 そしてまた他方、自由世界の次元の狭間。

 セイという黒衣の女性は困り顔で空間モニターを見ていた。


「……なんなのかしら、これ。もはやアキューの面影すらないんだけど」


 言葉を切ってため息を吐き、言葉を繋ぐ。


「もういいわ。こんなのほっといて、別の世界でアキューっぽい奴探しましょう」


 そうして彼女は踵を返し、その姿を透過させて自由世界から消え去った。



 こうして、瑞揶は気づかぬうちに2つの脅威を振り払ったことを知る由も無い。

 ただ、これから沙羅の寿命380年を、幸せに過ごせるのは間違いないようだ。


「沙羅もにゃーになろーっ?」

「なんないわよ!!」

「にゃーっ!?」





 沙羅エンド(?)

瑞揶「にゃーのおかげでハッピーエンドだよ!」

愛「にゃーって凄いね!」

沙羅「……好きにしなさい」



そしてのどかな明日へと続く。

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