第1節 1話目 飛ばされて後漢朝
お久しぶりです。浪人中なのでのろのろノロウイルスで執筆しますんでよろしくでおま。
回りがとても賑やかな、東京は某所。繁華街は一日中光と歓声に満ち溢れており、その中の主な要因の建物に、フランス料理屋の店があった。
回りよりも一際目立つ、高くて大きなその店は、威厳さえ感じられる。が、中は、様々な客がおり、庶民から金持ち、日本人から本場のフランス人まで、まさに"人種のサラダボウル"と呼ぶのに相応しい状況だ。
「ぅんまい!!このポタージュの、シンプルながらにして、非常に深い味わい!!特にコクが!」
「ありがとうございます」
勿論、質はぴか一で、その追随を許すものは、ここらではいない。その料理を作っているのは、誰が予想出来るだろうか、齢18の少年だった。
「魁くん、5番テーブルにパンケーキ追加ー!!」
「はいよーっ!!」
その店のオーナーの一人息子、新城魁。某都立高校3年生だ。大学進学もすでに決まった3月、魁は旧帝大の国内で初めに出来た大学に合格し、後の入学式までの時間はいつもヘルプで入っていた店で、フルに働いていた。
追加でオーダーされたパンケーキにも、一切妥協することなく、レモンの果汁を搾って風味を付け、ホイップクリームとチェリーで簡単にトッピング。オーダーした人が子供ということを聞いていたので、キャラクターものの顔に似せた顔をクリームで描いてやった。これは魁なりのサービス。このぐらいなら誰にも怒られない。寧ろ喜ばれてもいいはずだ。
「あ、じゃあもう俺上がります」
「え、もう6時か。お疲れ魁くん」
「お疲れ様でした、お先に失礼します」
朝5時から仕込みを初め、13時間ほど働いていたのだが、全然疲れを見せない魁。更衣室で今時の子と思えるような私服に着替えて、彼が乗ってきた、少しくたびれた自転車に乗り、自宅に帰る。10分程して家に着き、玄関の鍵を開けて、ただいま、というが、中には誰もいない。父は殆ど帰ってこないし、母は魁が12のころに父と離婚したためにいない。
父は、料理を"金儲け"としか考えていないのが目に見えて、いつも得意先の接待やらなにやらで家にいないのだ。実質、この家は魁が一人で暮らしているのだ。
「風呂入って寝るかね、明日も早いし」
台所で風呂を沸かすようにコンソールを操作し、夕食の支度をする。冷蔵庫に入れていた、作り置きのホワイトソースを、器に移した洗った野菜と軽く火を通した牛肉にかけ、チーズを被せてオーブンに入れた。買っておいた食パンを戸棚から取り出す。焼けるまでまだ時間はあるから、その間に風呂に入ってしまおう。
「ふぃー、さっぱりした。お、ちょうど焼けたな」
風呂から上がり、心身共にリフレッシュしたあと、準備していた夕食を食べるべく、リビングに向かう。焼き上がった料理が心地好い香りを演出し、食欲をそそった。
「ただのごった焼きだけどな。いただきまーす」
テレビを点け、一人淋しく食事をする魁。彼女の一人や友達でもいればいいのだが、彼女はいないし、友達は皆忙しいだろう。バターを垂らしたパンをサクサクと音を立てて食べ、自画自賛を交えながらフォークを進めた。
食事を摂り終え、食器を片付け、自分の部屋に戻る。机やテレビ、そして魁特製のソースが入った冷蔵庫などがある、特に何の変哲もない室内のベッドに横たわり、もう寝ようとしていた時だった。
外がガタガタと騒がしく、魁の眠りを妨げようと努力しているかのように絶え間無く物音が鳴り続ける。夜中にこんなことをしてくれるとは、有難迷惑であるのは言うまでもない。魁は雨戸を開け、外を確認しようとした。
「……は?朝!?つか、どこだここは!?」
度肝を抜いたのは、先程まで住宅街が並んでいた暗闇の光景が、草木が生い茂り、建物一つない明るい大自然に変貌していたことだった。しかも、部屋は二階にあるはずなのに、地面に接している。
気になって、出入り口のドアを開けた。廊下はそこにはなく、やはり草木がそこら中に生い茂っていた。
「……これは夢だ夢だ夢だ早く覚めろ早く覚めろ」
「ワラジに筵はいりませんか~?あれ、こんな所に人?」
「……」
ひたすら頬を抓っても痛いだけだ。そして、目の前にいる、筵と鞋を担いだ少女は、夢のように美しい。が、これは夢ではないようだ。
「ねえ、君。聞きたいんだけどさ」
「はい!なんでしょう?」
「ここは……どこかな?」