番外編 スイカの名前
早速の番外編ですが、ご容赦ください。
久遠とスイカの出会いから一日経った土曜の昼頃。
昨日 スイカも食べたがっていたし、正直に言って自炊するのも面倒くさい。ということで、久遠は、六畳一間のアパートを飛びだし、学食でカレーを食べようと考えていた。
「なぁ、スイカ」
学食にカレーを食べに行かないか誘おうと、スイカを呼んだ。
留学先での勉強を怠っていないスイカは、マンガ本から顔を上げた。
しかし、その顔は、何故か既に不満げである。
念願のカレーを食べに行くのだからもう少し嬉しそうにしたらどうだ、というかまだ何も言っていないのだが、久遠が不思議に思っていると、スイカが口を開いた。
「…ちょっと、もう一度呼べ」
「あ?」
「いいから、俺の名を呼べ」
スイカの発言が意図する所が分からなかったが、久遠は「…スイカ」と躊躇いがちに言った。
すると、「発音が違う」というスイカの苦情が飛んできた。
「あ?」
「発音が違う。それだと、まるで頭蓋の様に、割られた時に赤い汁と肉を見せる果実と同じだ」
「果物のスイカと同じって言えよ」気持ち悪そうに眉根を寄せる久遠。「何だよ、それ?グロいな」
「スイカは野菜だ」
「それ、今どっちでも良くね?」そう冷ややかに言った後、「何が言いたい?」と訊いた。
「発音が違うと言っているだろう」スイカは声を高くする。「俺の名前は、スイカ。『ス』にアクセントがある。モナカと一緒、エリカと同じだ」
――エリカって誰だ?
声には出さないが疑問に感じる久遠。
「まったく……」呆れる様にやれやれとかぶりを振ると、「実際に口に出す前に『次も間違っては』などの不安があっては困る。何か質問は?」とスイカは訊いた。
スイカの名前のアクセントについて、発音の不安はない。何も心配はない。
興味も無い久遠は、
「別に…」
と、答えた。
その答えは、「よく分かっているじゃないか」とスイカを満足させた。
スイカの名前について、早いうちから発音をはっきりさせておきたかったので、こんなまるで慌てているようなタイミングで番外編を書きました。私自身、繰り返していたら発音がよくわからなくなってしまいましたが、果物のスイカと区別さえつけば、それでいいです。
後書きで書けばよかったのかもしれませんが、こういう形にしました。
最後のオチは『いまさら感』があったけど、伝わったでしょうか?




