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火の女  作者: 北川瑞山
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 菅原晴行について、語るべき事は何も無い。彼は今二十七で、洋々たる未来を語る程若くもなければ、来し方の経験を披瀝する程老熟してもいなかった。かといって現在が充実感に横溢した青春のまっただ中であるとは到底思えなかった。むしろ今、二十七歳の晴行は過去のどの時点よりも空虚で、またどんなに暗澹たる未来を想像するよりも地獄的だった。いや、地獄的という程の際立った不幸さえないというのが正直な所である。ただ何も無い、この連綿と続く倦怠やら何やら、訳の分からぬ感情が犇めいているだけである。そしてそれは恐らく第三者的に見れば虚無という一言で事足りる感情だと思う。確かに本人にしてみればそれでは納得しかねる感情であろう。彼は色々と理屈を並べ立てて、その感情の正体をより正確に描写したがるであろう。けれども晴行自身がいくら懊悩してみた所で、また理屈をこねくり回した所で、それによって世の中の認識や価値観やその他の何かが変わる訳でもなく、従って読者にとっては何の関係もないものだ。実際ここまでの話の中で少しでも晴行に共感を得る者など殆どないに違いない。よしんばいたとしても、そういう者は他人の事などおおよそどうでも良いに違いない。そう言う訳で、晴行について語る事は、本当に何も無いのである。

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