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第十一話:復讐者

 我先にと出口に向かう人の波に揉まれながら、コパは両腕にユニとラヴィーをそれぞれ抱えこみ、なんとか観客席の最前列に向かおうともがいていた。

 場内には「慌てずに、会場の外へと速やかに非難して下さい」というアナウンスが繰り返し流されている。いくら世の中が魔獣に対して偏見がなくなってきたとはいえ、どんな場合においてもそれらが安全だというわけではないのもまた周知の事実だ。


 他のハクロウ塾の面々とはすでにすっかりはぐれてしまった。いくら呼びかけても周囲の雑踏に紛れ込んでしまう自分の声にそちらは諦め、とにかくユウヤの現状を確かめようと人と人との間を掻き分けて進む。

 ユニでさえやっとしがみついている状態で、さらに小柄なラヴィーなどはコパの小脇に抱えられながらすっかり揉みくちゃにされてしまい、髪がぼさぼさになっている。お気に入りのカチューシャもどこかに落としてしまったようだ。


「ちょっとコパさん! ちっとも前に進んでおりませんわよ!」


 ユニもずり落ちそうになるメガネをもう何度目か手で押さえながら懸命にフィールドの様子を伺おうとするが、押し寄せる人の頭が視界を塞いだまま目の前が開けることはない。


「んーなこといったって、これで精一杯だっつーの! とにかくはぐれないようにしっかりつかまって!」

「はぐぅー! 前も後ろも見えない! ですーっ!」

「まったくもう! これだから人間というのは群れると本当にろくでもないこと!」


 文句を叫んだところでそれを聞きとめる耳はない。




 フィールドではレッドドラゴン対ビッグホーン、グレイトコング対サーベルタイガーの、四者入り乱れながらの交戦がおこなわれていた。他にいた救急班の人達は巻き込まないよう先に避難してもらっている。恐らくは大会本部への連絡が急がれているはずだ。


 相手方の狙いは勿論司令塔となっている人間二人であり、ドールとキャサリンにはそれを牽制するよう、彼女らの後衛にいるユウヤとマーシュが指示を出している。しかし即興で組んだにわかチームではミスも多い。

 ドラゴンの尻尾が突進してくるビッグホーンへと強かに打ち付けられ、その先に居たグレイトコングごと一緒くたに薙ぎ払った。それを好機とすかさず飛び込むサーベルタイガーの爪が迫り、マーシュは咄嗟に風を操作し、自らの体を後ろに吹き飛ばして難を逃れる。土の上に転がりながら、魔獣達の争いに巻き込まれないよう更に距離を置いて、マーシュがユウヤへと声をかける。


「なああんた! 噂じゃ聞いたが魔獣の言葉がわかるっつーのは本当かい!」


 実際、今も目の前でユウヤはドラゴンのそれと同じ咆哮を上げてドールに指示を出していた。ユウヤの指示でドールがキャサリンの態勢が整うまでサーベルタイガーと打ち合う。

 ユウヤがマーシュの声にちらと振り返り首肯のみで返す。その目はすぐに再び手前へと向けられていった。ユウヤは片時もスクイズの姿から目を離そうとしない。


「そいつらなんて言ってんだい! そのウシとネコ!」


 マーシュもわかっていたのだろう。二匹の様子がどう見ても尋常でないことは、逃げ惑った観客席の一般人でさえ感じたことだ。ユウヤは苦々しく表情を歪め、吐き捨てるように言う。


「駄目なんだ。叫んでいても言葉になってない。ただ、殺意だけを感じる」

「じゃあ、やっぱり……!」

「ああ、完全に自我を奪われた状態で操られている」




 かつて、この大陸でも大きな戦争がいくつもあった。


 人間というのは強欲な生き物で、領土、地位、金品などを争って、奪い合い、同じ人間同士で殺し合いをする。

 そんな戦争の局面を大きく左右するのは他でもない、強力な兵器だった。


 過ぎた時代の戦争兵器――魔獣兵。


 それらは人間よりも頑丈で、闘争本能が強く、何よりただの『物』だった。

 戦争が起きるたび、理不尽にも多くの魔獣が人間達の手により捕らえられた。魔法で無理矢理従わされ、兵器として戦場にその命を散らした。

 この時代で『魔獣使い』といえば誰もが『魔獣兵の操縦者』という意味で受け取っただろう。


 ――戦争は終わった。


 かつての過ちを繰り返すまいと時代は変わりつつある。

 現在、魔獣兵を造ることは禁止されている。しかし禁止されているのは倫理感によるところであり、兵器にすることはできないが、対象を強制的に操作する魔法というのは現代でも多くの面で活用されている。


 首輪もその内の一つだ。

 無論、例の拘束用首輪は以前説明した通り、対象の同意がなければつけることも従わせることも叶わない代物である。

 犯罪者用のものは同意がなくても拘束可能だが、そちらは専門職の者が取り扱うことしかできなくなっている。




 スクイズがビッグホーンとサーベルタイガーに指示を出す。二匹も首輪をつけていた。

 二匹はまた悲痛な唸り声を上げながらスクイズに従い、一旦スクイズの両脇へと下がり、守りを固めるよう構え直した。二匹の首につけられた首輪は、ユウヤも見慣れているあの首輪と同じもののように見えるのだが。


「クククククク……どうやら気付いたようだなぁ。さっすが、天才様に協会会長の息子さんだわ」


 ビッグホーンとサーベルタイガーに守られながら、スクイズがおどけたようにありもしない首を竦めて言う。そんな些細な仕草をするにも窮屈そうに茶色のチェック柄をしたジャケットがシワを刻んでいる。ヘビ柄のネクタイがじつに悪趣味だ。

 協会会長というのはBMMの会長のことだろう。マーシュが会長の息子というのは初耳だったが、そういえば会長の苗字もバトンだったとユウヤはプログラムのあとがきを思い出す。


「よくできてんだろう? この首輪はテメェらが使ってるおもちゃなんかとは比べ物になんねー超画期的なアイテムだ。これさえありゃー何も難しいこたぁねぇ。魔獣は人間に絶対服従。やっぱこうでなくっちゃなぁ」

「……。スクイズさん、知らないとは言いませんよね。あなたもかつては魔獣使いの端くれだった」

「うるせーな、そんなこたぁもう忘れたんだよ。いいかオイコラ、ユウヤさんよ。俺ァ前々からテメェだきゃーどうにもイケ好かねぇんだ。テメェの方こそわかってんのかええコラ」


 スクイズは相変わらず反省の伺えない顔色をして言う。

 しかしこれは、ただでさえ禁呪の使用その他諸々、社会的に罰せられることがすでに決まっている人間のすることではない。これ以上罪を重ねてまでそれは果たしたいことなのか。

 スクイズの父親――スクイズを監視していたはずのベイスン氏は、一体どうしたというのだろう。本来なら今頃スクイズは管理局に引き渡されているはずなのだが――。


 ユウヤは警戒を続けながらも一旦ドールを下がらせる。マーシュも同様にキャサリンを控えた。

 マーシュはスクイズの顔を知らないが、ユウヤとかわす会話を聞きながら彼がけして善人ではない、ということだけは確信したようだ。


「ならなぜマーシュさんまで狙うんです。彼は俺とは関係ない」

「んーなもんついでだよついでぇ。運が悪かったっつーやつ? そこに居たんだからしょーがねぇだろ」

「つーかあんたよく入り込めたな。専用通路は関係者以外入れねーはずだろう?」

「バーカ。あんな通行証さえありゃ通してくれるような入り口なんざチョロイっつーの。テメェも覚えてんだろぉ? よかったなぁ、楽に三回戦突破できてよぉ」


 スクイズが下卑た笑みを口端に浮かべる。ユウヤは訝しげな顔をしたが、マーシュにはそれでピンときた。

 三回戦第四試合、マーシュと戦うはずだった選手が魔獣の体調不良を理由に棄権している。同日に行われた二試合目を見る限り元気そうだったので急にどうしたのかと思っていたが、どうやら不穏な何事かがそこで起こっていたらしい。恐らくはその選手の通行証を何らかの手段で奪うなどしたのではないだろうか。


 マーシュが渋い顔をしてスクイズを見る。


「あんた……マジで自分が何してんのかわかってんのかい」

「しぃいいいいつけぇなだからンーなもん忘れたっつってんだろーがっ! 俺はなあ! そこの! そいつを! 俺の満足いくまでブチのめせりゃーそれでいーんだよっ! 後のことなんざぁ知るかっ!」


 スクイズの芋虫みたいな人差し指が真っ直ぐにユウヤを指す。ユウヤはマーシュに「元からあんな人なんだ」というよう首を振ってみせた。諭すというのは無理のようだ。

 そんなユウヤの仕草にスクイズは不意にギリッと奥歯を噛み締め、目付きを険しくして忌々しげな顔をする。


「そこのそいつのせいで俺はなあ、散ッ々惨めな思いをさせられてきたんだ……ユウヤ……テメェさえいなきゃ……俺は……俺は……」


 ――「俺は」と。そうしてスクイズはユウヤへの恨みの節をふつふつと語りだした。




 ユウヤとスクイズの因縁はさかのぼること三年前、ユウヤがヤン校長に連れられてハクロウ塾に入門した直後から始まる。


 当時、ハクロウ塾にはミス・サイレンといわれる女生徒がいた。しかしその可愛らしさは町内に留まるものではないと誰もが彼女を褒めていたし、実際彼女はそれだけの可愛らしい容姿をしていた。

 名をミューシアというブロンドヘアの彼女は、男子生徒全員の憧れの的であり、それでいて女生徒達から恨まれることもない明るく活発な性格をしていた。

 少々気ままな一面もあるものの、飼育調教師を父に持ち幼少から魔獣使いとしての心得を教えられていた彼女は、ハクロウ塾のカリキュラムもそつなくこなし着実に卒業へと向けて鍛錬を続けていた。


 そんなミューシアに目を着けていたのがスクイズである。

 スクイズは入学当初からミューシアにしつこくしつこく言い寄っていたらしく、ことあるごとに高級レストランに誘ってみたり、宝石を贈ってみたり、ドレスを贈ってみたりとあの手この手でミューシアの気を惹こうとしていたらしい。

 しかし一度たりともそれらにミューシアが頷くことも手を伸ばすこともなく、むしろストーカー紛いの行為を繰り返すスクイズをミューシアは常に敬遠していた。勿論、彼女は何度もきっぱり「迷惑だ」とスクイズに断っている。スクイズは当然それに貸す耳は持たない。金で落ちない女はいないと信じていた。


 そんなある日、サイレンの町に事件が起きる。その事件はあっという間に町中へと広がった。


 『あのミューシアちゃんに彼氏ができたらしい』


 ユウヤがこちらの世界に来て、最初にそういった関係を持った相手がミューシアだった。


 塾内では悔しがる男も大勢いたが、皆「ユウヤが相手なら仕方ない」と言って――ただ一人、スクイズを除いては――恨む者はいなかった。

 ユウヤはどちらかというと普段は大人しく地味な性格だし、変に目立つようなことはしないタイプだが、そもそもハクロウ塾に来た理由が『魔獣と対話できるから』だったため、その才能は周囲に認められていた。また女生徒達にはユウヤの動じない性格が「クールでカッコイイ」などといわれて、どうやらウケがよかったらしい。


 ユウヤにしても可愛い女子から好かれるというのは嬉しいもので、一も二もなく二人は付き合うこととなり、また同時にスクイズのユウヤに対する敵対心と数々の嫌がらせ行為はそこから始まったのだった。




「はぁ……そりゃーあんた、完全に逆恨みっちゅーやつじゃないかね……」


 ユウヤはうんざりとした表情をし、マーシュは呆れっぱなしでスクイズの話についついぼそりとつっこんだ。


「あの女は俺が最初に目ェ着けてたんだよぉ。それを後からきといて手ェ出しやがってよぉ。あの女は俺のもんになるはずだったのによぉおお」

「もうその話はいいじゃないですか……結局俺もフラれたわけですし」


 ちなみにミューシアは一年ほど前の卒業と同時にその容姿を活かして芸能界入りし、今では『キャット』という芸名で『歌っておどれて魔獣も使えるマルチアイドル』として立派に成功している。芸名の由来は彼女が使役している魔獣のマジカルキャットからきているようだ。

 「私、アイドルになって世間の人達に魔獣の可愛さを伝えようと思うの」と目をらんらんと輝かせて将来の夢を語っていた彼女の姿が懐かしい。


 しかしスクイズはそんなユウヤの言葉は一切聞いていない様子で更に続けた。


「大体よぉ……ハクロウの奴らも、前までは俺にヘコヘコしてやがったくせによぉ……テメェがやってきたとたん、天才だかなんだか知らねーがそんなもんに尻尾振って媚びへつらいやがってよぉ……ケッ、吐き気がするぜ」


 一度切り出したらスクイズの恨み言は止まらない。ユウヤとマーシュはその声をほとんど聞き流しながらスクイズをどうにかしたいと思案するものの、スクイズを囲む二匹を避けては無理だ。せめてもう少しこちらの手数が増やせればやりようもあるのだが――。


 観客席の様子は遠目に見るも、いまだ混乱をきたしている。

 東西南北四箇所しかない出入り口の前へといっぺんに人が集中してしまい、避難しようにもなかなかスムーズには進んでいないようだ。溢れ返る人のざわめきがこちらまで届いてくる。


「ま、とにかくテメェらは大人しく俺様のサンドバッグになれや。魔獣使いのヤロウどもってなぁ揃いも揃って甘チャンばっかだからなぁ。クククッ。知ってたぜぇ、テメェらならこうやって強制的に操られた魔獣なんて出された日にゃ、手も足も出ねーだろう、ってなぁあ」


 スクイズが馬鹿にしたような見下す目をしながら傍らのビッグホーンの肩をぽんぽんと叩いて言う。

 聞いたマーシュが心底呆れたようにぽかんと口を開け、思わず「うわぁ」と口にした。気持ちはわかる。ユウヤもこれがスクイズとの初対面だったらきっと同じように声に出た。


『ドール』

『……全然駄目。さっきから隙を伺ってはいるんだけど、あっちの二匹はどうしても避けて通れない』

『手加減できそうか?』

『それも無理。あっちはこっちを殺す気だ』


「おおっと、何話してんのかしらねーが、妙な気ィ起こすんじゃねーぞ。手も足も出ねーだろうが、ま。念には念をだ」


 スクイズがウヒヒと気持ちの悪い笑い方をしながらまた妙なことを言い出す。ユウヤとマーシュは警戒を濃くし、ぐっと小さく身構えた。


「おい、オメェら出番だ! 出てこいよ!」


 スクイズがそう、先ほど出てきた選手用の通用口の方へと振り返り声を投げる。すると中からまた新たに二つの人影が出てきた。


 新手か――。


 小さく舌打ちをしたユウヤだったが、その表情はすぐに別のものへと変わり、驚愕に目を見開いた。

 二人はスクイズの後方で立ち止まり、その身を緊張に硬くしながらその場へと立ち竦む。

 出てきた二人の背後へとサーベルタイガーが回り込み、後ろから二人を脅迫するように立ち位置を変えた。


「お願い……たす、けて……」

「恥を承知で頼む。俺達を……見捨てないでくれ……」


 出てきた二人――レオノルとオットは顔を真っ青にして、縋りつくような目をユウヤ達に向け、すぐにまたその恐怖に耐えられないよう視線を俯けてしまう。

 二人の懇願に合わせるようにしてスクイズが籠を二つ、左右の手それぞれに持ち、顔の両脇に掲げる。そしてニタニタと笑いながらユウヤ達へ問いかけた。


「これ、なぁ~んだ?」


 籠が二つ。そして後ろの人質二人を見れば嫌でも意味を理解する。

 ふざけながら言うスクイズに、レオノルが震えた声でぼろぼろと泣き出しながら再び呟く。


「その人に従魔を盾に取られてるの……コーンと、リーザが……お願い、助けてあげて――」

「せめてコーンとリーザだけでも……あんたらを見込んで、どうか、頼む――」


 オットは悔しさから爪が食い込むほど拳を硬く握り締め、頭を項垂れ顔を伏せた。


「スクイズ――! 貴様――!」

「ヒャーッハッハッハッハッハッハ! いいねぇええその顔、その顔だよユウヤ! テメェのそういう悔しそうな顔を俺ァずぅーっと見たかったんだ! ヒャハハハッ! なかなかそそる面じゃーねぇかええオイ!」

「こんの、クズ野郎め……」


 マーシュも苦虫を噛み潰したような顔をして呟く。彼の中でスクイズの人物像は『善人ではない』から『完全に悪人』を経て、たった今『極悪人』へと更新された。

 更に険しさを増す二人に対し、スクイズは不敵に笑んだまま続ける。


「いいかぁ、動くんじゃねぇぞぉ。今この場を仕切ってんのは俺だ。俺様が一番偉いんだ。テメェらはいいなりになるしかねーカス下僕だ。わかったらさっさとそいつら後ろに下げねーか」


 彼の中で、ユウヤに対する嫉妬から始まった恨みつらみは積年のものとなり、ついには取り返しのつかないところまできてしまったようだ。

 それはただただ、愚かとしかいいようのない憐れなものではあったが、そもそもあの時――彼を断罪した際に自らすべきと思う報復を果たしておけば、後々このようなことにはならなかったのでは――と、ユウヤの心に若干後悔にも似た念が小さくくすぶる。


「本当に救えない奴だな。その様子だと、あの時俺達に話したことで全てではないんだろう」


 ユウヤが声を一段低くしてスクイズの目に見据え返す。

 ここにいないはずの彼がなぜ今こうして目の前に立っているのかはさておき、これだけの手はずが整っているのは以前語られた「怪しいフードの男」が関係しているように思えた。

 スクイズは金持ちではあっても、人望や教養持ちではない。何か金で解決できるようなあてでもなければ、今回のような段取りも組めなかったはずだ。


「はぁあ? ったりめぇえだろぉ? 誰が馬鹿正直に全部洗いざらい話しますなんつったよバーカ。まあでも嘘は吐いてねーぜ? あの爺さんは妙に勘が鋭いからよぉ」


 『爺さん』というのは恐らくヤン校長のことだ。さすがは年の功というべきか、校長には下手な嘘は一切通じない。だからハクロウ塾で校長に学ぶ面々は皆必然的に正直者とならざるを得ない。

 残念ながら今この場に校長はいないが、ユウヤには更にもう一つ確かめておかなければならないことがある。


 スクイズの父親――ベイスン氏。

 彼が息子とは違った真っ当な人間であると思えたからこそ、ユウヤはスクイズの身柄を彼に任せることを許せた。――しかし、現状は芳しいものではない。


「……一ついいか。あんたの父親はどうしたんだ」


 正直、それについては嫌な予感しかしなかった。それでもユウヤはスクイズに問いかけた。


「あー、あのクソジジィか。ありゃ駄目だ、もう使えねぇしよ。俺の役に立たねーならいらねーし」


 自分の父親をまるで物か何かのように言って、スクイズが答えた。


「ぶっ殺してやったわ」

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