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第一話:魔獣使い

『ああ、やっと見つけた。ご苦労様、ラヴィー。下がってていいよ』

『はい、マスター』


 若い男の声が出した指示に、少女とおぼしき声の返事が返り、一瞬辺りが仄かに明るく光ってまた暗闇へと戻る。

 町の地下水路から続いていた暗い横穴を抜けて、開けた場所へと辿り着いた。声が上方まで響き渡り、手に持つランプでは周囲の壁にまで光が行き届かない。おそらくは捜していた物の巣なのだろうと思われる。薄暗い空洞を見渡し、男の声が小さく「この広さなら大丈夫そうか」と独り言を呟く。


 そんな開けた空間の中ほどまで歩を進めると、奥から一つ、しわがれた野太い声が発せられ、若い男の影へと凄んだ。


『……おいそこのテメェ、ちょっと待ちな。ここがどこだかわかってんのか?』


 殺気が一つ、二つと増えてゆき、やがて若い男の前に群れとなってそれらは姿を現した。

 暗闇に浮かぶ若い男の影は、それに物怖じした様子もなくダミ声の主に軽く会釈を向ける。


『こんにちは。君達が噂のシーフマウスか。じつは町の人に頼まれて君達を説得しに来たんだが、ちょっといいかな』

『そういうテメェは人間のくせになんで俺達の言葉を話しやがる』


 一人の青年と、ネズミの群れが対峙していた。


 一言で『ネズミ』といってもこのネズミ、ただのネズミではなく常軌を逸した大きさをしており、ぱっと見野犬か何かの獣と見間違えそうなほどの迫力がある。そして実際、出くわすならば野犬のほうがまだマシだったかもしれないと思われるほどに、凶悪そうな顔付きをしている。それが群れているのである。

 シーフマウス達は牙を剥き出し、涎をすする音を立てながら唸り声を上げて、今にも襲い掛かってきそうな雰囲気だ。たとえ大の大人の男でもこの群れに襲われたらひとたまりもないだろう。


 ところが青年は、それでもなお慌てることなく、友好的な笑みさえ浮かべて話を続けた。


『魔獣使いのユウヤといいます』

『名前なんざァ聞いちゃいねーよ。その魔獣使いのお坊っちゃんがこんなところに何の用だ』

『じつは、君達が片っ端から食料庫を荒らすもんだから、町の人間達がみんな困ってしまっているんだ。あれは人間にとっても大事なものなんでね、倉庫を荒らすのはやめてもらえないか?』

『知らねーなァ。俺達にとってもありゃあ大事な食料なんでなァ? そっちこそ言いがかりつけてんじゃねェーよ』

『食べ物なら山や川にも充分あるだろう? 頼むよ。できればこっちも手荒な真似はしたくないんで』

『ヘッ! おい、聞いたかヤローども。腰抜け人間様のお願いだとよォ!』


 辺りに威嚇とも嘲笑ともつかない気味の悪い鳴き声がこだまする。

 そんな中、青年はネズミ達に向けて素直にぺこりと頭を下げる。


『はい、お願いです。どうか倉庫を荒らさないで下さい』

『だが断る! おらヤローども、やっちまえィ!』

『ヂュヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ!』


 ――交渉決裂。戦闘開始。


「ったく、しょーがねーなぁ……」


 殺気立つネズミ達に青年が構え、呪文を唱える。するとベルトに提げられている小さな籠が光を放った。光の中から何かが姿を現し、みるみる大きな影となってネズミ達の前に立ちはだかる。


『行くぞ、ドール! ウィングブラストで牽制!』

『了解』

『ユニ、すぐにスイッチ、突っ込んで蹴散らせ!』

『かしこまりました』

『ゲエエッ! あっ、ありえねぇ!』

『炎で囲め! 回り込んで挟み撃ちにして、一匹たりとも逃すな!』

『そんな、馬鹿な……人間ごときが、なぜだあああああ……』


『……ふぅ。みんな、お疲れ様』


 こうしてネズミの盗賊集団は無事御用となり、一仕事終えた青年は依頼人の下へと戻ってゆくのだった。






 ――休日も終わりに近づく夕暮れ時。


 アルバイトを終えて町から帰ってきたユウヤは師の下へと呼び出されていた。


「ただいま帰りました。お呼びでしょうか、ヤン先生」

「うむ、おかえりユウヤ」


 教室の壇上に佇む白髪の男と、その前にひざまずいた黒髪の若い男。


 若い男は二十代前半と思われる年頃の、とび色の瞳が凛とした中々の好青年だ。先生と呼ばれた老人は魔獣使いの師であり、ハクロウ塾の校長を務めている。

 柔和な笑みを浮かべた校長は、簡単に今日の町での出来事を弟子に問いかけ、他愛ない世間話をする。そうして和んだ会話の後に、ヤン校長は改めるように一旦言葉を区切り、また口を開いた。


「さて。おぬしの卒業試験となる大会も一週間後と迫った。おぬしほどの才覚の持ち主なら心配には及ばんだろうが、くれぐれも自身と魔獣達の体調管理は怠らないようにの」

「もちろんです。お心遣い感謝いたします」




 一面豊かな牧草地が広がり、大きいが舗装されていない土肌の道が一本通っている。その道々には牧舎が建てられ、どこまでも続くのどかな景色の先には小さな校舎と宿舎があり、そこでユウヤ達は暮らしていた。


 ユウヤ達は世に魔獣使いと呼ばれる人間だった。


 この世界にはいわゆるモンスター、魔物という存在が当たり前のように生息している。それらは人類にとって時に脅威をなし、時には富をもたらし、伝説となり、また身近なものとして、いつの時代も人々の暮らしと隣合わせで存在していた。


 そんな、身近だが到底人とは相容れそうにないモンスターの中でも『魔獣』と呼ばれる獣型モンスターを操り、使役する力を持つのが『魔獣使い』である。ともすれば害にしかならないような魔獣を人間のためになるよう使役できるのだから、その能力が重宝されるのは言うまでもない。


 ユウヤの師であるヤン校長は、現役を引退してからは魔獣使いの指南学校を営み、才能ある若者達を世に送り出している。

 ハクロウ魔獣使い養成学校――通称ハクロウ塾。教員二名、生徒十八名の小規模学校である。ヤン校長の下を訪れる若者は、実家が裕福な者から行く宛てのない孤児まで、年齢も性別も人種も様々、中には身元不明な者もいたが、皆ここでは仲良くやっていた。それも一重に生きる物の命を説く、ヤン校長の教育と人柄の成せる業だろう。




 その場に残る校長に一礼し教室を出たユウヤは、校舎と宿舎を繋ぐ通路の途中でふと声をかけられる。今日、一緒に町へと出かけた兄弟子のコパだ。どうやら外でユウヤが戻るのを待っていたらしい。


「ユウヤお疲れー。先生なんだって?」

「ああ、コパ先輩。大会も間近なんで、激励されました」

「おまえは期待されてるからなぁ。入ってきたのは一番後だったのに、今じゃ俺より先に卒業試験を受けようとしてるし。今日だってクエスト成功してきたのはおまえだけだ」

「あの能力は授かり物ですし……やってこれたのは周りの環境が良かったからです――ってあいてて先輩痛い痛い」


 話すユウヤの頭部に腕を絡め、そこはかとなく容赦ない力で締め付けてきたコパにユウヤは苦悶の声をあげる。体格の良いコパに捕らわれてしまっては、細身体型のユウヤではいくらもがいても抜け出すことはできない。


「ちくしょーこの天才が! 妬ましい奴め! 出世したら何か良いモン奢れよなーっ! 期待してるぜ!」


 学校を卒業すればもちろん就職する。

 陽気だが若干乱暴なこの先輩は、豪快に笑いながら豪快に将来有望と謳われる天才の背を叩き、天才と称されて苦笑いする後輩と共に夕食の支度へと向かうのだった。


 食堂の奥にある厨房ではすでに調理が始まっていた。ここでは食事も自分達で用意する。掃除も洗濯も、身の回りのことは全て役割分担を決め、当番制で行っている。


 誰かが「火起こせる奴、手を貸してくれ」と言う。

 すぐに隣に立つコパが返事をし、かまどに向いてうずくまり、薪に手の平をかざした。すると間もなくしてかまどに火が起こる。

 戻ってきたコパにユウヤは肩を竦めてみせた。


「俺はコパ先輩みたいに火を起こしたり水を出せるほうがよっぽど凄いと思いますよ」

「何言ってんだ。こんな誰でも使える能力なんか珍しくも何ともねーだろ」

「いや、なんか未だに不思議というか何というか……なんで手の平サイズの籠にドラゴンが入るのかとか……」

「俺は学者じゃねーから細かい理屈はわかんねーって」




 魔物が当たり前のように生息している、となれば、また当たり前のように『魔法』というものも存在していた。

 生けとし生ける物全てが、生まれながらにして持つ『魔の力』。それを源とし力を発揮する、それが『魔法』だ。


 しかし文明が全く発達していないかというとそういうわけではなく、理化学の研究もそれなりに進められている。ただ、それはあくまで魔法への更なる理解やサポートとしての意味合いが強く、魔法が科学に増して万能で有能で便利なため、世界の大半の事柄は魔法の力に頼って形成されているのが現状だ。


 そこから見ても、魔法は多種多様、様々な種類のあることが伺える。

 各々が持つ魔力の用途によって、身近な例でいえば職業が変わる。一見魔法の力と関係ないように思われる剣士や武闘家などの冒険者職も、この世界では魔力を用いて自らの肉体や技巧を磨き、己の能力を高める。

 そうして常人とは一線を画す能力を持つ、そのこと自体が『魔法』なのである。


 そして、ここでユウヤが『天才』と呼ばれるゆえん――それはユウヤが生まれつきとある能力に恵まれており、それが魔獣使いという職に置いて大変有能なものだったからだ。

 いや、『生まれつき』という表現にはいささか語弊がある。たしかに『生まれつき』には違いないのだが――。


 ユウヤは元々この世界の住人ではない。




 ユウヤは気のいい兄弟子達と共に夕食と風呂を済ませ、今は自室のベッドに寝転んでいた。

 無駄に明かりを灯すようなことはないから、辺りはすっかり暗い。しかもユウヤは一人部屋を宛がわれているので話し相手もおらず、風呂の後はベッドに入るくらいしかすることがない。


 こうして一人暗い天井を見上げていると、知らずの内に思い浮かんできてしまう。

 この世界に来てから今日にいたってもなお、それは変わることのない――。


 目の前にいつかの光景が、ゆらり、ゆらりと、浮かび上がってくる。




 その日、ユウヤは大学から自宅までの帰り道にある個人経営のスーパーへと立ち寄り、ペット用の小さな缶詰をいくつか買った。

 缶が詰まったビニール袋をカサカサと忙しく鳴らしながら、家路からほんの少し逸れて商店街の路地裏へと入る。突き当たりの塀の前に積まれた朽ちかけの資材の下には子猫が数匹うずくまっていた。


 ユウヤの気配を察知すると子猫達はしっぽをピンと立て、いっせいに鳴きながら資材の下から這い出てくる。その可愛らしさに思わず顔を綻ばせながらさっそく猫缶を開いてそこに置き、がっつく子猫の頭をいつものように数えた。数えて、すぐに笑みが消える。

 一匹足りない。


 焦るなと自分に言い聞かせ、地面を這いつくばり資材の下を覗いてみるがいない。辺りを見渡しても気配がない。

 いつもなら真っ先に餌に飛びついてくる、頭に大きな黒ぶち模様のある奴が。


 母猫は元々いなかった。商店の人の話では表の通りで車にはねられてしまったという。

 それを思い出したユウヤは咄嗟に路地裏を戻り、車道を探しだす。


 ――子猫はいた。


 好奇心旺盛な性格が災いしたのだろうか、子猫は道の真ん中辺りで怖気づいたように小さくなり、動けずにいる。

 見つけたことに安堵する間もなかった。

 子猫に迫るトラックの影を見て、ユウヤはそこに飛び出していた。


 キキキィイイ、と甲高く耳障りなスキール音が響き渡り――。




 ……いつの間にか眠ってしまったらしい。もう何度も繰り返し見た夢で、また目覚めた。

 一度目が覚めると意識が冴えてしまい、ユウヤは夢で見た出来事の続きを思い返してしまう。


 結局、子猫の安否もわからないまま、自分は後悔しているのかもしれない。

 自分が変に同情して子猫の世話をしなければ、下手に人間に慣らすようなことをしなければ、子猫もわざわざ人の多い表通りに出てくることもなかったのではないか。


 面倒をみるからには責任を持って、もっと安全な場所で保護していれば。せめて自分の呼び声に反応するようにしつけていれば。あの時あの子の名前を呼ぶことができたら。それ以前に何が危険か教えることができていたなら……。


 ――何か変わっていただろうか。


 そう、心に残す未練を誰に問いかけていたのかも定かではなかったけれど。ユウヤは目の前に迫ったバンパーと駆け抜ける走馬灯を見ながら、誰かの声を聞いたような気がしていた。

 そして、次に目覚めた時には見知らぬ異世界の地に自分は倒れていたのだ。


 『あらゆる生物と対話できる』という能力を携えて。


 なぜ自分はここにいるのか、どうして動物達の声が理解できるのか、もちろん混乱もしたし戸惑ったが、何より自分が生きているという実感だけは確かなものだったので、ひとまずそれを現実として受け止めた。

 更に、対話の能力は脳が発達していると思われる生き物ほど、より明確な対話が可能なようだともわかった。


 かといって人間の自分が見知らぬ森の中でたった一人生きてゆけるはずもなく、友好的に接してくれる動物達に教えてもらいながら飢えを凌ぎ、遣り過ごしていたところを運良くヤン校長に見つけてもらえたのだった。

 そのまま校長の下で魔獣使い見習いとして学ぶことになる。対話能力は魔獣に対しても有効だったから。




 あれから三年。自分は成人を迎え、あの事故がなければ今頃は元の世界で大学の卒論に追われていたはずだ。


 校長に出会えたことでこの世界が異世界であるということも理解した。元いた世界と違い、魔法文明が栄えたこちらの世界には、ユウヤが見慣れていた機械という物があまり存在せず、代わりに魔法道具という物がいたるところで人々の暮らしを支えていた。


 驚いたのは、この世界の文明がユウヤのいた元の世界と比べても、遜色ないほど発達していたということだ。

 『魔法』と聞くとユウヤが真っ先に思い浮かべる世界は、中世ヨーロッパあたりの古い時代だったのだが、この世界では建物や乗り物から、日常品にいたるまで便利な魔法道具が開発され、独自の進化を遂げているらしい。

 ただし、ハクロウ塾の宿舎ではそういった便利道具を必要以上には置いておらず、昔ながらの方法で魔法道具に頼らず自分でできることは自分でする、という生活スタイルをとっている。教育の一環なのか、はたまた経費の都合なのかはわからない。


 最初は魔法やモンスターのあふれる世界に中々馴染めず苦労もしたが、何かと親切に世話をしてくれる師や先輩方のおかげで、少しずつだが「そういうものなのだ」という認識を持ち、納得できる程度には生活に慣れてきたところだ。


 自分の不思議な能力も魔力によるものだろうと教えてもらった。ただ、それが人並みに修行やなんかで身につけたものではなかったので、生まれつきだということになり、天才扱いを受けるようになった。

 普通、どれだけ修行を積もうとも対話までできる魔獣使いはいないのだそうだ。


 校長や先輩達は皆良い人で、自称記憶喪失で事実身元不明であるユウヤを快く迎え入れてくれた。ユウヤはそのことをとても感謝している。


「……いや」


 前言撤回。一人だけ、いた。善良とは言い切れない兄弟子が一人。


 ぼそりと零れた独り言に溜め息を重ねて、再び目を閉じる。

 明日からは大会に向けての調整に入る。他門下の有力選手についても考察しなければならない。

 もちろん、個人戦では兄・姉弟子達もライバルとなり得るのだから、同じ門下としてあらかたの手の内が筒抜けな分、何か自分なりの秘策を用意しなければ。


 ハクロウ塾門下は規模は質素ながらそれなりに名門だ。

 ゆえに、大会で上位入賞というそれなりの成績を収めることができて、晴れて免許皆伝、一人前と認められることになっている。まだ見習いでしかないユウヤは学校に所属していることで身分が証明され、魔獣の取り扱いが許可されているのだった。


 ――この異世界で認められることができたら。


 その時こそ自分はきっと、この世界で、この世界の人間として、この世界のために、残りの人生を生きてゆく決心もつくだろう……と、ユウヤはそれとなく、自身の身の振り方として感じていたのだった。




 翌朝のことである。


 朝日は清々しく大空を青く照らし出し、心地よいそよ風が澄み渡る空気を運ぶ、宿舎はそんないつもの朝を迎えていた。

 ユウヤはいつも通り部屋で身支度を済ませ、皆と朝食を囲み、自分の牧舎へと出向いた。


 異変にはすぐに気付いた。

 何せ牧舎の中身がもぬけの殻だったのだ。


「そんな馬鹿な!」


 ただ事ではない。

 ユウヤは慌てて牧舎を飛び出し付近を捜し始める。牧舎にいた魔獣の中にはドラゴンもいたのだ。もしも脱走したのだとしたら、いくら飼い馴らされているとはいえ、ただ事どころか大惨事になりかねない。


「ラヴィー! ユニ! ドール!」


 魔獣達の名前を晴れた空、広がる草原に向かって呼びかける。返ってくるのはそよ風ばかり。


「……」


 ユウヤの顔に不安と焦燥の色が入り混じる。思うところは多々あるが、ただこうして当ても無く広い牧草地を捜し回るわけにもいかない。協力を求めたほうが良いだろう。

 そもそも夜の間にすでに逃げ出していたのならこの近辺にいるとは限らない。一刻も早く責任者であるヤン校長に事態を報告するべきだろう。


「先生! ヤン先生、いますか!」


 バン! と勢いよく宿舎の扉を開いて叫んだ。

 探していた主の返事はない。


「一大事です! 誰かいませんか!」


「あのぅ……」


 皆すでに各々の牧舎へと出向いた後のようだった。

 ガシガシと頭を掻きむしり、ならば今度は師の牧舎に向かおうとユウヤが踵を返しかけたその時。


「……マスター、マスターってば!」


「――ッ!」


 一瞬聞き逃しかけたが、強く張られた聞き覚えのある声に振り返る。


「ラヴィー!」

「はい!」


 一匹目、無事発見だ。

 ハネミミラビットのラヴィー。ウサギ型モンスターで、ユウヤが始めにいた森で懐いてしまったので、そのまま連れてきた魔獣である。

 使役しても大した労働力を期待できるわけではないが、この魔獣は従順で察知能力に長けているので、残りの魔獣捕獲にきっと役に立つ。


 と、一瞬の内にそこまで算段をつけたのはよかったのだが……。




「……え、あれ? ラヴィー……?」


 出入り口の扉の脇からこちらを覗き込み、元気よく手を挙げていたのは。

 年の頃は十代半ばの、くりっとしたつぶらな黒い瞳が小動物を思わせる、愛らしい顔立ちをした――全裸姿の少女だった。

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