趣味の仮面作りに理解のある無貌の騎士様がメロい
騎士ランフォード・カルシュタインにとって、舞踏会は億劫なものだった。
自らに向けられる視線が奇異や恐怖から同情を含んだものに変わる瞬間は何度経験しても居心地が悪いものである。
しかし今日は彼に集まる視線がいつもよりも少ない。
「相変わらずその仮面、律義につけてるのか」
粗野な口調でランフォードに声をかけてきたのは、同じく騎士であるゲイツであった。
日ごろ鍛えている騎士の中でもさらに体格が大きい。ランフォードが優男に見えるほどだ。
「陛下の心遣いだ。身分の証にもなるしな」
彼がそっと目元をなぞる。鼻から上を隠すように作られた、鉄製の黒い仮面。蔦や鷲などの金細工が僅かに施されており、仮面舞踏会などで使うものというよりは、戦士が顔を守るようなものだった。
「んなもん、腰の剣だけで十分だろうが。辛気臭い顔しやがって」
「見えてないだろう」
「それもそうだな。見なくてもわかるが」
「ところで、今日は何かあったのか? いつもより騒がしい気がするが」
「ああ、なんというか……珍しい令嬢がいるんだよ」
そこでようやくランフォードは、会場の視線が少し離れたところにいる令嬢に向けられていることに気がついた。どうやら挨拶を終えたことで、彼女が何者か周囲の貴族たちに知れ渡ったようだ。
薄紫のドレスに、ピンクブラウンの髪とややきつめに見える瞳、気の強そうな顔つきの中に周りを気にしないような奔放さがにじむ、全体としては落ち着いた色合いなのにどこか目をひく令嬢だった。
ゲイツは周りに聞こえない程度に声を潜めて彼女について説明を始めた。
曰く、貴族令嬢とは思えない物言いをする。
曰く、デビュタントで一度顔を見せた後は一度も社交の場に出てきていない。
曰く、仮面職人として高い評価を得ているが、倒錯した趣味を持っており呪いの仮面を作っている。
話を聞いたランフォードは、なるほどそれでと納得する。
既に何度か顔を出しており、事情も知れ渡っている自分よりも新鮮で刺激の強い相手がいれば話題がそちらに移るのは自然なことだ。と。
「奇遇にも仮面つながりだ。社交界でお前を差し置いて仮面といえば彼女らしい」
「仮面繋がりと言っても……付けてる私と作る彼女を比べても仕方ないだろう」
「その仮面は彼女が作ったとかじゃねえよな?」
「職人は歳を召した男性だと聞いている。彼女とは関係無いだろう」
そのように前振りのようなことを言ったところで、ランフォードと話題の令嬢はばっちり目が合った。
ランフォードは噂は噂、誇張されているものだろうと油断していた。
仮面令嬢――自分以外が作った仮面に対しても並々ならぬ関心があるということに。
目が合った瞬間、令嬢は周りを無視してまっすぐにランフォードのもとに向かってきた。
そして形ばかりの礼をとりながら、挨拶のようなものを行った。
「はじめまして、カレイドリア子爵家のリヴェッタと申します。素敵な仮面をお付けになってますね。実戦での使用も想定されていそうですね。良い感性ですわ。どちらの方が作ったかお聞きしても?」
ランフォードは隣で笑いをこらえているゲイツについては後で殴ろう、と決意した。
◇
かつて一つの都市で起こった事件。
それは古き邪神を信仰する邪教徒たちによる、邪神復活の儀式だった。
秘密裏に誘拐された人々が生贄にされかけ、逃げ出した者の報告によって被害が発覚した。
調査を経て討伐隊が差し向けられた。ランフォードもその中の一人だった。
監禁されていた生贄候補たちは討伐隊によって助け出され、邪教徒たちのほとんどが捕縛もしくは討伐された中、最後の一人が自らの命と引き換えに悪あがきをもくろんだ。
中途半端に召喚されかけた邪神の欠片のようなそれは、その場にいたランフォードに呪いをかけたのだ。
他者が顔を認識できなくなる――無貌の呪いを。
それ以来、ランフォードはどんな顔をしているのか誰にも見れなくなってしまった。
触ればそこにあるはずなのに、表情も目鼻立ちも、口の動きも何も見えない。どんな顔だったか誰も思い出せないし、覚えることもできない。
頭では「わからないだけだ」と理解していても、その「見えない顔」は人々に不安と恐怖を与えた。
そこで、邪神復活を事前に食い止めたことに対する褒賞として、王は彼に一つの仮面を与えた。
人前に出る際にはその仮面をつけていればよい、と。
故に彼は舞踏会のような場においても、唯一仮面をつけることが許されている。
人々を救った英雄として。
あるいは悲劇の当事者として。
「自分で説明したのは久しぶりな気がします」
舞踏会から数日後、ランフォードはリヴェッタに招かれる形で茶会に出席していた。
最初は屋敷の者が他にもいたが、リヴェッタが追い払ってしまった。今は侍女が一人だけ残されている。
未婚の令嬢と男が会うのにあまり一般的ではない光景ではあるが、リヴェッタという令嬢の日頃の行いというものだろう。
ランフォードも最初は戸惑ったが、当の本人が気にするでもなく仮面について聞かせてほしいというものだから、その経緯として自らの身の上を語ったのである。
「やはりそちらは王国専属職人の一人、クウェイ様の作品ですわね。よろしければ手に取って見てみても?」
「その……私の顔は人には不気味に映るものでして。あまり素顔を晒すのは……」
「お気になさらず。というよりそこまでおびえられるものですか?」
「何を考えているかわからない、どう思っているか見えないのはどうにも抵抗があるようで、直接的に言われることはありませんが皆さん顔が引きつったり目を背けたりしているので」
「そうですわね……よし、ではこうしましょう」
リヴェッタは自ら立ち上がると、キャビネットを開いた。
そこには様々な仮面が納められていた。
「随分とたくさんありますね」
「ええ、全て私が自作したものでしてよ。これを代わりにつけておけばよろしいですわ」
「すごい数だな……そちらの棚にも入っているのですか?」
「こちらは……売り物にはならなかったので趣味で作ったものですわね」
「よければそちらも見せてくれますか?」
「別に隠してはおりませんので構いませんわ」
そう言って出てきたのは異様な雰囲気を放つのは、人の顔そっくりの仮面たちだ。まるで生きた人の表情をそのまま写し取ったかのように精巧なそれらは、十種類以上、男女別、いずれも異なる表情で並んでいた。
「では、そこのものを」
ランフォードが指し示したのはそのある種不気味な面たちの並んだ一画だった。
「あら、なかなかお目が高い。この滑らかな造形、自然な表情、まるで生きているかのように繊細さ、私としましてもお気に入りですのよ」
「ええ、素晴らしい出来だと思います」
「ではお気持ちにあった仮面を選んで代わりにつけてみてください。せっかくなので茶会の土産に今あるシリーズを一セットそのまま差し上げますわ」
通常の貴族であれば、ひきつった顔をしていることだろう。
しかしランフォードは平然としている。それは表情がわからないことだけが理由ではなかった。
「よろしいのですか?」
「ええ、残念ながらなぜか評判が悪く人には理解されませんでしたの。先程も申し上げたように売り物にはなってませんので」
なぜも何も。
仮面は本来顔を隠すために、あるいはファッションとして身につけるものである。
仮面舞踏会や裏オークションなど、貴族の間で使うタイミングはあるが「本物と見間違えるほどに精巧な生身の人間の顔の仮面」など不気味なうえに使い道がない。
リヴェッタはかつて、屋敷の他の者に黙って飾って、客人が「この屋敷では人の顔をはぎ取って飾るのか」と誤解を受けたほどである。
百歩譲って呪いの道具である。到底売れるものではないだろう。
しかしここ数年、仮面をつけて生活していたランフォードは少し感覚が麻痺していた。それらの仮面を見ても変わっているな、としか思わない程度に。
それに、ゲイツのような男を羨ましく思っていたこともある。以前と同じように話しかけてくれる、全身で気持ちを表現できる友人を。彼のように人に気持ちをもっと伝えられたら良かったのにと、呪いを受けて尚更思うばかりであった。
少々不器用で、遅れての感情表現とはいえ、感情表現の手段があるのとないのでは大きな違いだ。
自分で事情を説明したのが久しぶりだ、と口に出して気がついたのだ。
社交界ではどこのだれがどういう者か、ある程度把握しておくのがマナーである。
知らないものは知っている者から説明を受ける。
ましてや気味が悪いと仮面で隠した顔のことなど、話題に触れる者がいるはずもない。
そんな腫物のような扱いを受けていて、仮面も、呪いもうんざりしていたのである。
「その呪いって解除できませんの?」
「解除条件は三つあって、そのうちの二つは達成しているんですよ。ただ最後の一つはどうにもできそうにないので諦めています」
「今度から私の仮面で生活してみては? 口が動かせないのが難点ですが、我ながら傑作、黙っていれば仮面だと気づかれませんわ。私は使ってもらえると嬉しいですし。途中で気づかれたときの反応も楽しみですわね。私が作ったものだと自慢してもよろしくてよ」
――解除を諦めないで。
――顔が見えなくてもお前がいい奴だってことは知っている。
彼の家族や友人が言ってくれた言葉だ。当然だ。呪われて良かったねなどという無神経な人間はいない。
だから初めてだったのである。このようにあっけらかんと、まるで運が良いとばかりに楽し気に話す人は。
ランフォードは楽し気に微笑んでいる仮面をかわりにつけて、リヴェッタに美しい意匠の仮面を渡して茶会を続けたのであった。
◇
それからランフォードとリヴェッタはお茶会の名目でたびたび会って話すようになった。
そしてリヴェッタは定期的に新しい表情の仮面を作って渡すようになってきた。
ある時はランフォードの生活を聞いて使い勝手のよさそうな顔を。
ある時はランフォードの仕草や声色から「このような顔をしているのでは?」と。
ランフォードはいつもいただいてばかりでは申し訳ない、と贈り物をしたこともある。
しかしそこは仮面令嬢、社交の場で仮面をつけた人間を差し置いてそう呼ばれるだけのことはあり、仮面以外の美しい宝石も、甘いお菓子も、流行りの衣装もさほど喜んでいるようには見えなかった。
そんなことより、と自信作だが評価されなかったという「見る角度で表情が変わる面」の話を始めて、贈り物には目もくれなかった。本人は楽しそうではあったが。
堅物のランフォードが幼いころから時間の多くを鍛錬に費やし、火遊びの一つもしたことがないとはいえ、今回は相手も悪かった。
そんな彼を見かねて、帰り際にリヴェッタの母親が声をかけた。
「いつも娘によくしていただきありがとうございます。なにぶんあのような性格で、浮いた噂もなく一生仮面を作って過ごすものと思っていたものですから、きちんとした方と交流が増えて屋敷の者も喜んでおります」
常に仮面をつけて過ごす男を捕まえて「きちんとしている」というのはややおおらかではあるが、言われている娘が仮面に埋もれて生活しているのである。
「娘はあなたが来てから楽しそうで、最近は仮面もきちんと片付けるようになったし、顧客の注文も素直に受けるようになって……その仮面をあなたが使ってくれているだけで十分救われております」
そういわれたランフォードは少し困り顔をつけて、お礼を言って屋敷を後にした。
◇
母親には良いと言われたが、ランフォードとしては仮面以外でもリヴェッタの喜ぶ様子が見てみたいという気持ちはあった。
いきなり仮面とは無関係なところで喜ばせるには難しいと切り替え、方法を変えた。
王都の劇場で今行われている演目が、身分を隠した男女の恋愛もので、劇中では頻繁に主演が仮面をつける場面が出てくる。
薄暗い劇場で、役者たちの声は良く響いた。
ランフォードは仮面をつけてもよく通る声に、役者たちの研鑽を感じたり、「素顔も見せられない私の何がわかる!」と叫んだ相手に、相手のしてきた行動をあげて愛を告げるシーンでは思わずリヴェッタを見てしまう。
「面白かったですね」
「悪くありませんわね。演劇用ともなると日常的に使う仮面とはコンセプトが異なるから新鮮で、デザインにもそれが表れていたのが。それにあの告白のシーンも……」
リヴェッタがつらつらと感想を述べていたが、唐突に途切れる。
少し離れたところから、鋭い目つきの貴族の青年が現れた。柔らかなウェーブの金髪に筋の通った鼻立ち、黙っていれば令嬢から熱っぽい視線を向けられそうな容姿である。
宝石をあしらった装飾品を多くつけていることからかなり裕福な家の者であることが窺える。
「お知り合いですか?」
青年はリヴェッタを険しい目でにらんでいた。
リヴェッタからも微笑みが消える。
どちらもただの知り合いに向けた態度ではない。
騎士の性か、あるいは紳士としての振る舞いか。ランフォードは一歩前に出てリヴェッタをかばう位置に出る。同時に律義に観劇に用いた集中の表情の仮面を警戒の表情のそれにかえた。
「まだその不気味な面を作っているのか、リヴェッタ」
「あなたには関係ありません。名前を呼び合うような関係でもないでしょう。相変わらず無作法ですわね」
リヴェッタは声をかけてきた青年をバッサリ切り捨てると、ランフォードに近寄って耳打ちする。
「ランフォード様、彼は何というか……婚約の話が一瞬だけ持ち上がって、お互いに嫌だということで即破談になった……元婚約者というか、腐れ縁、のようなものですわ」
「ふん……その変な趣味をやめていれば、婚約破棄しなくて済んだかもしれないのに」
リヴェッタは名前をあえて言わなかった。
ランフォードに彼を紹介するつもりはない、と態度で示す。その無礼なふるまいを青年は気にした様子もない。もともと怒っているから無礼の一つや二つ、今更といったところか。
そこでようやく青年の目はランフォードにも向けられる。
「貴方は……王から仮面を下賜された無貌の騎士、噂はかねがね。物珍しさか知りませんが、そのような戯れにいつまで付き合うつもりですか?」
「私の仮面作りは――」
リヴェッタが反論しようとしたのを、ランフォードがそっと遮った。静かに肩に手を置いただけだが、普段指先一つ触れるのも躊躇いがちな彼の珍しい一面にリヴェッタが戸惑った。
騎士はいかなる時も冷静さを求められる。
呪いを受けてなお騎士として評価され続けているランフォードもまた、並大抵のことでは揺らがない。
その彼が、久方ぶりに仮面をかえるのも忘れて苛立ちのままに言葉を紡ぐ。
「あなたはリヴェッタ嬢の魅力を何一つわかっていない。野に咲く美しい花を手折って枯らす無粋な男と見ました。おしとやかなだけの令嬢が欲しいなら他をあたってください。身分も容姿も財力もあるなら好きに選べるでしょう。ですが――そんなものでリヴェッタ嬢の心は手に入らない」
最後のそれはランフォード自身にも向けた言葉だった。
自分が彼女の心を得られるのか。誰かに心奪われたりしないか。そんな不安から出た八つ当たりのようなものだ。
「あなたにはリヴェッタ嬢はもったいない」
ランフォードは余裕のある微笑みの仮面をつけて「リヴェッタ嬢は婚約破棄して正解でしたね」と声をかけた。
青年は何も言い返さなかった。ただ不満げに、舌打ちだけを残して「いらねーよ、そんな女」と吐き捨てた。
青年が見えなくなったところで、疲れた表情の仮面をつける。
せっかくの観劇が最後で台無しになってしまったかもしれない。そのような不安からランフォードはいまいちリヴェッタの方を見れなかった。
気がつくと、噴水の広場を見下ろす高台まで来ていた。夕暮れになるとここは人気がなくなる。あるのは木製のベンチが一つ。二人は自然とそこに腰かけていた。
「先ほどは私の知人が失礼しました」
「いえ、私の方も感情的になってしまい、淑女の過去に踏み入ったことを」
「彼は昔から何かと私につっかかってきまして、そのたびにあなたには関係ないでしょと言い続けていたら随分関係をこじらせてしまいまして……」
「それってもしかして……いえ、まさかあの年までそんなことはあるのか……? 勝手な憶測は忘れよう、気にしないでください」
「最後はあれでしたが観劇は楽しかったですわ」
「私もです」
先程までの気まずい雰囲気が解消され、お互いに悪感情がないことがわかって安堵する。
同時に話題が途切れ、穏やかな沈黙の中、二人の耳に離れたところの噴水の水音が聞こえてくる。
リヴェッタが今日ずっと大事に抱えていたカバンを開いて中から仮面を取り出した。
「今日も、新しい仮面があるんですが、本当はこれを渡すか迷っておりました」
◇
リヴェッタにとって、仮面とは「身につける人が見せたい顔」だった。
仮面とはつけてこそ真価を発揮するもの。なんの役割も持たせず、ただ飾って満足する仮面に何の意味があるのか。
仮面を美しいと褒めそやす人々を見ては落胆していた。
そこで出会ったのがランフォードだった。彼は呪いのせいとはいえ「自らの意思で日常的に」仮面をつけていた。それも自らの第二の顔として。
そんな彼に興味を持ってしまうのはある意味必然であった。
どこか満足出来ていないのは、きっと見せたい顔が仮面ひとつじゃ足りないのだ。
ならば私が増やしてあげたい。
そんなふうに。
彼女にとっては仮面こそが人生だった。
故に興味をひかれた個人に対しても仮面をほめることでしか話しかけられず、仮面を贈ることでしか気持ちを表現できなかった。
彼が仮面を通じてしか人と関われない悪癖を軽やかに受け止め、顔がないなら仮面で表現すればいいという仮面愛好家の押し付けにも喜んでくれた時、何とも言えない感情が彼女の胸に生まれた。
彼のいろんな表情を見たい、彼の心を知りたい、彼の表情を自分で表現したい。
言葉だけだとわかりづらいがどこか屈折したその感情は会うたびに募っていった。
――これはどういう気持ちだろう?
家族愛はわかるが、色恋とは縁のないリヴェッタである。
そして彼女は昔から、心を仮面を通して覗いてきた。
今回も鏡に映る悩まし気な、どこか憂いを帯びつつも嬉しそうな複雑な表情をモデルに二枚の仮面を仕上げた。一枚は自分の顔で、もう一枚はランフォード用だ。
出来上がってしまったからには渡すべきか、どういう気持ちかわからないこれの使い道をどうするべきか迷ったまま観劇に誘われ、持ってきてしまった。
そして先程、腐れ縁の男に言い放ったセリフを聞いてから、リヴェッタの頬は緩みっぱなしであった。
「これは、恋する人を見つめる表情の仮面、ですわ」
ゆっくりと、ランフォード用の仮面を渡した。
手渡されたランフォードもすっかり彼女の感情表現に慣れてしまっていた。
これで気づかぬほど、鈍感ではいられなかった。
恋する仮面をつけると、仮面の裏側から光が漏れた。
「えっと、その光は……」
「呪いが、とけてしまったみたいです」
「最後の条件、聞いてませんでしたわね」
「私の顔を好きになってくれる人と両想いになる、ですね」
あまりにも意地の悪い条件。
誰が見えない顔を好きになるというのか。
人格を愛する人を探す方がまだ望みがあった。
とっくに諦めていた、はずだった。
恋する仮面を外すと、下から端正で力強さを秘めた瞳の美男子の顔が現れる。
「まさか自分で顔を作ってその仮面ごと愛するのが正解とは……」
「えっと、その……両想いなのはうれしいのですが……」
「どうされました?」
「元のお顔の方が私の仮面よりも整っていらっしゃるので、私の仮面が不要になるのは不満ですわね」
「それなら大丈夫ですよ」
「なぜですか?」
「一生あなたの作った仮面をつけていたいからです」
「……っそれは、寄ってくる女性が私以外いなさそうでなによりです!」
リヴェッタは初めて顔を隠すように、自分の作った「恋する乙女の仮面」を付けた。
仮面をつけた男女が二人、夕暮れの街で楽し気に笑う姿がそこにはあった。
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