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旅日記

作者: 市村優衣
掲載日:2026/04/02

2024年4月、私は南千歳から苫小牧へ向かっていた。


当時、私は障害のある利用者としてA型作業所で働いていた。

A型作業所というのは、いわゆる福祉的就労というやつで、病気や障害のある人が支援スタッフのサポートを受けながら働ける施設のことだ。

そこで精神障害者である私は働いていた。


しかし、2024年の5月にその作業所が閉鎖することになった。

つまり、私は無職になることが電撃的に急遽決定したのだ。


一般の会社で言えば会社の経営不振による倒産……といったところか。

会社都合での退職という形なのでいわゆる失業給付ももらえる算段だった。


それならまあ、仕方ないとするか……。私は、諦めにも似た気持ちでそう思っていた。


そして私には一応、有給が付与されていた。

退職する前に、その有休を消化するようにとのお達しがあった。


なにやら、有休を消化しないと会社的にもいろいろ不都合があるとのこと。

労基法というのは労働者の味方であるらしい。


ここで、勘のいい読者が分かっただろうか。

つまり、私は有休消化中、あまりに暇だったので、苫小牧までふらりと旅しに来たのだ。

とはいえ、特に目的もない。


私は街をさまよっていた。しばらくあるくと、繁華街らしきものを見つけた。しかし平日でもあり昼間で時間も悪かったのだろうが、それにしてもやけに人が少ないシャッター通りがあった。


誰ともすれ違わない。

たまに、忙しそうに車が通っていくだけだ。


精神障害者がみなそうではないが、ことさら私にとっては人が少ない方が心地がいい。

取り残されたような街並み、廃墟。


ゆっくりと滅びの道を進んでいることを想像しながら、私自身も道をてくてく歩いた。


その瞬間、逆説的に私は独りではないことを感じ取る。


この街も建物も、こびりついた赤いサビも傷んだコンクリートたちも、私の近くに寄り添った。


そんなことを思ったりして、すぐ風に吹かれて消えた。


苫小牧は港町で、四月なのに風は冷たく強かった。


なんなら、雨も降りそうだ。

帰ろう。そう決めた。


苫小牧駅の外壁は薄汚れていた。

あそこまで汚れていたら、もはや手遅れなのだろうか。

汚れもそのままで時間は進む。

私もそう。


また、苫小牧の外壁に会いに行きたいものだ。


冬野てん




music-

カンタータ BWV 78-1

Johann Sebastian Bachヨハン・セバスティアン・バッハ

教会カンタータ

Jesu, der du meine Seele第1曲(冒頭合唱)

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