第三十話 神谷零という人間
入院生活も気づけば2週間経ち
僕は医者にもう退院してもいいと告げられた
この2週間宣言通りルルさんは来なかったが、生徒会メンバーが来てくれた
ユノはあまり僕の過去については触れず、「怪我大丈夫なの?」と怪我の心配をしてくれた
ひよりさんは気にしてませんと言わんばかりに「お姉さんびっくりしちゃったよー!!」と、いつものスタンスを貫き通してきた
シキさんはそれが悪だなんてかけらも思ってなんかいない様子で「人殺したんだって?」と聞いてきた、僕が肯定を返すとシキさんは少し悲しそうな顔をした
みんなと話してるうちにネルの情報も得る事ができ、
ネルは今は意識は回復し一般病棟に移されたみたいだ、しかし重傷な事に変わりはなく、体を上手く動かせずリハビリのため1ヶ月は入院しなければならないらしい
僕はネルの部屋番号を教えてもらっていたためいつでも行く事ができた
しかし....
僕は勇気が出せずにいつもネルの部屋に行ってはその扉を開ける事ができずに踵を返していた
そして一度もネルと話せないまま...
退院の日が来てしまった
そして僕は準備を終わらせて
今日、退院した
しかし退院したからには僕は行かないといけない所があり....
僕は次の日、学校に向かうのだった
学校に登校しているだけで周りが僕を指差して耳打ちしてる生徒が数多く視認できた
登校してるだけでこれなら、学校に入ったらどうなるんだろうなぁと僕は先が思いやられた
そんな不安に駆られながらも僕は自クラスに入った
入った途端....
それまで騒がしかったクラスが一瞬にして静まり返った
そしてどこからともなく
「あいつ人殺したんでしょ?」
「よく学校来れるよね」
「犯罪者と同じクラスとか怖くて勉強できないんだけど!!」
「マジで早くいなくなれよ」
など、陰口が聞こえてきた
僕はそれも今日だけの辛抱だと耐え
自分の席に腰掛けた
零「....おはよう」
いつものように後ろの席の八神にあいさつをした所...
八神「......」
八神はこちらに見向きもせず、ただスマホをつついていた
零「......」
あぁ...分かっている
ネルのような人間の方が珍しいのだ
普通の人間は親友だろうがそいつが犯罪者だと知れば距離を置く
それはいじめでもなんでもなく至極真っ当な事なのだ
ただ....
分かっていたとしても、親友に嫌われるというのは心にくるものだな....
そして...
来ないでくれ
時間が止まればいいのに
僕がそんな事を願おうが
時間はどうしても去ってしまうもので
僕は今、生徒会室の扉の前に立っていた
ドアノブにかけた手は小刻みに震えていて
呼吸も乱れていた
今すぐにでもこの場から逃げ出してしまいたかった
それでも....
僕はもう逃げないと誓った
向き合うと決めたんだ
零「ふぅ....」
僕は一度深呼吸をして....
そして....
生徒会室の扉を開けた
そこにはネル以外の生徒会メンバーが全員揃っていて
ルル「.....来たか」
ルルさんの言葉を受けながら僕は一歩また一歩と中に入った
零「....まず一ついいですか?」
ルル「あぁ、なんだ?」
零「生徒会メンバー全員が集まった状態で僕は話すと聞いていました」
零「この場にはネルはいません」
零「それでもいいんですか?」
ルル「.......」
ルル「ネルをこの場から消したのはどこのどいつだ?」
零「.......」
ルル「私だって生徒会メンバーが全員集まるまで待ちたかったさ」
ルル「しかし、先週生徒会選挙が行われた」
ルル「もう、引き継ぎや片付けとかも終わらせててな」
ルル「この生徒会は今週で解散なんだ」
ルル「ネルが退院するのは1ヶ月後、生徒会ができるのは今週いっぱい」
ルル「そりゃネルにもいてほしかったがしょうがない」
ルル「ネルには私から説明しておく」
ルル「私達だけでも事情を聞く権利はあると思うが?」
零「.....そうですね」
どうやら僕に話さないという選択肢はないらしい
零「.....では、話します」
零「僕が人を殺した経緯、僕の全てを」
零「あれは———」
零「あれは僕が小学六年生の時でした」
零「僕達の家はとても裕福な家とは言えませんでした」
零「でも、僕はあの生活が大好きでした」
零「かっこいい父がいて、優しい母がいて、大好きな弟がいる」
零「たとえお金なんてなくても、僕の人生は幸せでした」
零「でも....」
零「僕の生活は一夜にして全て壊れた」
零「今でも鮮明に思い出せます」
零「あれはいつものように僕達家族四人で夕食を食べていた時」
零「玄関の方から物音がしました」
零「両親は少し見てくるから待っててと言い、玄関に向かった」
零「そして両親が向かった数秒後....」
ザシュッ!!!
零「そんな耳を塞ぎたくなるような音が家中に響いた」
零「僕と一が慌てて玄関に向かうと...」
零「そこは地獄絵図でした」
零「腹部を抑える両親、刃物を持つ強盗、辺りが真っ赤に染まっている玄関」
零「僕はまだ小学6年生」
零「僕はまだ小学6年生で、どうすることもできずにただパニックに陥っていました」
零「しかしそんな時...」
「走るよ!!」
そんな声が聞こえてきました
零「そして僕達兄弟は両親に手を引かれ玄関から逃げた」
零「近くのお店目掛けて僕達は走った」
零「しかし強盗も見逃してなんてくれるわけなく」
零「血眼になって僕達家族を追ってきました」
零「そして」
零「そして.....」
零「僕達家族は追いつかれ、捕まってしまった」
零「怪我をしてる大人、そしてまだ義務教育も終えてない子供、そんなのが大の大人に勝てるわけなく、僕達はあっさり捕まってしまいました」
零「僕は子供ながら<死>を悟りました」
零「でも....」
零「僕はそれでもいいと思った」
零「この家族揃って死ねるのならそれ程までに幸せな死に方なんてないと思ったから」
零「僕は縋るような眼差しで両親を見ると、両親の口が動いた」
「子供達はどうなっても構いません!!!どうか私達の命だけは助けてください!!!」
「...........は?」
零「次の瞬間僕の中の何かが切れた」
零「僕の視界は真っ黒に染め上げられ僕は意識を失った」
零「そして次に意識が戻った時には...」
零「全てが終わってた」
零「滅多刺しで倒れている両親、滅多刺しで倒れている強盗、隣で泣きじゃくる弟、そして....」
零「刃物を持っている僕」
零「近隣住民の人が通報したのか、警察は案外早く来た」
零「僕達は警察署まで連行され取り調べを受けた」
零「だがもちろん小学生の僕達にまともな受け答えなんてできず」
零「僕達は泣きじゃくる事しかできなかった」
零「そのため警察は現場検証をする事で真実に辿り着いた」
零「僕は3人を殺害した容疑者として児童相談所に送られた」
零「でも....」
零「僕は当時11歳だった」
零「その年齢もあって、僕は法で裁かれることはなかった」
零「未成年である事、状況が正当防衛の部分があった事なども考慮され」
零「僕はすぐに解放された」
零「僕達にはもう親はいないため、父方の祖父母の家に預けられた」
零「僕は人を殺したのに、未成年であったから普通の生活に戻れた」
零「でも....」
零「それを良く思わない人物がいた」
零「それが...」
零「僕の弟、神谷一だ」
零「一はその日から僕をひどく嫌った」
零「お前のせいで俺のこれからの人生何もかも変わったと」
零「お前のせいで両親は死んだのになんでお前は生きているんだと僕をひどく責め立てた」
零「その日から一はこう考えるようになった」
零「お前が両親を殺した事で俺の人生は全部壊された、じゃあ次はお前の番だと」
零「法が捌けないのであれば、社会が捌けばいいと、そう考えるようになった」
零「社会的に殺して自殺に追いやる、それが一の願い」
零「一のその悲願は7年の年月を経て叶えられようとした」
零「でもそれをネルが止め、一の悲願は叶わず、僕は今ここで息をしてる」
零「......」
零「これが僕の全てです」
.........
生徒会の空気は重々しかった
しかしそれとは裏腹に僕の心はすっきりしていて
話し終えた僕は
けじめをつける事にした
零「僕は自主退学してこの学校を去ります」
そう言葉を吐いた
今まで黙っていた一が声をあげ
一「!!!!」
一は声を荒げ
一「てめぇ!」
一「お前また転校して、別の学校で何もなかったように生きるつもりかよ!!」
零「するわけねーだろ」
一「?」
零「僕に学校生活なんて最初から無理だったんだ」
零「僕はこれからその日の日銭を稼いで密かに生きていく事にする」
零「僕はもう学校なんて通わない、幸せな人生なんて目指さない」
零「僕は一人でこの命の灯火が消えるその時まで罪と向き合い続けるさ」
零「今まで悪かったな、一」
僕はみんなの方に向き直り
零「生徒会のみなさん、今まで迷惑かけてすみませんでした」
零「こんな僕が皆さんと過ごせて最後に幸せを感じる事ができました!」
零「本当にありがとうございました」
僕はそう言って深々と頭を下げてから
ドアに向き直り、僕は歩を進めた
そしてドアノブに手をかけ
開けた
その瞬間.....
零「なっ....」
僕は目の前の光景に絶句してしまった
だって....
だってそこには....
ネル「全部....聞いてたよ....」
ここにいるはずのない少女がそこにはいたから
第三十話 終了




