暗闇の中で君は笑った
そうしてリハーサルが始まると....
???「きゃーー!!!」
零「....えぐいな」
隣の部屋から絶叫が聞こえてきた
ネル「めちゃくちゃ怖いのかも....」
部屋は三部屋使っており、待合室→お化け屋敷→さっきの打ち上げ会場になっていた
午後組が終わり、今は午前組が回るターンだ
そして僕達は8番目を引いたため今待合室にいるのは僕とネルだけだ
午後役はお化け役、午前組は全員打ち上げ会場にいる
そうこうしていると....
クラスメイト「.....次、いいよ」
7組目のペアが終わったらしく声をかけてきた
零「お、来たか」
僕達は隣のクラスに向かい...
扉の前に立った時...
ネル「あ!あのさ!」
零「?」
ネルが声をかけてきた
ネル「て...手!握って欲しい....」
零「......え?」
僕は聞き間違いかと思い聞き返した
ネル「ちっちがくて!別に変な意味とかじゃなくて...」
零「へぇーー???」
僕はニヤリと笑い
零「お化けが怖いんだーー???」
零「しょうがないなぁ」
零「怖がりなネルちゃんに手貸してあげるよ!」
ネル「.......」
ネル「やっぱいい」
零「そこで拗ねちゃうから可愛げないんだよ?」
ネル「別に可愛げなんて求めてないからいいもん」
僕はネルの言葉に思わず笑ってしまい
零「ハハッ、悪かったよ」
零「ほら」
僕はそう言ってネルに手を差し出した
ネル「.......」
ネルは数秒僕を睨んだ後...
零「ん、じゃあいいか?」
僕の手を掴み返してきた
ネルが頷いたのを確認して
僕達は中に入って行った
中に入ると
零「おぉー雰囲気あるな」
そこには真っ暗な空間だけが広がっていて、微かについているライトを頼りに進むしかなかった
一歩一歩と歩くと
同時にネルの手を握る力も増すのを感じた
怖いんだろうな....
そんな事を考えていた
ただ....
その手を握る力も次第に失われていった
なぜなら....
零「全く怖くねぇ!!!」
そう、全く怖くないのだ
これは強がりでもなんでもなく本当に怖くない
零「え?あいつら本当にいる?働いてる?」
ネル「...いないかも...」
そう、お化け役の奴が一人も出てこないのだ
零「どうするんだこれ?」
ネル「まぁ、進むしかないでしょ」
零「ここまできて散歩かよ...」
そんな文句を言いながら僕達は歩き始めた
そして僕達は雑談を始めた
ネル「零はさ....今日カップルとかできると思う?」
零「?どした急に?」
ネル「このお化け屋敷だよ」
ネル「吊り橋効果でカップル成立?みたいな事言ってたじゃん」
零「あ〜」
零「いやないだろ、たかだか4、5分歩くだけだぞ??」
ネル「....そっか...」
ネルは数秒黙り込み
また口を開いた
ネル「零はさ告白したい人....」
ネル「好きな人とかいないの?」
零「おぉ、急に恋バナ始まったな」
ネル「文化祭前日ぐらい別に浮かれてもいいじゃん」
ネル「答えてよ」
零「ん〜」
僕はしばし考え
零「いない、かなぁ」
ネル「何その歯切れの悪い返事」
僕達の足は気づけば止まっていた
零「いやまず好きな人がいるいないの土俵に立てないというか....」
ネル「?どういう事?」
零「....なんでもない、やっぱ忘れて」
ネル「えーー、いいじゃん!聞かせてよ!!」
零「んーー」
零「いやさ、僕の過去の話になっちゃうんだけどさ...」
ネル「うん、いいよ」
零「ネルはさ、僕の昔の性格って覚えてる?」
ネル「あの、暴力的な零?」
零「そう」
零「あの時の僕ってさ、いわば自己催眠かけてたんだよ...」
ネル「自己催眠?」
零「あの時の僕は今まで当たり前に隣にいた両親がいなくなってメンタルが不安定だった」
零「僕はさメンタルが不安定なせいで二重人格?っていうのかな?」
零「防衛反応で自分が全て正しい、俺は一人でも生きていけるんだっていう傲慢な人格が僕の中にできた」
零「その人格が僕の代わりに生活してくれてたおかげで僕はメンタルが死んで精神を病むっていう事はなかった」
零「ただ、この人格は問題があってさ...」
零「一を傷つけようが、周りに嘘を吐こうが俺は正しい、俺は何も間違っていないと信じて疑わなかった」
零「でもこの人格はある日一によって間違いだと証明された」
ネル「あの...生徒総会の...」
零「そう」
零「僕は前の学校で退学になった時今の僕、言ってしまえば<オリジナル>に主人格が変わった」
零「今でも傲慢だった時の僕はたまに出てくる...」
零「でも、基本的には僕がこうやって生活している」
零「でもさ」
零「このオリジナルの人格も傲慢の人格とは違う問題点を抱えていた」
零「皮肉な事に傲慢の時と今の僕は正反対でさ」
零「今の僕には心から信じたいもの、信念がないんだ」
零「空っぽな人間だったんだよ」
零「僕は今でも考えちゃうんだ...」
零「僕の存在意義ってなんなんだろうって....」
零「だから僕に好きな人なんて一生できないと思うんだ...」
零「自分に価値を感じてないから...」
零「自分で自分の恋愛を否定してしまうから...」
零「僕は好きな人を作らないし作れない....」
零「僕は....」
零「僕はっっ!!」
零「あ———」
気づけば、僕の頭はネルの胸に埋められる形で抱きしめられていた
ネル「そんなにさ......」
ネル「暗い顔しなくてもいいんじゃないかな?」
ネル「私は零の過去を知らないから無責任な事は言えないけどさ...」
ネル「でも、自分の存在意義とかさ自分の価値を否定するのは違うんじゃないかな」
ネル「自分に自信が持てないあなたがそこにいるように....」
ネル「あなたのその性格が大好きな私がここにいる」
零「えっ———」
ネル「あなたが自分を否定する度に、私はあなたを肯定する」
ネル「好きな人を作れとは言わない」
ネル「たださ....」
ネルはフッと僕に笑いかけて
ネル「もう少し自分に自信を持っていいんじゃないかな?」
零「っ!!!」
僕はその言葉を聞いて....
ネル「わっ!びっくりした」
零「ごめん...少しだけ...もう少しだけこのままでいさせてくれ....」
僕は気づけばネルを抱きしめ返していた
ネル「うん.....いいよ」
ネルは僕の頭を撫で始めた
数分が経過し....
零「おぉぉぉぉぉぉ!僕はなんて事を....」
零「恥ずい.....」
冷静になって自分の行動を後悔していた
ネル「フフッ私は大満足だよー??」
ネル「初めて頼ってくれたね」
零「あぁうるさいうるさい!」
零「この話おしまい!」
そう言って僕は立ち上がって、歩き始めた
零「そういうネルは好きな人とかいないの?」
ネル「すごい話逸らしたね」
零「うるさい、答えろ」
ネル「ん〜私かー」
ネル「私はね———」
???「ばぁ!!!」
零「う、うわぁ!!!」
ネルと話してる途中今まで一人も出てこなかったというのに
急につきあたりから白い布を被った奴が脅かしてきた
???「ハハッ!ハハッ!めっちゃビビってやんの!」
白い布を被ってる奴から聞こえてきた声はとても聞き馴染みのある声で....
零「この声は.....」
零「八神!?」
そいつはマントを取り、姿を現した
八神「うい!」
零「お前なんでここにいんだよ」
零「お化け役じゃねーだろ」
八神「ちょっと君達に伝えないといけない事があってね」
零「伝えないといけない事?」
八神は一度大きく息を吸い
八神「気づかなかった?」
八神「このお化け屋敷お化けいないんだよ」
零「!やっぱそうだよな!結構序盤に気付いてたわ」
八神「あぁ、気づいてたんだ」
零「そりゃこんな出てこなかったらな」
ネル「でもなんで?」
八神「めっちゃ言いにくいんだけどさ...」
八神「君達の存在忘れてた!てへぺろっ!」
零「......は?」
ネル「どゆこと?」
八神「んーとさ最初に言ったじゃん?君達は午前組にも午後組にも属さない、いわば第三のグループ」
八神「でさ....」
八神「午前組に君達➕1すんの忘れてた!」
零「.....つまり?」
八神「午後組はさっきの7組目が終わった時点で更衣室に着替えに行きましたよ」
八神「って事!」
零「だから一人も出てこなかったのか....」
八神「うん、でも普通に伝えるのは面白くないと思ってね」
八神「脅かしてやろうと思って、午前組が使ってた衣装の白いマント更衣室に取りに行ってたんだよ」
八神「だから正直取りに行ってる間に出てるか、もし間に合ったとしても時間ギリギリだと思ったんだよ」
八神「でも結果はむしろこっちが待つ事になった...」
八神「君達回るの遅すぎない??」
八神「何してたの???」
零「.....それよりも」
零「お前わざと僕とネルを同じペアにしただろ?」
零「正直幽霊がいないのすら故意的なんじゃないかって疑っちゃうんだが???」
八神「おっ誤魔化したな、本当に何してたんだか」
零「うるっせ、今は僕のターンだ」
八神「んーー」
八神「君が黙秘権を使うならこっちも使わせてもらう事にするよ」
零「.....なんだそれ」
八神「じゃ、伝えたい事も伝えたし俺は入口から帰る事にするよ」
八神「じゃ、精々二人で密の会話でもして楽しむといいよ」
そう言って俺は二人に背を向け歩き出した
八神「.....」
あぁ本当に君は感が鋭いね、零
あぁそうだよ
二人をペアにしたのは俺だし
午後組に7組目で帰るよう指示を出したのも俺だ
でも....
君は一つ大きな勘違いをしているよ
俺はあくまでも実行犯
主犯は別にいるよ...
さーて零の反応を見る限りしたい事はできたのかな?
それともまだなのか....
どちらにせよタイムリミットは後2、3分しかない
悔いのないように行動してほしいなー
俺から言えるのはただ一つだけ
八神「頑張ってね、<ネル>」
俺はそう呟き、その教室から出るのだった
八神は去っていき...
零「....なんだったんだ、あいつ」
ネル「.....まぁ、いいじゃん」
ネル「とりあえず出ようよ」
零「....それもそうだな」
そうして僕達はまた歩き出した
ネル「....ねぇ、私達二人しかいないんだしさ、言われた通り密な会話でもしない?」
零「.....つっても密の話ってなんだよ」
ネル「んーさっきの話の続き」
零「ネルの好きな人の話か?」
ネル「.....違うよ」
ネル「零の過去の話」
僕は一瞬押し黙ってしまい....
零「僕から話せる事は何もないよ」
ネル「....いいよ、零には私の予想を聞いて欲しいだけだから」
零「予想?」
ネル「うん、零の過去の予想」
零「.....」
そしてネルは話し始めた
ネル「一君のあの生徒会あいさつ、そして大事な相手にこそ話せない内容」
ネル「そんなの私には一つしか思い浮かばなかった」
ネル「これはあくまでも私の予想でしかない」
ネル「でも....確信に近いものを感じてる」
ネル「零...あなたさ...」
ネルは一拍置き、告げてきた
ネル「過去、犯罪に手を染めてるんでしょ?」
零「......」
僕は何か返さないとな、と思い
咄嗟に出た言葉は
零「....ノーコメントで」
それしかいえなかった
ネル「私の予想でしかないけどさ」
ネル「零は過去、一君に何か法律に触れるレベルの事をしてしまった」
ネル「その内容までは分からない、お金を奪われた、居場所を奪われた、そんな事かもしれない」
ネル「でも違うかもしれない」
ネル「それよりも、もっとやばい事をしてるかもしれない....」
ネル「私零に嘘つきたくないから言うけどさ」
ネル「私は零が怖い、未知であるあなたに恐怖を感じてる」
零「.....そうか」
ネルはそう言葉を発した後何も言わなくなり
僕達の間に会話はなくなった
歩いて、歩いて、歩いて、出口が見えた
そんな時に....
零「?」
ネルが急に足を止めた
僕もそれにつられて、足を止めると...
ネル「私が零に恐怖を感じてるのは本当」
ネル「でもね....」
ネルは微笑を浮かべ
ネル「私はそんな負の感情がどうでもいいと思ってしまう程に零が好き!」
ネル「そばに居たいって思ってる!」
ネル「まだ信じられないかもしれないけどさ...」
ネルは掴んでいた僕の手を離し、数歩歩いて振り返らずに続けた
ネル「私は零がどんな事情を抱えていても絶対に離れない!!」
ネル「だから...」
ネル「零も私から絶対に離れないで!」
ネルはそれだけ言って
小走りで教室から出ていった
零「.......」
そんなネルの様子を見て...
零「約束は....できないな」
そう言葉を溢し
ネルの後を追うのだった
第二十話 終了




