契約成立
零「.......」
僕は空になったコルクの入れ物を見つめていた
ルル「かっこわるいな」
ひより「うんすごくかっこ悪い」
ひより「神谷君のマネしまーす」
ひより「待ってろよネル!僕が今取ってやるからな!」
ひより「からの全外し」
ひより「いやーものすごくかっこ悪いね!」
零「うるさいうるさいうるさーい!!!」
零「だ、第一!」
零「みなさんも全外ししてたじゃないですか!!」
零「人の事言えないじゃないですか!!!」
ルル「状況が違うだろ」
ルル「お前はなんとしてでも取らないといけなかった」
ひより「そうだよ!!」
ひより「今のはぬいぐるみも射抜いて、ネルちゃんにあげてネルちゃんの心も射抜くイベントだったんだよ!!!」
ネル「ひよりさんうるさい」
零「ぐぬぬ!」
零「僕はそんな主人公補正持ってないですよ!!」
そんな言い争いをしていると....
シキ「お前達下手すぎなんだよ」
シキさんが割って入ってきた
ひより「ふーん??」
ひより「そんなに言うならお手本みせてほしいなー!!」
シキ「あぁいいぞ」
そう言うとシキさんは流れるように店主にお金を渡しコルクを受け取っていた
シキ「射的はな...」
シキ「こうやってやんだよ!!!」
バンッバンッバンッバンッバンッ
僕はその様子を見て...
零「す、すごい...」
零「全弾命中....」
思わず感嘆の声を漏らしていた
シキさんは全弾景品に当て落としていた
それもゲーム機やらモデルガンやら取るのが難しい高額景品を乱獲していた
いや絶対この人売る気だろ
心中でそんなツッコミをしていると
店主「お、おめでとう....また来てね....」
顔を引き攣らせた店主が無理やり作った笑顔でシキさんに景品を渡していた
そんな店主にシキさんは....
シキ「クックックッ」
シキ「また来てね?何寝ぼけてんだよ店主」
店主「え?」
シキ「これはどちらかが折れるまで終わらない、そんなデスゲーム」
シキ「つまり...」
シキさんは店主にお金を渡し...
シキ「倍プッシュだ!!!」
そう告げた
お前はどこのアカギだ
ルル「....ほどほどにしろよ」
ひより「じゃ、私達先行ってるから、終わったら合流しよー」
流石に待てないらしく、僕達は先に行く事にした
そして屋台を探しに歩き出し
零「そういえばなんでひよりさんはそんなに夏祭り行きたかったんですか?」
ひより「え」
零「.....監禁までする必要ありました?」
ひより「アハハ!まぁまぁいいじゃん!」
言えるわけないじゃん....
特に神谷君なんかには絶対....
だって私は知っているから...
あの日聞いてしまったから———
あれはある日の放課後
私とシキはヒロルに生徒会室に集められたため生徒会室にきていた
ルル「悪いな、急に集まってもらって」
ひより「全然いいよー!」
シキ「で?用件はなんだ?」
ルル「あぁ、用件はな...」
ルル「二学期に一年生の転校生が来るらしいんだ」
シキ「?それがどうしたんだよ?」
ルル「そしてその生徒が生徒会に入りたいと言っているらしくてな」
ひより「え?でもその子一年生なんでしょ?入れなくない?」
この学校は1年周期で生徒会選挙を行うため私達が生徒会の任期を終えるまでは一年生には選挙に出る資格すらない
ルル「あぁ、そうなんだがな」
ルル「だが先生方曰く、先生方はこの生徒を生徒会に入れたいと思っているらしくてな」
シキ「.....なるほどなぁ」
ひより「え?なになに?どゆこと?」
ルル「この生徒会にはな....」
ルル「会計次長がいないんだ」
ひより「あぁ、それで」
ルル「だからいないよりはいた方が仕事の効率も上がるだろうという事で」
ルル「先生方は入れようと思っているらしい」
ひより「なるほどねー」
ルル「だが私達の意見を無視してまで入れようとは思ってないらしくてな」
ルル「お前達はどうだ?生徒会メンバーが増えるのは賛成か?」
私達は少し黙りこみ
答えた
シキ「俺は別に害がなければなんでもいーわ」
ひより「私は大歓迎だよー!仕事も楽になるしね!」
ルル「.....そうか」
ルル「じゃあ承諾の書類書くから待っていてくれ」
そしてヒロルはペンを持ちその書類にスラスラとペンを走らせた
書き終わったらしく
私は気になっていた事を聞いた
ひより「そーいえばなんで2年生組には聞かないの?」
ひより「3年生だけで決めていいもんなの?」
ルル「あぁ、なぜかは分からないが...」
ルル「その一年生が3年生だけで決めて欲しいとの事らしくてな」
ひより「ふーん変わってるね」
ひより「その子名前なんて言うの?」
ルル「なんだったかな...」
ルル「あぁ、そうそう思い出した」
ヒロルは一拍置きその名前を口にした
ルル「<神谷一>だ」
ひより「!!!!!!!」
私は思わず動揺してしまった
神谷....一...?
神谷一ってあの神谷零君の弟の?
そんなの...
絶対に会わせちゃだめっ!
ひより「ヒ、ヒロル!私やっぱりその子生徒会に入れるの反対!」
ルル「?どうしたんだ急に?」
ルル「知り合いか?」
ひより「いや....別にそういう訳じゃないけど...」
ルル「......」
ルル「.....ひよりには申し訳ないがもう承諾の書類を書いてしまったからな...」
ルル「この決定は覆らない」
ひより「っっ!!」
シキ「.....」
シキ「.....それにしても<神谷>か....」
シキ「あいつと苗字一緒だな」
ルル「あぁ、神谷なんて苗字珍しいし、もしかしたら親戚か何かなのかもな」
違う.....そんな浅い関係じゃない....
ルル「じゃあ、時間奪って悪かったな」
ルル「私は先生に書類渡してから戻るから」
ルル「二人は先帰ってていいぞ」
シキ「じゃ、お疲れ」
そう言ってシキは踵を返し、生徒会室から出て行った
ひより「......」
私は固まっていた
自分に何ができるか分からなかった
何もできない自分にイライラした
だが....
そんな事していても未来は変わらず...
どうする事もできなかった...
そんな私に...
ルル「?ひより?帰らないのか?」
ヒロルが声をかけてきた
ひより「ん、あぁごめん...帰るよ」
ルル「......」
ルル「ひよりもう一人で抱え込まないって約束しただろ?」
ルル「ここに<友達>がいるんだからな」
ルル「何か困りごとがあるなら聞くぞ?」
ひより「!!!!!!」
ヒロルは昔から変わっておらずそんな優しい言葉をかけてきた
そんな言葉を聞き....
私も私ができる事を見つけた
ひより「ヒロル、あのさ———」
ひより「はぁはぁはぁ」
私は息が切れるのも構わず、廊下を全力疾走していた
ひより「っ!いた!」
ようやくその後ろ姿を見つけたため
私は声をかけた
ひより「ま、まって!シキ!」
そう言うとシキは足を止め
こちらに振り返ってきた
シキ「なんか用か?」
ひより「あ!あのさ!」
話していいものか悩んだ
神谷君が話してくれた過去をそんなやすやすと人に言っていいものなのかと
でも...私は....
決まっている未来から逃げるのではなく
残された時間を楽しむ方が大事だと思った
私は色々と話した、神谷君の過去、神谷一が来たら絶対に生徒会は変わってしまうという事、その前に今の生徒会で最後の思い出を作りたいという事、明日の生徒会室に閉じ込めるまでの流れ、閉じ込めてからどうするか、全てを話した
ひより「神谷君達にはまだ神谷一の事は話せない」
ひより「でも最後の思い出は作りたい...」
ひより「だから私は明日、君達生徒会メンバーを生徒会室に監禁してでも、夏休みの約束を取り付けたいと思ってる」
シキ「......」
シキはそこまで聞き、言葉を溢した
シキ「で?結局お前は何が言いたいんだ?」
ひより「......」
ひより「私が生徒会室にみんなを閉じ込めた後シキが話を切り出して、進めて欲しい」
シキ「なんで俺なんだよ?そういう仕事はルルに任せりゃいいだろ」
ひより「.....ヒロルは良くも悪くも感情に流されやすいタイプだからね」
ひより「神谷君の過去を聞いて同情して、進めてる途中にボロが出るかもしれない」
ひより「だから明日の監禁作戦は伝えてるけど理由は伏せてる」
ひより「ヒロルは優しいからそれでも納得してくれたけど...」
ひより「やっぱりヒロルには話せないよ」
ひより「だから全てを合理的に進めるシキ君に頼んでるという訳です」
シキ「.....」
シキ「...で?」
ひより「え」
予想してなかった言葉がシキの口から飛び出て私は素っ頓狂な声が漏れ出た
シキ「なんで俺がそんな俺に得がねえ事しないといけねんだよ?」
シキ「勝手にやってろ」
ひより「......」
ひより「ごめんそうだよね、今の話忘れて....」
そう言って私も帰ろうとシキを追い越し帰ろうとすると
シキ「おい、待てよ」
ひより「?」
私は後ろを振り向くと
シキが話し始めた
シキ「俺はな、感情に流されて合理的な判断ができない奴がこの世で一番理解できない」
シキ「だからこんな生徒会を退会させられるかもしれない、そんなお前のクソみたいな行動を俺は否定する」
シキ「だからな.....」
シキ「俺が明日生徒会室に立ってお前のその行動がどれだけ愚かな行動かを教えてやる」
ひより「!!!」
ひより「そ、それって!」
シキは首を横に振り
シキ「ただ、勘違いするな俺はお前に手を貸すわけじゃない」
シキ「俺がお前に言いたいのは二つ」
シキ「ひとつ目は、お前のその誰でも考え付きそうなクソみたいな案は普通なら絶対に失敗する」
シキ「二つ目は、ただし俺がその案に協力するなら絶対に成功する」
シキ「お前のその頭お花畑の思考回路じゃ、この先のお前の人生の行き着く先は絶対にバッドエンド」
シキ「感謝しろ」
シキ「お前に現実を突きつけるために俺はお前に協力してやる」
シキは不敵に微笑み、そう言った
私は味方だと分かっていながらも、背筋にうすら寒いものを感じていた
ひより「....契約成立だね...」
第十一話 終了




