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レクシア -de quodam lexicone fabula-  作者: Nekke
第1章 図書館編
7/8

0007 模擬戦

 旅立ちの決意をしてから2日後。私は、ノーモスさんと模擬戦をすることになった。

 流れとしては、まずレベルが足りなくって「偽装」が手に入らなかったのをノーモスさんに相談した。

「そうか、レベルが足りないのか…それなら、模擬戦でもしてみるかい?レベルも上がるし、きっと戦い方もいろいろ考えれると思うよ」


 そういうわけで、私は今中庭で模擬戦の準備をしている。

 とは言っても、準備といってもほとんど無いに等しい。使える初級魔法を復習するだけだ。

 そういえば、中級魔法はまだ使えない。こっちはスキルが手に入らないのと違って、単純にMPが足りないことが理由。


「よし、じゃあやろうか」

 お、戻ってきた。格好からするとひょっとして、ノーモスさんも魔導士だったのかな?そういえば、司書になる前は別のことをしていたって言ってたな。

 黒いローブをまとっていて、これはこれで似合っている。


「よろしくお願いします」

「そんなにかしこまる必要は無いよ」

「でも、相手してもらうわけだから…」

「ああ、それなんだけど、今回の相手は私じゃないんだ」

 え、どういうこと?


「今回は、ダミー人形を使うよ」

 そう言うと、持っていた魔導書のページをめくり、そのまま地面に反対の手を当てて唱えた。

「アースクリエイト」

 土が盛り上がって、カカシのような形ができていく。大まかな形ができたら、次に関節が出来上がっていく。時間として10秒もかからないうちに、剣を持った土人形になった。

 もう一回魔導書を開き、新たな魔法が一つ唱えられる。

「エレクトロエンジン」

 そう唱えると、土人形に細かな電撃が走り、ギギギ…と音を立てて人形が立ち上がった。


 アースクリエイトとエレクトロエンジンはそれぞれ土属性、雷属性の中級魔法だ。特にエレクトロエンジンは中級魔法の中でも難しく、消費MPも多い。それを一発で、しかも一瞬で成功させるなんて…


「すみません、索知をしてもいいですか?」

 実は、ノーモスさんにはすでに索知について話していて、索知の許可をもらうことにしている。そういえば、索知は珍しいスキルなんだそうだ。

「もちろん、構わないよ」

 やった!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

人形:

アースクリエイトの生成された人形。エレクトロエンジンによって一時的に動力を与えられている。

現在は停止モード。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「さて、それじゃあこのダミーをできるだけ早く破壊してみて」

「はい」

「実践寄りだから気をつけてね。それじゃあ…始め!」


 人形の目に一瞬だけ、赤い光の筋が浮かんで、すぐに消える。スイッチを切り替えたような、そんな音がする…ような気がした。

 そして、土人形が一歩、前に踏み出して剣を構える。

 感情のない顔は、明らかに私を敵対視している。…正直、怖い。

 私はその場で構えた。

 距離は10メートル。魔法式のページを開いて、先制攻撃を仕掛ける。

 …でも、ダミーは待ってくれなかった。

 土人形は剣を振りかぶり一直線に突進してくる。速度はかなり速い。

「え、ちょっ……!」

 私は焦って慌てて魔力を流し込む。

 狙いは正面。動きを止められればそれでいい。


「ダークボール!」

 私に最も相性が良い、闇属性の初級魔法。拳大の闇の球が放たれ、土人形の胸元に命中した。

 土が削れ、破片が飛び散る。人形が姿勢を崩し、前によろける。

 …でも、止まらない。

 土人形は構わず距離を詰めてくる。

 私は焦って、同じ魔法をもう一度撃った。

「ダークボール!」


 さらにもう一発。

 確かに効いている。でも、動きは鈍るだけで、完全には止まらない。

 一発打つたびに、MPがかなり持っていかれる感覚がある。

 今の消費MPは、初級魔法一発当たり10。最初がその3倍くらいだったのに比べると、相当な成長だ。

 でもさっきの一撃は、焦りすぎてMPを多く使いすぎた。そのせいで、私のMPだとあと3発が限界だ。

 そんなことを考えていると、土人形の剣がすぐそこまで迫っていた。


「っ!」


 咄嗟に後ろへ跳ぶ。

 剣の風圧が頬を掠め、石畳に転がり落ちた瞬間、心臓が大きく跳ねた。

 だが、攻撃を避けた後も続けて剣を切り返され、体勢を崩していた私は今度の攻撃は思い切り当たってしまった。肩口が裂け、HPが大きく減っていく。初めてだけど、すごく不快で、危険な感覚。

 焦っていた私の耳に、ノーモスさんの落ち着いた声が響いた。

「思考に集中しすぎだ。足を止めちゃいけないよ」


 ……確かにそうだ。私はずっと、戦闘のこと以外を考えていたんだ。


 姿勢を直している暇は無い。再び振りかざされる剣を、落ち着きを取り戻して防ぐ。

「アイスシールド」

 ガキン!

 硬い音を放って、剣が弾かれる。土人形は再び構えを取り、こちらを見据えている。

 「実践寄り」という言葉の意味を、ようやく理解した。これは、甘くなんかない。

 私は一度、深く息を吸った。頭の中の、余計なものを追い出していく。視界が、より鮮明に映る。聞こえてくるのは、人形が地面を踏む音だけ。


  土人形が踏み込み、再びこちらに斬りかかろうと駆けて来ている。でも、私はそれを左に踏み込んで紙一重でかわす。

 できる限り引きつけて躱したから、人形の剣は大きく外れて隙が生まれた。

 そこに準備していた魔法をぶつける。今の私に残されたMPは少ないから、目標は最小MP、最大威力。

「ダークボール」

 計算されて放たれたそれは、今までの球より小さいながらも正確に人形の膝を攻撃した。

 人形が関節を使って動いている以上、関節を壊したら動けなくなるはず。膝の関節が傷ついた土人形は、今までよりも動きが鈍くなっている…成功だ!


 それでもダミーは斬りかかってくる…でも、明らかに遅い。

 ただ、残りMPは魔法一発分だ。だから、次の一発で仕留める。

 動きが鈍くなった所に、最高火力の攻撃をする。

 目指すのは、エンジン部分の破壊。もう、消費MPは気にしなくていい。破壊に特化した、今の最高火力の魔法をぶつける。

「ファイアボルト」

 放たれた菱形の炎は、矢のような軌道を描いて土人形のちょうど心臓の部分に当たり、人形の表面を穿って数瞬後に爆発する。

 動力を失ったダミーは重い音を立てて地面に倒れ、中庭に静寂が訪れた。

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