0015 馬車
投稿遅れました。ごめんなさい。
窓の外を、景色が流れていく。
低い振動が足元から伝わり、規則正しく体を揺らす。
がたん、ことん。
がたん、ことん。
知らない街へ向かう、その高揚感に逆らって、電車の揺れは、私を眠りに落とそうとする。まるで、悪魔がこそこそと囁いているかのようだ。
あの人と、何を話すともなく、ただ過ぎる景色を眺めているのか、あるいはその奥を見ているのか、よく分からなくなる瞬間は、心地よいものだった。
確か、あの日連れて行ってくれた人は…
「……あれ?」
「気がついたみたいね」
柔らかな声が、すぐ近くから聞こえた。視線を横に動かすと、明るい金色の髪の女性がこちらを覗き込んでいる。穏やかな目。その奥からは、優しさが滲み出ていた。
「ここは……?」
「安心して、もう森の中じゃないですよ。街へ向かう途中です」
街…ということは…助かった、のか。本当に、よかった…
「大丈夫ですよ。このクレアがここにいるのですもの、私の前では誰も死なせません」
女性…クレアは、そっと私の肩に手を置いた。淡い光がわずかに滲む。追加の治癒だろうか。痛みは、今のでほとんど消えたみたいだね。
そういえば、【偽装】が解けたりとかしてないよね?もし解けてたらかなりやばいけど…
【索知】で確認しとこう。
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レクシア 種族:人類/人間 年齢:13歳 性別:女
役職:無職 レベル:10
HP:48/54 MP:19/125
ステータス傾向:
MP:SS
魔法攻撃:S
属性傾向:
闇:S
スキル:
索知:レベル5
探識:レベル3
分体:レベル3
読書:レベル5
御伽:レベル2
偽装:レベル1
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……良かった。種族はちゃんと「人間」のままみたい。MPはかなり減ってるけど、維持はできている。
「おっと、まだ動かない方がいいですよ。私がいるから大丈夫だとは言え、かなり無茶をしてるみたいだったもの」
無茶…私が一番嫌いな言葉だ。まあ、レベル28相手に襲われた訳だから、そう言われても仕方ないね。
そういえば、この馬車はどうしたんだろう?普通、冒険者って馬車で移動することは少ない気がするけどね。
「あの、この馬車は?」
「ああ、これは私のものだ」
横から声が上がった。ちょっと太ったあの時のおじさん。確か、名前は…
「メリダ商会のバルトンだ。こうやって助けられて良かったよ」
「彼が馬車に乗せてくれることになったんですよ。本当に、ありがとうございます」
「何を、彼女に恩義があるだけだ。ところで、あの時は聞けなかったが、名前は何と言うんだ?」
今はもう偽装があるから、言っても問題ないよね?それじゃあ…
「レクシアです」
「そうか、レクシアというのか。珍しい名前だな」
そっか、珍しいんだ。まあ、確かにそんな気もする。
「目を覚ましたのか」
「おっ、マジか?良かったな、死にかけてたからな」
馬車の外から、低い声と、軽快な声がした。布が揺れ、馬車の入口から最初の声の大柄な男が顔を出す。盾を背負った、いかにも前衛という雰囲気。
「無事で何よりだ。俺はローディス。ルーメル所属の冒険者だ。それでこいつはレンだ」
「おいおい、もう少し丁寧に紹介してくれてもいいんだぜ?とはいえ、ルーメルに着くまではよろしくな」
ローディスさんに比べると少し小柄な、背中に弓と矢筒を持ついかにも斥候の格好をした男が、軽く手を振った。
「ところで、レクシアと言ったな。森で何をしていた?」
まっすぐな問い。やっぱそうなるよね、だって怪しいもん。どう答えるべきだろう。
そう考えながらも、私の視線はその奥、ローディスさんの後ろにいる私と同年代の少年に釘付けになっていた。




