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3-3 とある食堂での世間話

「なぁ、知ってるか?グリジュード公国、エイシルとの国境沿いの関所を封鎖したらしいぜ」

「はぁ?!まじかよ」


 二人は酒を飲みかわしながら、周辺地域の情勢についての噂話を話し合っていた。ここは、アベールにあるとある食堂。夜になると、多くの人で賑わう場所だ。

 先の話を聞いて、赤色の服を着た男が、緑色の服を着た男に疑問を投げかけた。


「でも、一体なんでなんだよ。別に仲は悪くはないだろ。それに、エイシルを挟んでるおかげで戦争も起きてないし」

「まぁ、正確なことはわからねぇが、実はな…」


 そう言って緑男は手招きをし赤男の耳に手を当てて、口元を隠して何かを話した。


「はぁ?!!!!クルドゥーズ協会が加護持ちを集めて新たな部隊を作った?!!」


 その話を聞くや否や、信じられない事実に赤男は机をたたき、大声でそう言って立ち上がってしまった。 


「ちょ!おまっ、静かにしろ!」


 手で”静かにしろ”を意味するポーズをしながら、緑男は何とが場を収めようとした。周囲の視線がいっぺんに集まるが、二人は少しの間食事に専念することでなんとかその場をやり過ごした。


「で?本当なんだろうな?」

「あぁ、聞いた話によれば今日の昼にその部隊らしき人物を見たって証言もある」

「まじかよ、でもそれだけで国境封鎖するもんかぁ?」


 緑男が言う人物とは、おそらくアクアのことだろう。アクアがレインたちと会ったときは脱いでいたが、五新兵(パルブ・ファーモス)は全員、青に銀をあしらったフードを被っている。アベールではそのような人物を見たことがなかったために、そう思うのも無理はなかった。


「これも噂なんだがな、どうもクルドゥーズ協会が人を軟禁てるらしいんだ」

「軟禁?なんでそんなことを」

「クルドゥーズ協会が信仰する『ファリシオス教』が何て説いてるかは知ってるだろ?」

「あぁ」


 ファリシオス教は、クレジオス信仰国で最も信仰者が多い宗教であり「神に祈りを捧げ続ければ、必ず加護を授かれる」と説いている。加護持ちの現状を考えれば信じられるかは怪しいと思うかもしれないが、ファリシオス教の教皇が実際に神に祈りを捧げ、強大な加護を有していることが知られているために、人々は皆この宗教を信仰しているのだ。


「それを頼りに他国からも人が多く来るもんなぁ」

「その参拝者の中に、一部行方不明者がいるって話だ」

「自国の民をそうされたくないから、国境封鎖かぁ。これを機に、大きな戦が起きないといいんだが」


 事実、これは噂程度の話に過ぎなかった。しかし、グリジュード公国が国境を封鎖しているのもまた事実。表上では目立ったことは起きてなくとも、裏では確実に変化が起こっているのは明らかであった。


「少なくとも、エイシルが中立国である内はないだろうな」

「そうだなぁ、いざとなったら魔女様も力を貸してくれっだろうしな」

「グリジュード公国も魔女様のことは知っているはずだからな。下手に手出しはしないだろう」


 世間話が盛り上がってきたところで、鈴の音が鳴った。店の扉を開けた時になる音だ。そいて、入ってきた人物は二人の近くの席に座り、仲良く談笑を始めた。


「お、おい…あのお方って」

「あぁ、魔女様だ」

「今日は連れがいるんだな。めずらしい」

「そうだな。いつもは一人だが…ま、どっちでもいいわな」

「あぁ、魔女様のおかげで今日があるようなもんだ。感謝しねぇとな」


 この町に住む人々は、魔女様ことルミのことをそれはそれは神のように敬っている。有名人ではあれど、下手に干渉しないというのが皆の総意だ。そのおかげで、三人はゆっくりと夕食を楽しむことができていたのだった。

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