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2-3 フィーメルの願い(3)

 次の瞬間、レインの隣にフィーメルはいなかった。代わりに、そこに立っていたのは…。


「アクア!!」

「はぁ、はぁ、いや~この状態で動くの結構きちいな。ん?その顔、何で動けてるんだよって顔だなぁ」


 アクアは、ニヤリ顔でそう言った。しかし、その顔から余裕な姿を感じ取ることはできず、やっとのことで立っているというところだった。


「どうして…」

「水蒸気さ。俺の加護は水を意のままに操る。今まではできなかったが、限界を超えるってやつかどうかはわかんねぇが、人間死に瀕したときはいつも以上の力が出るってもんよ。それで水蒸気を圧縮させて熱を作ってギリギリで耐えたってわけさ」

「それって、フィーメルの…」

「もちろん知ってるさ。だって、フィーメル(あいつ)は…くッ」


 アクアがその場に膝をつく。加護の限界を超えるのは、身体的にもかなりの影響力がありそうと見える。レインは、その隙を突こうにも頭の整理で手いっぱいだった。

 

「こうなったら、さっさとケリをつけてやる!」


 アクアはそう言って、指先をレインの方に向ける。その一点に周囲の雨が集まっていく。本来ならレインのほうが優位にある雨の支配権も、今はアクアに握られてしまっている。

 姉も友達も倒されて、そして初めての戦闘で…レインの心と体はすでに摩耗しきっていた。


「はぁはぁ、くらえ!!」


 アクアの指先から直径二センチの水弾がレインに向かって放たれた。普段のレインなら、雨使い(プルービー・レイン)の探知でかわすことなど造作もないだろう。ただし、それは()()のレインならだ。今のレインに、それをかわすことはおろか、探知する力すら残ってはいなかった。。

 放たれた水弾は、レインまで後数センチのところまで近づいていた。

 あ、どうにかしないとーーレインは、最後の力を振り絞って水弾にあまつぶを当てた…が、その威力を相殺することはできずに吹き飛ばされてしまった。


「あぁ、最後まで!…こ、の…」


 アクアは再び指先に水を集め始めた。レインにはもう躱す体力は残っていない。


「甘いね」

「うっ」


 二回りほど大きな雨粒が他の追随を押しのけて、その存在を際立たせている。その雨粒は、アクアの指先から零れ落ちたものだ。それが地面に到達したすぐ後に、アクアも気を失って地面に倒れた。

 さっきまで強かった雨が嘘だったかのように、快晴の空が辺りに広がっていた。


「やっぱり、ぶっつけ本番は無理だったか」


 ルミはそう言って、倒れる二人の元へと歩みを進めるのだった。

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