本人にとっては大冒険
童話ジャンルにコレを入れて良いのか悩む童◯話です。
本人にとっては大冒険です。
しょーもな。 と言われようが、大冒険です。
「………………」
俺はとある建物の前で固唾を飲む。
俺の人生は20年以上、ずっと灰色だった。
小学生の頃にとある馬鹿をしてから自分に自信が持てず、人目を気にして目立つ行動を控え。
周囲の人に埋没して、真面目に。 ただ只管に真面目に勉強して、学校を卒業したら仕事して決まり事や法律を守って、どこまでも無個性に生きてきた。
そんな面白味のない生き方では女性との縁は出来ず、それでもまあ(どうでも)いいかと生きてきた。
そして、今だ。
職場に異常なほど他人の世話をしたがるお節介焼きがいて、その人に“ある店”を前払いで予約したからと、いい店だからと店の前まで連れてこられて1人取り残された。
目の前には、一見して普通のマッサージ店。
しかし聞いた話だと“風俗店”だ。
もちろん合法の、後ろ暗い所は何もない、ちゃんとしたお店。
こんな店になど縁のない人生だった。
人の顔を常にうかがい、人の頼みを断れない人生だった。
それで行き着く場所がここか。
俺にとっての、大冒険の気配がしていた。
身形がおかしくないかを手早く確認し、俺の人生に全く縁野無かった場所を前にして一世一代の勇気を振り絞り、足に力を入れる。
繰り返します。
しょーもな。 と何度言われようが、当人にとっては大冒険に出る話です。